この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜

大和田大和

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ギャラクティックストーム

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「おい! 待て!」
俺はクリスタルの間を次々に塗っていく。まるで敵選手をごぼう抜きにするサッカー選手だ。針に糸を通すように、浮島をかわしていく。

波状に飛び、上下に飛び、回転しつつきりもみした。

急降下、急上昇、背泳ぎ飛行、カーブ飛行。


翼を動かす感覚は、なんだかむず痒かった。ずーとあぐらをかいて痺れた足は、なんだか自分の足じゃないような感覚になるだろ。あの感覚が、背中の骨から生えているみたいだ。

手をバタバタ動かして飛ぶというよりは、新しい手が背中から生えたと言ったほうが近いだろう。背中に新たな神経が付け加えられたかのようだ。

最初は、動かしにくかったけど、もう慣れた。

俺は体を回転させながら翼を折りたたみ弾丸のように飛んだ。回転するジャイロボールになったような気分だ。この技をドラゴンバズーカと名付けよう。
「いけええ! ドラゴンバズーカ!」
俺は浮島の一個にドラゴンバズーカで突っ込んだ。


頭を思いっきり岩石にぶつけた。果物が潰れるような鈍くグロテスクな音が聞こえた。
「いっっった……く……ない? 痛くないぞ!」

俺は自分の頭に翼で触れた。傷一つついていない。俺の頭の代わりに目の前にある岩が砕けていた。

さっきの音は俺の頭で岩を砕いた音だったんだ。
「すごい! 全身の能力が強化されている!」
そこに、銀竜アリシアと絵竜アルトリウスが来た。

「遅いぞ! お前たち!」
「ケン! はしゃいでないでさっさと竜王に会いにいくぞ?」
アルの絵で描かれた目が、“やれやれ”という感じの目になった。絵竜の横に吹き出しのようなものがクレヨンで描かれ、そこに“やれやれ”と書かれた。おそらく“やれやれ”と思っているに違いない。

「おい! アル。今、やれやれって思っているのか? 顔に書いてあるぞ!」
こいつ絵状態の時は、思っていることが顔の横の吹き出しに描かれるんだな。

「当たり前だ! ほら。さっさといくぞ!」
顔の横の吹き出しには、“お腹すいたから早く行きたい”と書いてある。それが本心か。

「ケン! あなたのドラゴンバズーカと私のドラゴンバスターどっちが強いか勝負しない? 勝った方が真のドラゴンよ!」
「望むところだ!」

「おい! そんなことをしている場合じゃないだろ! ケン! ヴィジョンでハイデルキアが滅ぶところを見たんだろ!」
「あ、そうだった」

「アリシアもアリシアですぐに他人に影響されて同調する癖をなんとかしてくれ!」
「すいません」

「お前たちは、すぐにはしゃぎまわって目的を忘れる。
小学生ならまだしもお前たちは立派な大人だろ! 
小学生に呆れられるようなバカなことばかりしてくれるな! 
お前たちのお守りをいつもいつもさせられる私の身にもなってくれ! 
節度と自覚を持って行動してくれないと困る! 
私たちはここに遊びに来たのか? 違うだろ! 
私たちはここに同盟を結びに来たんだ! 
遊んでいる暇も、ふざけている場合でもない! 
ドラゴンになって浮かれる気分はよくわかる。私だって空を鳥のように気持ちよく飛びたい。でも……」


[八分後]
アルは口腔に周囲の空気を流し込む。大きく吸い込まれた息で、彼女の爬虫類チックな腹はパンパンに膨らんだ。大気の温度が少し上がる。焼け付く焦燥感が空を焦がす。

浮島の地面には振動が伝わり、震え始めた。そして、
「ドラゴンギャラクティックストーーーーーーム!」

アルの放ったファイアーボールは、青空を横切って遥か彼方の海面に向かって飛んでいった。

火の玉は絵で描かれていた。赤い歪な線で縁取られた球体の周囲に、文字で“パチパチ”、“ジュージュー”、“ごおおおおお”と書かれている。ファイアーボールの発する音を表しているのだろう。
なんだか漫画的な表現だな。

そして、ファイアーボールは海面にぶつかって小さな水柱を作った。


それを見て、俺とアリシアは、
「「おおー!」」
感嘆の声をあげた。

「どうやら真のドラゴンの称号は私が持つにふさわしいようだな」
と、満足げなアル。顔の横には吹き出しで“えっへん”と書かれている。

「すごいじゃないか! アル! お前がナンバーワンだ!」

「アルちゃん! すっごい! これなら竜王を暗殺できそうね!」

「いや暗殺はまずいだろ! 正々堂々正面から勝負して、私が次の竜王になるとするか」

「ん? 俺たち同盟を結びに来たんじゃなかったっけ?」


その後、もう三十分ほどみんなで遊んでからしぶしぶ竜王に会いにいくことにした。
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