この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜

大和田大和

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竜王の過去

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[同時刻 竜王視点]

竜王は空を見つめる。タカのように鋭い眼光が刺すような視線を遠くに投げる。鋭い眼光は、焦点の合った部分から空が壊せそうなほどだった。

竜王は、頭の中に辛い思い出を浮かべる。かつての苦しかった過去が頭の中に飛び込んでくる。


【創造主様! 置いてかないで!】
竜王は悲痛な叫びをあげる。

【ごめんな。俺はもう疲れたんだ】
創造主は消え入りそうな声を出す。

【そんな! いやだ! 一人にしないで!】
若かりし頃の竜王は、目に涙をたくさん浮かべる。涙は頬を切って地べたに落ちる。

【お前がいつか最強の竜王になったら、その時はまた会おう】
創造主はついてこようとする竜王を手で制止する。

【いやだ。いやだ。いやだ。僕は創造主様のことが大好きなんだ!  だから創造主様と一緒にいさせてよ!】
竜王は小さい手足をよちよち動かしながら、置いていかれないよう必死で主人を追いかける。泣きじゃくりながら、嗚咽をあげながら、必死で一緒に居られるように頼んだ。

【いつかまた会えるよ。約束だ】
創造主は、竜王に言った。そんな約束守れるはずないのに。

【置いていかないで! お願い! 一人ぼっちは嫌だよ! もう一人は嫌だっ!】
そして、創造主は竜王の元を去った。それっきり二度と会うことはなかった。

“創造主が置き去りにした子竜”は史上最強の竜王になった。歴代の竜王の中でも群を抜いて最強だった。歴史上の全ての竜王の力を合わせても、現竜王には敵わないだろう。

創造主にもう一度会いたい一心で強くなった。どんな試練にも耐えた。どんな苦しいこともはねのけた。努力に努力を重ねた。苦痛も地獄も悲しみも不運も不幸も、全て力でねじ伏せて乗り越えた。

竜王は今でも信じている、いつか創造主が自分の前に再び現れて、昔みたいに優しく頭を撫でてくれることを。

竜王の想いは一千年経っても色あせることはなかった。風化することも錆びつくこともなく、いまだに心を蝕み続ける。

冬の花火のように色鮮やかだけど、ほんの少しだけ冷たい想い。それが竜王の胸をがんじがらめに縛り上げる。
「創造主様。あなたに会いたい」
竜王は遠くを見つめながら呟いた。消え入りそうな声は、泣いているみたいだった。
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