6 / 38
修行!
しおりを挟む第二章 オレオレ詐欺を装備しました
しばらくの月日が流れた。今、私はジャックと共に、先生のもとで強くなるために修行をしている。朝から晩までみっちり修行だ。朝早く起きて、しっかりご飯を食べて、休憩を挟みつつ、戦闘の知識を頭に刻み込む。それが終わると、模擬戦だ。毎日、毎日、同じことを繰り返した。体が軋み、痛み、骨が泣いている。覚えても覚えても忘れていく知識を何度も詰め込み直し、やってもやっても失敗する技術をまたやり直す。修行は困難と熾烈を極めた。途中で何人も何人もやめていった。
普通の人が泣き叫ぶ地獄のような修行は、私にとっては、対して苦痛でもなかった。ホームレス生活の千倍簡単だ。失敗しても死なないし、何度でも成功数までやり直せる。こんなに楽なことは私の人生で初めてだった。
「今日は防具について教える」
そういうと先生は、私を防具屋に連れていってくれた。他の生徒はもうすでに防具を持っているから私だけの個人授業だ。店の中に入ると、所狭しと厳しい防具が顔を並べていた。巨大な防具の密林の中で私は迷子になりそうになった。
「ほらっ! 持ってみろ」
先生は私にアーマーのコテを投げてよこした。私はそれを両手で受け止めると、すぐに地面に落とした。鈍い重低音と共に、床にぶつかった。
「先生。私こんな重いものを装備できないわ」
「ああ。わかっている。お前はそんなの装備できない」
「ならどうして?」
先生の意図がわからずに、見えない疑問符を頭の中に描いた。
「お前が装備しなくても敵が使ってくる」
そういうと、先生はそのアーマーを一式装備した。
「いいか? お前の筋力と身長だとこのアーマーを突き破って攻撃を加えることはできない。愛、お前の強みはなんだと思う?」
「私の強み? なんでも食べられること?」
ホームレスの強みはその雑食性と、耐え難い苦痛に慣れていることだ。
「それもあるが、お前の強みはその体格だ。アーマーを装備している敵の想定敵は同じようにアーマーを装備している敵か、大男だ。だから、それを考慮して、甲殻の隙間は斜め下や側面を向いている」
「そこを小さい体の私が狙うのね?」
「その通りだ。さらにフルフェイスのアーマーを装備している場合は、愛の体はほとんど視界に入らない」
先生がアーマーの隙間からこちらを探す。
「ん? どこにいった?」
先生が重たいアーマーを煩わしそうに動かしながら、私を探す。キョロキョロとアーマーの頭部が周囲を探る。そして、左に顔を傾けたところでその動きを止めた。
「そう。そうやって戦うんだ」
私は地面に落ちていた棒切れを、先生の首元に突き立てていた、もちろん怪我をしないように。
私は棒切れをゆっくりと引き抜いた。
「先生の視界に入らないように気をつけながら背後を取って、棒をアーマーの隙間に刺したわ!」
先生はアーマーを脱ぐと私の頭に手を乗せた。
「よくやったじゃないか!」
そして、私の頭を力強く撫で回してくれた。こんなことを人にされたのは生まれて初めてだった。私の人生の一ページが次々と更新されていく。まるで、絶望の人生を歩んでいた人形が、必死で残りの人生を穴埋めしようとしているみたいだった。
その後、防具屋にある全部のタイプのアーマーの頭部を実際にかぶってみて、視界の大きさ、角度、首をどれくらい回せるか、アーマーの首の隙間、などを確認した。
全てのアーマーを先生は実際に着て、私はそれを相手にひたすら模擬戦闘した。相手の身長、体格、目線の高さ、アーマーの種類、持っている武器、全てが情報となり、私を有利にする。有利になった私が導かれるのは、冷たい敗北なんかじゃない。
「そろそろいいだろ」
「ええ。帰りましょうか」
「あ。そうだ。ちょっと目をつぶっていて」
「え? なんで?」
そして、私は目を強くつぶった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる