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道程
しおりを挟む第一章 旅路
[翌日]
俺たちは準備をすませると、竜の世界に向かった。メンバーは俺、アル、アリシアとウレンケル(第二巻でちょろっと出て来た黒髪黒目の“なん”のメンバー。指人形を使って会話をします)の四人だ。
竜の世界は、俺たちが今いるオオカミ大陸の隅っこにある。オオカミ大陸は、巨大な扇のような形の大陸だ。その中心がハイデルキア。ハイデルキアの左隣が公平の国だ。
俺たちは、公平の国を通り抜けそのままずーと西に進んだ。国と国の間には、どの国の領土にも属さない公共地域がある。そこは誰が通ってもいいし、資源も取り放題だ。
その代わり、無法地帯に近い状態になっているから普通はあんまり人は近づかない。
通るにしてもパワーワード使いの護衛をつけて、さっさと通るのが普通だ。
俺たちは、“ガラスでできた世界樹”の麓を通り、“砂でできた湖、通称砂湖”を船で通った。
その後、透明な川を泳いで渡った。透明な川は、透明だった。
泳ぐとき、まるで何もない宙を泳いでいるような感覚だった。手で何もないところをクロールすると、しっかりと体が前に進む。川の底にはカニや魚がたくさんいた。
でも、川の水は透明だから魚が空を泳いでいるみたいだった。
透明な川を泳ぐと、次は、“箸でできた橋”を渡った。巨大な渓谷にまたがる橋は、粗末な割り箸でできていた。
「何で割り箸なんかで橋を作ったんだ? 普通に木材を使った方がよくない?」
「パワーワードで作った方が壊れにくいんだ」
と、アル。
「ベテランのパワーワード使いが作ったこの橋は、とっても丈夫なのよ。ねーマリーお母さん」、「その通りよ。私の可愛い娘ウレンケル・ブラック!」
と、指人形をぴょこぴょこ動かしながらウレンが言った。
橋を渡りきると、“マグマの花畑”を通り、“カッパ村”を横切り、“蛍光灯でできた竹林”を進んだ。
マグマの花畑では、マグマを吸って育つ花を一輪取ろうとした。だが、花自体がマグマ化していて無理だった。
その花は、真っ赤なマグマのガラス細工みたいだった。咲き乱れるマグマは危険と美を孕む、バラのような刺々しい美しさがあった。
カッパ村では、カッパがたくさんいた。河童巻きをくれた。美味しかった。それだけ。
蛍光灯でできた竹林は、地面に蛍光灯が根を生やし、竹林を生み出していた。整備された蛍光灯の林は、人工的だがどこか爽やかだった。光を周囲に産み落とす蛍光灯は、暗い林を愛で慈しむ。
そして、長い道程を経て、ついに竜の世界にたどり着いた。
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