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パワーワードレストラン水屋
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『パワーワードを感知しました。ケンの能力が向上します』
別のテーブルに行くと、美人のお姉さんが右足にメガネ、左足にマフラーを履いていた。
メガネをたくさん集めて、一旦フレームとガラスに分解。
そして、フレームを無理やり接着剤で固めて靴にしていた。
マフラーは靴の形の型に巻きつけてからノリでガチガチに固めたのだろう。
今、俺の目の前にはマフラーとメガネを靴として履いている人がいる。
「ええ。そうよ。坊や、あなたとはすぐに友達になれそうね? どう一緒に食事でも?」
「ごめんなさい。私たち向こうでもう注文したので!」
そういうとアリシアが余計なことを言って、めちゃ嫌がる俺を無理やり俺たちのテーブルに引っ張っていった。
「あら。あなたもしかして」
お姉さんもアリシアのことを見て何か言いたそうだったが、最後まで聞けなかった。
元のテーブルに引きずられながら、変なメガネの使い方をしている人を見かけた。
「おい! アリシア! あの人メガネをかけているぞ!」
「ええ。それが何?」
「普通にメガネをかけるなんて変だな!」
「それもそうね。メガネを通常の用途通りにかけるなんておかしいわね!」
もう完全に感覚が麻痺しきっていた。
元のテーブルにつくと、アリシアがこちらを見て、
「あなたすぐに誰とでも仲良くなれるのね」
「そうだな。この世界に来る前の記憶はないけど、友達を作る才能が俺にはあるみたいだな」
「私は友達がいたことないから羨ましいわ」
アリシアは不穏と悔恨を混ぜたような複雑な表情をした。
「友達がいない?」
俺はアリシアに思わず聞き返した。その時だった。
「へいっ! お待ちっっっっっっ!」
イキのいいウェイターが勢いよく皿をテーブルに置いた。
皿は激しく音を立てながら、次々とテーブルに並んでいく。
俺はその様子を見て、頭の中に激しく疑問符が覆い尽くした。
脳裏の中に敷き詰められた疑問の褥で、脳内は真っ白になった。
「あの、これなんて料理ですか?」
俺は、テーブルに置いてある皿を指差して言った。
なんとその皿の中にはどう見てもただの水にしか見えない液体が載っていた。
はたから見れば、皿になみなみ水道水が注がれただけにしか見えないが、これは一体なんなのだろう?
「へいっ! それを言ったらパワーアップしないよっっっっっ! 自分で見抜いてみてねっっっっっっ!」
イキのいいウェイターはそう言うと、店の厨房に引っ込んだ。
「おい。これなんだよ。この店ふざけているのか?」
俺の目の前に置かれた皿には、一膳の箸が備え付けられていた。これで水を掬えと?
「いいから食べてみて!」
「俺は困惑した表情で水を箸で掬って口に運んだ。
ん? あれしまった。
動揺しすぎて、思わず、頭の中で思ったことを言っちまった」
「いいから早く食べて!」
俺は箸で水を掴もうとした。が、当然掴むことなどできない。
細い木彫りの箸の上を水がすり抜けて皿に戻るだけだ。
だがそれでも構わずそれを口に運んでみた。
「ん? む? なんだこの味?
これ、水のソテーか?
水を油で焼いて、ソテーにしてある。
それにこの水のステーキにはタレとして水がかかっている!」
『パワーワードを感知しました。ケンの能力が向上します』
どうやら正解だったようだ。
「ご名答!」
そう言いながらアリシアはせっせと水のソテーを口に運んでいる。
俺はもう一度水のソテーに箸を突っ込んだ。
すると、今度は、はっきりと箸でつかむことができた。
パワーワードによって“水を食べる能力”が向上したんだ!
