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第七話 子作り

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俺は彼女の肩を掴み、そのままベッドに強引に押し倒した。
もちろんやりたいことをやるためだ。

ギシィィィィィッッ!
ベッドは派手な軋みを放つ。
彼女は一切抵抗することなく、俺に体を委ね……されるがままに押し倒されている。

俺は彼女にキスをしようとすると、彼女の変化に気づいた。
「あれ? レイラ……泣いているの?」

彼女は目尻に涙を浮かべていた。
「ご、ごめん! 痛かった?」

「ううん……違うの……嬉しくて……」
彼女は目尻に浮かんだ星屑を指で払いのけた。

俺は彼女が泣いてくれたことが嬉しかった。
俺が『愛している』と言ってそれに喜んでくれたんだ。

レイラは、
「あれっ? ゆう君……泣いているの?」
「泣いてないっ!」
俺は慌てて目尻を拭った。

「嘘! 泣いてたっ!」
俺はぷいと顔を背ける。
「う、うそじゃねー!」

「私が嬉しくなったのを見て、泣いたんだ!」
「レイラが嬉しくなったのを見て、もらい泣きなんてしてねぇ!」

彼女は俺の頭を掴み、正面を向かせ、
「誤魔化すの下手だぞ!」
俺とレイラはいい雰囲気のままベッドの上で重なり、見つめ合う。

なんだか部屋の温度が上がった気がした。
「ゆう君……私たち……今からえっちなことするんでしょ?」
「う、うん!」
面と向き合って口に出されると照れるな……。

「そ、それでね……」
レイラは暗闇の中でもわかるくらい顔を真っ赤にさせた。耳の先から耳たぶまで全部真っ赤。
頬は汗ばみ、真っ赤。胸の谷間も汗ばみ、真っ赤。

チラリと見える太ももも真っ赤。
全身が発熱し、真っ赤に染まっている。

「え? なに? どした? ……そんな全身真っ赤っかになって……?」
彼女が何を言おうとしてるのかわからない。くそっ! これならもっとエロゲで予習しておくべきだった。くそっ! くそおおおっっ!

どうするんだ? 何をすればいいんだ? なんでもするぞ! マジでどうすりゃいいんだ!

「あ、あの……あのあのあのっ!」
彼女の顔はみるみる真っ赤に燃えていく。灼熱の蒸気機関に次々と石炭が放り込まれていく。
「な、なんでしょう?」

「あ、あ、あっ!」
「は、はいっ! あの……何かな? できることがあるなら、なんでもするけど?」

「えと……その! あの! えっとぉ!」
「おい……俺を不安にするのをやめてくれよ……どうした?」

彼女はよほど言いにくいのか、俯いたまま固まってしまった。完全に硬直して、女子に話しかけられた中二の時の俺のようになった。(嫌なこと思い出させるなっ!)

「レイラ? どうした?」


レイラは、意を決したらしい。急に真剣な表情……というより真顔になり、
「やっぱり……なんでもない!」


「おいっっっ! ふざけんなっ! ここまで勿体ぶっておいてそりゃないだろ! 言え! 言うんだ!」
俺は彼女のネグリジェの脇腹に両手を突っ込み、押さえつけてくすぐった。

「あはっ! あはははっ! あは! ちょ! やめ!」
彼女は、悶えながら笑い始めた。
「言え! 言うんだ!」

「言う! 言うから! やめ! あっ!」
俺はくすぐるのをやめた。だが両手は彼女の脇腹にセットしたままだ。次またゴネたら間髪入れずにくすぐってやる。

彼女は、照れ臭そうに、
「あのね……えっちする時にね……いつもは私のサキュバスの魔法で赤ちゃんができないようにしてるでしょ……」
「えっ? う、うん……」

「もし……もしもゆう君が望むなら……それ今日はなしでもいいよ?」
「ええっ! そ、それって……」

すると彼女は、腹を括ったのか、言いづらいであろうセリフを大声で、
「だから! ゆう君の子供を産みたいって言っているの!」

そんな男なら誰しもが言われたいセリフナンバーワンを言ってくれた。

あなたの子供が欲しい。それはつまり、あなたとなら一生を添い遂げたい。ということだ。
これからずっと一緒に起きて、
一緒にお風呂に入って、
背中を流し合い、
一緒に笑い、一緒に泣き、
一緒に寝て、一緒に墓に入る。

つまり『私はあなたに決めた』ということだ。

俺は唖然として固まった。
「そ、それで、ゆう君はどうしたい……の? 私と……赤ちゃん作りたい?」

俺は彼女の目をしっかりと見て、
「……うん……作りたい」

俺は彼女の肩を抱いた。すると彼女は俺の方を見つめ、目を瞑った。

そして俺は、そのまま彼女に唇を押し付けた。
一生で一番長い間キスをしていたような気がした。

無限の時の流れの中で、この一瞬だけが永遠よりも濃厚なものになる。

俺は唇を離すと、
「でも、俺たちまだ若いし、子作りはまだちょっと早いと思うな……」

彼女は、しゅんとわかりやすくしょげた。視線を俺からずらし、声のトーンを落とし、
「そ、そうよね。困らせるようなこと言ってごめんね……」

「だからレイラのこと予約させて?」
「え?」

「レイラの……その……赤ちゃんができる場所……俺に予約させて?」
すると彼女はぱああっと表情を輝かせた。彼女の笑顔は、まるで夜の帳を引き裂く太陽のようだ。

だけど陽の光よりもっと暖かくて、俺の心を癒してくれる。

彼女は見たことがないほど嬉しそうな表情になって、

「はい……!」

と、一言だけつぶやいた。

彼女の嬉しそうな表情を見て、俺はまた泣いた。

それから俺たちは明け方まで、大好きなことをした。今日のそれは、いつものより何倍も何倍も幸福を感じた。


『なんでもするので、私の処女をもらってください!』へ続く。
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