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パワーワードの産物
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「お前達の負けだ」
どこからともなくウルフの声が聞こえてくる。
「え? まだ生きているの?」
「まずい。仕留めきれなかったみたいだ!」
パワーワード使い同士の戦いで、相手を窮地に追い込むのはご法度。
必ず一撃で仕留めなければならない。
なぜならば、言葉一つで容易に逆転されてしまうからだ。
ウルフの声はウルフの口から聞こえてくる。
もう完全に物理現象など追いついてこれていない。
上半身と下半身に分断されたその間の三メートルほどある何もない空間から声が聞こえてくる。
きっと、今現在はここがウルフの口内ということになっているのだろう。
ウルフは事あるごとに自分の口に関するパワーワードと使っていた。
パワーワード使いにとって口が最も重要な器官だと意識してのことだろう。
「俺は絶体絶命の状態から逆転する!」
と、ウルフが高らかに勝利宣言する。
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「まずい! アリシア本当にやばい!」
「ど、どうすればいいのっ?」
「俺は不可能を可能にする」
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「もうダメだ。本当に俺たちの負けだ!」
「じゃあ私たちもピンチになりましょう!」
「もう遅い。次の一撃で俺たち二人とも即死だ! もう本当にどうしようもない」
「俺の不利は有利だ」
ウルフのしゃがれ声が俺たちの鼓膜を舐める。
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「そんな。こんなに頑張ったのに!」
「ダメだ。俺たちの負けだ」
俺は俯く彼女の顔を見て、
「アリシア?」
「何?」
「俺は知る由もないことを知る。知っているはずのない、思いつくはずのない逆転の糸口を思いついた!」
もうウルフも理解したのだろう。この勝負はウルフが勝つ。
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「アリシア、俺たちずっと友達だよな?」
「うん! 私たちは死んでも友達よ!」
「この世界に来てよかったよ。アリシアに、みんなに会えて本当に良かった」
「ケン。私、実は--」
アリシアが何か言い掛けたその瞬間、
「な、なんだこれはっ! 信じられない。こんなことがあるのか?」
ウルフが驚愕の事実を知った時のような声をあげた。
ウルフは戸惑う俺たちに、
「おい! アリシアといったな。アリシア。お前とんだ嘘つきだな」
ウルフは上下に分断された声帯を大きく震わせて笑い始めた。
「グルルルル。あはははははは。ハハハハハ!」
「なんだ? なんで笑っている?」
「その女に聞いてみろよ」
「なんだ? どういうことだ? アリシア?」
アリシアは見たこともないような表情でこちらを見ている。
この表情は罪の意識を背負った人間の顔だ。
張り付く緊張感が自分の窮地を忘れさせる。
「アリシア? どうして何も言わない? ウルフは何で笑っているんだ?」
「あーハハハハハ。ハハハハハ。クックック」
ウルフはさらに嬉しそうに笑う。存在しないはずのウルフの喉は笑い声で張り裂けそうだ。
「アリシア?」
アリシアは何も答えない。
「ウルフ? どういうことだ? アリシアは何を隠している?」
「アリシアに聞けよ。パワーワードの産物について聞け!」
ウルフの声の届く先が俺からアリシアに変わる。
「おら! アリシア! お前が言わないなら俺の口から言うぞ!
俺のこの存在しない口からな!」
「アリシア? パワーワードの産物ってなんのことだ?」
俺はパワーワードの産物についての知識を思い出した。パワーワードの産物とはパワーワードによって生み出されたものの呼称だ。
例えば、牛乳のダンジョンとかだ。
あれはパワーワードの力によって結晶化した牛乳をくりぬいて作ってある。
だが牛乳が通常の温度で結晶化することなどない。
パワーワードの力を借りて結晶化した牛乳はパワーワードの産物だ。
ちなみにあのダンジョンを作ったのはアリシアの両親だ。
それがきっかけでパワーワード使いが増え、同時にモンスターも増えた。
だからアリシアは街の人たちに忌み嫌われて、悪魔の子と呼ばれていたのだ。
さらに、俺たちの敵であるウルフやその辺にいるモンスターもパワーワードの産物なのだ。
ウルフは、両親に『欲しくない子供が欲しい』と言われて生み出されたのだ。
だから通常親が欲しがらないような格好(狼の格好)で生まれてきたのだ。
その辺にいるテッポウナギなども同じようにして生まれた。
ウルフもモンスターもパワーワードの産物だ。
パワーワードの産物の共通点は一つ。物理法則、自然現象を無視しているため自然界には存在しないのだ。
「アリシア? 答えてくれ。なんでウルフはお前にパワーワードの産物について聞けと言った。アリシア!
