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戦闘イメージ

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視界から入ってくる情報を遮断して、暗闇の中に身を投じる。頭の中に浮かんだイメージは自分が負ける瞬間だった。全身を鋭利な刃物に切り裂かれて、血と汗が浮き出ている。目は虚ろな空洞のようになり、精気を失う。力なく垂れた四肢は、壊れた人形のようだった。

人間はなぜネガティブなイメージを浮かべずにはいられないのだろうか? 負けるかもしれない。死ぬかもしれない。ダメかもしれない。何かに挑む以上は、そのリスクは常につきまとう。そんな当たり前のことでも考えずにはいられないのだ。ネガティブなイメージは視界を狭め、私の体を敗北に近寄せる。心の中に暗い影がカビのようにはびこる。

私はそんなイメージを勢いよく振り払った。黒い映像の上から無理やりポジティブな映像を上書きする。私の勝利のイメージは心地よかった。リスクと恐怖に打ち勝った。努力は質量を孕んで、成功という果実を生み出す。

まっすぐに光だけを見つめていれば、視界の端に闇なんて微塵も映らない。自分が失敗するイメージなど浮かべなくて良いのだ。

私は、具体的なイメージを頭の中のキャンバスに描いた。まず、薙刀を持ったガードの弱点は、裂傷を孕んだ右腕。彼は今、傷ついた右腕と利き腕でない左手で薙刀を持っている。私は、その薙刀に掴みかかった。ガードの腕力は格段に弱まっていて、女の私でもすぐに優位に立てた。

ガードの力を利用して薙刀を地面に突き立てる。そして、薙刀を軸にして回転しつつ斬撃を放った。青い宝石のガードは私の体を支える支柱のような役目を果たした。斬撃は緑と赤のガードを遠心力を伴った攻撃で切りつけた。その攻撃は、まるで宇宙から見た惑星の自転のようだった。


次に、攻撃の反動を利用して空中に飛び上がる。体を翻して、剣を下に突き刺す形で構える。全身の体重を剣先に乗せて、青い宝石のガードのふくらはぎに全体重をかけて剣を突き刺した。剣は肉の繊維を砕きながら脚の腱を完全に切断した。首か心臓を狙えば殺害できたが、そこまでする必要はないだろう。

そして、赤と緑のガードが挟み撃ちにする形で左右から迫る。右と左から赤と緑の殺意が同時に距離を縮める。ということはつまり、緑のガードの方が早く私に到達するということだ。先ほどの戦いで三人の腕力と瞬発力のおおよその差を覚えておいた。

私は、スピードタイプの緑のガードの攻撃をフェイントを交えたステップで躱し、彼女に脚をかけた。彼女は前のめりにつんのめって、そのまま赤のガードを正面衝突する。正反対の方向から同時に加えられた力は、互いが互いのカウンターとなり、ぶつかり合った。赤と緑のガードはお互いの体を刺しあった。体重差もあって、緑はその場で気絶した。

最後に赤のガードが起き上がり、武器を捨てて逃げたした。私の勝利のイメージは具体性を内包しつつ、脳裏に正確に描かれた。まるで映画のコンセプトアートのようだ。脳内を満たした自分の勝利の映像は、私の中のネガティブな影を消しとばした。もう一辺の影も存在できないほどの激しい光が、自信となって燃え上がる。

私は目を開けた。そして、寸分違わず、脳内の映像を現実のものにした。
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