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おもちゃ片付け

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「確か北下ほっかのダンジョンよ! クリスタルガーデンってとこ」
アリシアは地図を見せてくれた。

「北下か。この世界の方位はわかりにくいな」

この世界は、上下に縦に長い。だから東西南北に上下が加わっているのだ。

通常の東西南北で横方向を表して、その後に縦のどの位置かを表す上下を付け加える。

例、北西下 北西に行った後に、下に降りる。
     南北上 南北に行った後に、上に登る。

    だから、北下は、北に行って、下に降りるんだ!

「そこに竜王の直属のドラゴンナイトたちがいて、そいつらに合流しろってことだったよな?」
「ああ。竜王ほどではないが、相当強いだろうな。おそらく私たちが行かなくても事件は解決するだろうな!」
「じゃあなんで行くんだよ!」

「ケンが竜王に気に入られたからでしょう。さっさと力を示してきなさいな! 私とアルちゃんはのんびりお茶でもすすって待っているから!」
「オメーも来るんだよ!」
そして、ブーブー文句を垂れるアリシアを引きずってダンジョンへ向かった。




[一方その頃  クリスタルガーデンにて]

真紅の血がクリスタルを汚す。透明なガラス細工は見るも無残に赤色で染め上げられた。光を綺麗に反射するプリズムはもう機能しない。ただ鈍い赤一色に輝くだけだ。

床も壁も天井も何もかもが血飛沫で汚された。仄暗い室内に血の匂いが充満している。


周囲には肉や骨が散乱している。まるで子供がおもちゃ箱をひっくり返して遊んだ後みたいだ。

楽しく遊んだ後は、散らかったおもちゃが地面にいくつも転がっている。そんな場面を想像してほしい。

それを見てお母さんがいつもよりちょっと怖い顔で、叱りつける。『こら! 早くお片づけなさい!』
そして、子供はしぶしぶおもちゃを箱に戻す。そうしないと次のおもちゃを買ってもらえないから。

だけど、このダンジョンの中は暖かいお家の中なんかじゃない。
叱りつけてくれるお母さんも、守ってくれるお父さんもいない。こわーいこわーい悪者がいる。

誰も助けてくれないし、誰も守ってくれない。本物の恐怖と地獄絵図を見て、お母さんのことを思い出す。

お母さんがいつも子供を叱るのは、ダメにならないように。嫌な大人にならないようにするためだったのだ。

優しいお母さんに叱ってもらえるのは幸せな証拠。子供はみんな、『お母さんなんていなければいいのに』と考える。

だけど、不幸なことはお母さんがいないこと。叱りつけてくれる人がいないと、人間はダメになる。嫌な大人になるのだ。

そう、大人になってもおもちゃを片付けられなくなっちゃうのだ。
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