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竜王視点
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竜王はかつて自分の師だった創造主との思い出を頭の中に描く。
一千年経った今でも濃厚に脳裏に浮かび上がる。
永遠に色褪せない悠久の思い出は、咲き誇る花の絨毯よりも美しい。
【創造主様。ほら見て! 空の上に立った!】
子供時代の竜王は、会得した能力を使って空の上に立って見せた。小さな体が空の上に鎮座している。まだそこには王者の風格などない。
【よくやったな! えらいぞ!】
【えへへ。創造主様が教えてくれたおかげだよ! 創造主様がいなかったらできなかった!】
【いいや、俺のおかげなんかじゃない。お前が一生懸命頑張ったからできたんだ】
【でも、創造主様が僕にこの能力を教えてくれたんでしょ? なら創造主様のおかげだよ!】
【確かに俺がこの能力をお前に教えなければ、お前はできなかった。
だけど、お前が努力しなければ強くなれなかった。お前が自分の意思で諦めないことを選んだんだ!
紛れもなくお前の力だよ】
【そ、そうなのかな】
【ああ! 絶対にそうだ! よく頑張ったな】
創造主は竜王の小さな頭を撫でる。優しくて同時に力強い。触れた箇所から愛がマグマのようにこぼれ落ちる。
竜王はそれがたまらなく幸せだった。他の誰でもなく創造主に認められることが何よりの幸福だった。
【創造主様! これ創造主様のために作ったんだ】
竜王は手作りの花の冠を作って創造主に手渡した。
【俺にくれるのか?】
【うん!】
【ははは。ありがとう。俺にはちょっと華やか過ぎるかな。でも嬉しいよ】
【喜んでくれてよかった! また僕がいつでも作ってあげる】
【ああ。また作ってくれ】
【創造主様なんて知らない!】
竜王は創造主と喧嘩をして、一人洞窟の奥に閉じこもった。外には雨が降り、世界を濡らす。空が泣いているみたいだ。
【もう二度と会うもんか!】
降りしきる雨の中、だんだんと竜王の小さな体が冷めてきた。
【うう。寒いな。でももう帰らないって決めたもん】
冷たい体はより一層冷たくなる。竜王の意識は、次第に薄れていく。
そして、
【見つけた! 今度はこんなところまで家出したのか。ほら帰るぞ】
創造主はいつだって竜王のことを見つけてくれた。どんなに喧嘩しても。
もう知らないって怒っても、いつも竜王のことを見つけてくれる。竜王にとって、それはとても嬉しいことだった。
【創造主様。ごめんなさい】
【俺のことなんてもう嫌いになったんじゃないのか?】
【ううん。そんなこと言ってない!】
竜王は創造主の背中の上で、少しだけ笑った。
【創造主様。今日は僕一人の力で悪者をやっつけたよ!】
【そうか! 本当に強くなったな! 誇らしいよ】
【それでね助けた子供がお礼にって】
竜王はバスケットいっぱいの果物を取り出した。
【じゃあ。一緒に食べよう】
竜王の頭の中には、永久に輝き続ける思い出だけが火花を散らす。何よりも幸せな出来事は死ぬまで心に残り続ける。
生まれたから死ぬまでの短い間にできることなんて限られている。
生きた証とはなんだ? その答えはきっと頭の中にある。
楽しかった思い出、苦しかった思い出、その人の頭にしかない唯一のアルバム。それこそが生きるということだ。
その後、竜王は創造主に捨てられた。そして、その悲しみをバネに大きく強く成長した。
【これで俺の勝ちだ】
大人になった竜王は目の前に倒れた先代竜王の亡骸を見つめた。
名もなき子竜は成長し、ついに最強の竜王の称号を得たのだ。
【新たなる竜王様だ】【竜王様】【なんと強い】【おそらく歴代最強だ】
周囲の竜たちが恐れ、おののく。
竜王は世界で一番強くなった。誰よりも強くなった。
自分が世界最強だという自信だけがある。
逆らうもの全てを引き裂き、捻り潰すことができる。
だけど創造主は竜王の目の前に現れてはくれなかった。
創造主と別れた後の竜王の生活は悲惨だった。ただひたすらに力だけを求め続けた。創造主から受け取った愛を忘れ、友情を忘れ、全部を力で上書きした。
だけど忘れていないものが一つだけある。
【創造主様。我は竜王になりました。我はあの時の約束を、竜王になったら会いにきてくださるという約束を忘れていませぬ!】
竜王は空を見つめて、
【創造主様。あなたに会いたい】
そして、シーンは切り替わり、ケン視点に戻る。
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