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残酷な真実
しおりを挟む第四章 残酷な事実
「俺が……パワーワードの産物?」
俺は訳も分からず鸚鵡のように、アリシアの台詞をなぞりつける。
「そうよ。よく思い出して」
俺はこの世界に来てからの全ての違和感を頭の中に描いた。
俺がこの世界に来た時、目の前にはアリシアがいた。
そして、アリシアと出会った俺は彼女の家で暮らすことになった。
彼女にもらった部屋は使っている形跡はないが、非常に清潔で掃除が行き届いていた。
まるで、俺があの日あそこに現れることを知っていたかのようだ。
一番最初にアリシアに会った時、彼女はもうすでにパワーワードには慣れているような様子だった。
だがパワーワードで強くなるためには、“二人以上の人間がいる場でパワーワードを言う”必要がある。
ならアリシアはどうやってパワーアップをしていたんだ? 親も兄弟も友達すらもいない完全に一人の状態で。
俺はアンジェリカとの不自然な会話を思い出す。
コインと綿棒をアンジェリカから受け取る。
【このコイン私の国の古いコインでーす】
アンジェリカが俺のコインを指差して言う。
俺がこの世界に来た時に、ポケットの中に入っていたコインはおそらく俺の世界から持ってきたものだと思っていた。
いや、そう思わされていた。
アリシアの趣味は一人二人三脚。一人合宿、一人結婚。いくらパワーワード使いでも、そんなことを一人でできるはずがない。
俺がこの世界に来た時に、俺が来ていた服はこの世界の服とは随分と違うものだった。
アリシアにはずっと空想の友達がいた。
家族も友達もいない一人ぼっちのアリシアにとってはそれが唯一の心の支えだったのだろう。
頭の中に浮かんだ数々の違和感をパズルのピースのように組み合わせていく。
そして、俺の頭の中には一枚の真実の写真が浮かび上がった。
その写真には部屋に一人でいるアリシアだけが写っている。
そして、この写真の中には、写っていない俺が写っているのだ。
「俺が誰なのかわかった」
俺はボソリと言った。
「うん。ごめんね。私はずっと嘘をついていた。
最初は本当に願いが叶うなんて思っていなかったの」
アリシアはとうとう泣き始めた。
「私最初は本当に嬉しかったの。
初めて本物の友達ができたような気がして、初めて孤独から抜け出せたような気がしたの。
もう少しだけ後で言おう。
もうちょっとだけ今の生活を壊したくない。
そして、今の今まで真実を言い出せなかったわ」
俺はどうしていいのかわからなくなった。
「ケンは異世界から来た異世界人じゃないわ」
「アリシアがそう見えるように化粧したんだな?」
アリシアは俺が目を覚ます前に、俺に手作りの異世界風の服を着せてポケットに外国のコインを突っ込んだんだ。
俺が本当に異世界から来たように見せかけるために。
特に疑問にも思わなかったが、本当に異世界から来たのなら言語が通じるのも文字が書けるのも、この世界の常識を知っているのもおかしい。
「ええ。ケンは記憶を失っているんじゃないの。
元から記憶なんて存在しないのよ。
私と出会ったあの瞬間にこの世に誕生したのよ」
「そうだったのか。アリシアはなんて願ったんだ?」
「見えない友達が見える」
「そうか。そういうことだったのか」
「あなたはこの世界に来てからすぐに私と仲良くなった。
さらに、レストランでもすぐに友達ができた。
椅子でできた家に住むメンバーともすぐに友達になれたんでしょ?
あれは偶然でもなんでもない。
あなたという存在の特性なのよ」
「だから俺にはすぐに友達ができたんだな。あれは俺の能力だったんだな」
「あなたはパワーワードによって現実のものとなった存在。
あなたはずっと私の友達だった。
最初からずっと一人ぼっちの私といつだって一緒にいてくれた。
あなたは…………現実になった私の空想の友達よ」
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