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世界の入り口

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「そーよ。ってか早く自分で飛びなさいな!」
「って離すなっ!」
アリシアは俺のことを落っことした。だけど、今度は先ほどと違って動揺などしない。

俺は冷静に周囲を見渡した。俺は空の真ん中にいる。雲がいくつも空を這っている。

雲の隙間には、いくつもの宙に浮く島がある。水色のクリスタルのようなものがあちこちから飛び出ていて幻想的だ。俺は、竜の目で絶景を脳の中に送り込む。

ここが竜の世界か!

そして、自分の背中から生えている翼を思いっきり動かした。空を飛ぶ感覚は、平泳ぎで海を泳ぐときによく似ていた。背中から生えている翼で空気をかき分けて空を泳ぐ。
「いやっほぉぉおおおおおおお!」
俺は、竜が住んでいる世界だと思っていた。だがここに竜など住んでいない。

「すげー! 空を飛んでいる!」
ここは“竜の世界”、竜がいる世界。

「まるで流れ星になったみたいだ!」

人が竜に変身する世界だ。
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