お前もパワーワードの産物なんじゃないのか?」
どこからともなくウルフの声が聞こえてくる。
「え? まだ生きているの?」
「まずい。仕留めきれなかったみたいだ!」
パワーワード使い同士の戦いで、相手を窮地に追い込むのはご法度。
必ず一撃で仕留めなければならない。
なぜならば、言葉一つで容易に逆転されてしまうからだ。
ウルフの声はウルフの口から聞こえてくる。
もう完全に物理現象など追いついてこれていない。
上半身と下半身に分断されたその間の三メートルほどある何もない空間から声が聞こえてくる。
きっと、今現在はここがウルフの口内ということになっているのだろう。
ウルフは事あるごとに自分の口に関するパワーワードと使っていた。
パワーワード使いにとって口が最も重要な器官だと意識してのことだろう。
「俺は絶体絶命の状態から逆転する!」
と、ウルフが高らかに勝利宣言する。
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「まずい! アリシア本当にやばい!」
「ど、どうすればいいのっ?」
「俺は不可能を可能にする」
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「もうダメだ。本当に俺たちの負けだ!」
「じゃあ私たちもピンチになりましょう!」
「もう遅い。次の一撃で俺たち二人とも即死だ! もう本当にどうしようもない」
「俺の不利は有利だ」
ウルフのしゃがれ声が俺たちの鼓膜を舐める。
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「そんな。こんなに頑張ったのに!」
「ダメだ。俺たちの負けだ」
俺は俯く彼女の顔を見て、
「アリシア?」
「何?」
「俺は知る由もないことを知る。知っているはずのない、思いつくはずのない逆転の糸口を思いついた!」
もうウルフも理解したのだろう。この勝負はウルフが勝つ。
『パワーワードを感知しました。ウルフの能力が向上します』
「アリシア、俺たちずっと友達だよな?」
「うん! 私たちは死んでも友達よ!」
「この世界に来てよかったよ。アリシアに、みんなに会えて本当に良かった」
「ケン。私、実は--」
アリシアが何か言い掛けたその瞬間、
「な、なんだこれはっ! 信じられない。こんなことがあるのか?」
ウルフが驚愕の事実を知った時のような声をあげた。
ウルフは戸惑う俺たちに、
「おい! アリシアといったな。アリシア。お前とんだ嘘つきだな」
ウルフは上下に分断された声帯を大きく震わせて笑い始めた。
「グルルルル。あはははははは。ハハハハハ!」
「なんだ? なんで笑っている?」
「その女に聞いてみろよ」
「なんだ? どういうことだ? アリシア?」
アリシアは見たこともないような表情でこちらを見ている。
この表情は罪の意識を背負った人間の顔だ。
張り付く緊張感が自分の窮地を忘れさせる。
「アリシア? どうして何も言わない? ウルフは何で笑っているんだ?」
「あーハハハハハ。ハハハハハ。クックック」
ウルフはさらに嬉しそうに笑う。存在しないはずのウルフの喉は笑い声で張り裂けそうだ。
「アリシア?」
アリシアは何も答えない。
「ウルフ? どういうことだ? アリシアは何を隠している?」
「アリシアに聞けよ。パワーワードの産物について聞け!」
ウルフの声の届く先が俺からアリシアに変わる。
「おら! アリシア! お前が言わないなら俺の口から言うぞ!
俺のこの存在しない口からな!」
「アリシア? パワーワードの産物ってなんのことだ?」
俺はパワーワードの産物についての知識を思い出した。パワーワードの産物とはパワーワードによって生み出されたものの呼称だ。
例えば、牛乳のダンジョンとかだ。
あれはパワーワードの力によって結晶化した牛乳をくりぬいて作ってある。
だが牛乳が通常の温度で結晶化することなどない。
パワーワードの力を借りて結晶化した牛乳はパワーワードの産物だ。
ちなみにあのダンジョンを作ったのはアリシアの両親だ。
それがきっかけでパワーワード使いが増え、同時にモンスターも増えた。
だからアリシアは街の人たちに忌み嫌われて、悪魔の子と呼ばれていたのだ。
さらに、俺たちの敵であるウルフやその辺にいるモンスターもパワーワードの産物なのだ。
ウルフは、両親に『欲しくない子供が欲しい』と言われて生み出されたのだ。
だから通常親が欲しがらないような格好(狼の格好)で生まれてきたのだ。
その辺にいるテッポウナギなども同じようにして生まれた。
ウルフもモンスターもパワーワードの産物だ。
パワーワードの産物の共通点は一つ。物理法則、自然現象を無視しているため自然界には存在しないのだ。
「アリシア? 答えてくれ。なんでウルフはお前にパワーワードの産物について聞けと言った。アリシア!
お前もパワーワードの産物なんじゃないのか?」
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