まちがいない、俺は今、箸で水を掴んでいる。
俺は箸で掴んだ水のソテーをまじまじと見た。
透明なゼラチンのような水の塊に俺の顔が反射して、驚愕の表情を浮かべていることが伺えた。
「うわっ! すごい! すごすぎる! なんだこれ! 物理法則なんてまるっきり無視じゃないか!」
そう言いながら俺は箸で水のソテーを口腔の中に突っ込んだ。
すると今度は口の中で水が熱を放つのだ。
鉄板で激しく熱せられた水を舌が感知した。
舌の上で水の旨味が溢れて止まらない。
この水は肉よりも肉らしい。
俺は恐る恐る水のソテーを歯で噛み砕いた。
歯ごたえのある感触が顎の間に産み落とされる。
快音を脳内に響かせながら、確かな食感を感じる。
脳の中が情報の濁流に飲まれて混線を起こしている。
「なんだこれ! 水のステーキだ! すごい、水って肉なんだな!」
俺は意味不明な言葉を発した。だが、美味い。
それに水は肉だ。これは事実だ。
水のステーキは、しっかりと塩味が効いていて、歯ごたえも十分。
こんなに美味い水を食べたのは人生初めてだ。
この世界に来てから俺のテンションは絶頂の最高潮を迎えた。
激しく心臓が歌い、皮膚が焼けるように燃えている。
「すげー! パワーワードって面白い!」
俺は陳腐な表現しか出てこない自分が逆に魅力的に思えた。
もうどう形容していいかわからないほど困惑している。
「でしょ! さ、もっと食べて!」
そして、俺は次の皿に視線を移す。
その皿には、水の中に動物の骨のようなものが一本だけ浮いている。
まるで水死体が浮いているみたいだ。
俺はその骨を掴んで、右手で持ち上げた。
すると、当然のように骨だけが水の中から掬い上げられた。
水は音を立てながら皿の中に落ちていった。
俺は、バカバカしいことをしていると思いながらも、その骨にかじりついてみた。
「うん。骨だ」
そして、骨にまとわりつくただの水道水の食感を頭の中に強く描いた。脳内にイメージされたのはただの水がかかった骨ではなかった。
「こ、これは、水でできた骨つき肉だ!
つまり骨つき水だ!
野生の水を獲ってきて、殺して、骨ごと調理したんだな!」
『パワーワードを感知しました。ケンの能力が向上します』
どうやらこれであっているらしい。
「お見事! パワーワードとして感知されたわね!」
俺は、先ほどしゃぶっただけのただの骨をもう一度皿の水につけた。
そして、勢いよくその骨を宙に掲げた。すると、
「すげー。すげーよ。骨に肉として水が付いている。まるで水の骨を掴んでいるみたいだ!」
そして、俺は勢いよく白い骨が突き出たただの水にかぶりついた。
「うん! 美味! まるで水でできた豚か何かを殺して骨つき肉を水で作ったかのよう!
透明で淡白な見た目からは想像できないほど肉厚でジューシー。
これは水と骨の協奏曲だ!」
俺は、水肉を勢いよく噛み砕いて、次の皿に視線を刺す。
「これは七輪?」
目の前には轟々と火が燃えている七輪が置いてあった。
そこに、先ほどのイキのいいウェイターがやってきて、
「まさか!」
別のテーブルに行くと、美人のお姉さんが右足にメガネ、左足にマフラーを履いていた。
メガネをたくさん集めて、一旦フレームとガラスに分解。
そして、フレームを無理やり接着剤で固めて靴にしていた。
マフラーは靴の形の型に巻きつけてからノリでガチガチに固めたのだろう。
今、俺の目の前にはマフラーとメガネを靴として履いている人がいる。
「ええ。そうよ。坊や、あなたとはすぐに友達になれそうね? どう一緒に食事でも?」
「ごめんなさい。私たち向こうでもう注文したので!」
そういうとアリシアが余計なことを言って、めちゃ嫌がる俺を無理やり俺たちのテーブルに引っ張っていった。
「あら。あなたもしかして」
お姉さんもアリシアのことを見て何か言いたそうだったが、最後まで聞けなかった。
元のテーブルに引きずられながら、変なメガネの使い方をしている人を見かけた。
「おい! アリシア! あの人メガネをかけているぞ!」
「ええ。それが何?」
「普通にメガネをかけるなんて変だな!」
「それもそうね。メガネを通常の用途通りにかけるなんておかしいわね!」
もう完全に感覚が麻痺しきっていた。
元のテーブルにつくと、アリシアがこちらを見て、
「あなたすぐに誰とでも仲良くなれるのね」
「そうだな。この世界に来る前の記憶はないけど、友達を作る才能が俺にはあるみたいだな」
「私は友達がいたことないから羨ましいわ」
アリシアは不穏と悔恨を混ぜたような複雑な表情をした。
「友達がいない?」
俺はアリシアに思わず聞き返した。その時だった。
「へいっ! お待ちっっっっっっ!」
イキのいいウェイターが勢いよく皿をテーブルに置いた。
皿は激しく音を立てながら、次々とテーブルに並んでいく。
俺はその様子を見て、頭の中に激しく疑問符が覆い尽くした。
脳裏の中に敷き詰められた疑問の褥で、脳内は真っ白になった。
「あの、これなんて料理ですか?」
俺は、テーブルに置いてある皿を指差して言った。
なんとその皿の中にはどう見てもただの水にしか見えない液体が載っていた。
はたから見れば、皿になみなみ水道水が注がれただけにしか見えないが、これは一体なんなのだろう?
「へいっ! それを言ったらパワーアップしないよっっっっっ! 自分で見抜いてみてねっっっっっっ!」
イキのいいウェイターはそう言うと、店の厨房に引っ込んだ。
「おい。これなんだよ。この店ふざけているのか?」
俺の目の前に置かれた皿には、一膳の箸が備え付けられていた。これで水を掬えと?
「いいから食べてみて!」
「俺は困惑した表情で水を箸で掬って口に運んだ。
ん? あれしまった。
動揺しすぎて、思わず、頭の中で思ったことを言っちまった」
「いいから早く食べて!」
俺は箸で水を掴もうとした。が、当然掴むことなどできない。
細い木彫りの箸の上を水がすり抜けて皿に戻るだけだ。
だがそれでも構わずそれを口に運んでみた。
「ん? む? なんだこの味?
これ、水のソテーか?
水を油で焼いて、ソテーにしてある。
それにこの水のステーキにはタレとして水がかかっている!」
『パワーワードを感知しました。ケンの能力が向上します』
どうやら正解だったようだ。
「ご名答!」
そう言いながらアリシアはせっせと水のソテーを口に運んでいる。
俺はもう一度水のソテーに箸を突っ込んだ。
すると、今度は、はっきりと箸でつかむことができた。
パワーワードによって“水を食べる能力”が向上したんだ!
まちがいない、俺は今、箸で水を掴んでいる。
俺は箸で掴んだ水のソテーをまじまじと見た。
透明なゼラチンのような水の塊に俺の顔が反射して、驚愕の表情を浮かべていることが伺えた。
「うわっ! すごい! すごすぎる! なんだこれ! 物理法則なんてまるっきり無視じゃないか!」
そう言いながら俺は箸で水のソテーを口腔の中に突っ込んだ。
すると今度は口の中で水が熱を放つのだ。
鉄板で激しく熱せられた水を舌が感知した。
舌の上で水の旨味が溢れて止まらない。
この水は肉よりも肉らしい。
俺は恐る恐る水のソテーを歯で噛み砕いた。
歯ごたえのある感触が顎の間に産み落とされる。
快音を脳内に響かせながら、確かな食感を感じる。
脳の中が情報の濁流に飲まれて混線を起こしている。
「なんだこれ! 水のステーキだ! すごい、水って肉なんだな!」
俺は意味不明な言葉を発した。だが、美味い。
それに水は肉だ。これは事実だ。
水のステーキは、しっかりと塩味が効いていて、歯ごたえも十分。
こんなに美味い水を食べたのは人生初めてだ。
この世界に来てから俺のテンションは絶頂の最高潮を迎えた。
激しく心臓が歌い、皮膚が焼けるように燃えている。
「すげー! パワーワードって面白い!」
俺は陳腐な表現しか出てこない自分が逆に魅力的に思えた。
もうどう形容していいかわからないほど困惑している。
「でしょ! さ、もっと食べて!」
そして、俺は次の皿に視線を移す。
その皿には、水の中に動物の骨のようなものが一本だけ浮いている。
まるで水死体が浮いているみたいだ。
俺はその骨を掴んで、右手で持ち上げた。
すると、当然のように骨だけが水の中から掬い上げられた。
水は音を立てながら皿の中に落ちていった。
俺は、バカバカしいことをしていると思いながらも、その骨にかじりついてみた。
「うん。骨だ」
そして、骨にまとわりつくただの水道水の食感を頭の中に強く描いた。脳内にイメージされたのはただの水がかかった骨ではなかった。
「こ、これは、水でできた骨つき肉だ!
つまり骨つき水だ!
野生の水を獲ってきて、殺して、骨ごと調理したんだな!」
『パワーワードを感知しました。ケンの能力が向上します』
どうやらこれであっているらしい。
「お見事! パワーワードとして感知されたわね!」
俺は、先ほどしゃぶっただけのただの骨をもう一度皿の水につけた。
そして、勢いよくその骨を宙に掲げた。すると、
「すげー。すげーよ。骨に肉として水が付いている。まるで水の骨を掴んでいるみたいだ!」
そして、俺は勢いよく白い骨が突き出たただの水にかぶりついた。
「うん! 美味! まるで水でできた豚か何かを殺して骨つき肉を水で作ったかのよう!
透明で淡白な見た目からは想像できないほど肉厚でジューシー。
これは水と骨の協奏曲だ!」
俺は、水肉を勢いよく噛み砕いて、次の皿に視線を刺す。
「これは七輪?」
目の前には轟々と火が燃えている七輪が置いてあった。
そこに、先ほどのイキのいいウェイターがやってきて、
「まさか!」
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