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世界一周旅行(10秒で)
しおりを挟む一瞬で、世界は白黒になる。色を持つ全ての物質から色が剥がされる。太陽から打ち込まれる光すらはじき返された。
時間の概念がゆらぎ、空間の概念が蹂躙される。
空には大きくいくつもの亀裂が生じている。きっと時間、空間の概念が壊されたのだろう。その中には、子供の頃の竜王の姿があった。創造主のことを友として愛していた様子が鮮明に描かれる。
竜王の力の源は、現代ではゴミ以下の価値しかない、ただの愛だった。
そして、ビッグバンのような衝撃と共にブレスは宇宙に向かって飛んで行った。いくつもの星を殺しながら黒い空を泳いでいく。ほうき星を飲み込み、ブラックホールを逆に吸い込み、連星を砕き、銀河を引き裂いて見えなくなった。
竜王によるたった一撃の攻撃によって、空に浮かんでいた星の配置が変わった。天体図を書き直す必要があるな。
攻撃を打ち込んだ瞬間、一瞬だけ空は夜になった。おそらく攻撃の反動でこの惑星が一回転したのだろう。
竜王の攻撃は、星の自転にすら影響を与えてしまった。
世界から風が消えた。空気の流れがなくなったのだ。きっとあまりに強い風圧によって圧倒されたのだろう。嵐の後に訪れた凪は、どこか心地のいいものだった。
「吹き飛んだか」
竜王は満足したのか穏やかな表情になっていた。そして、俺の方を見て、
「ケン。来い」
俺は竜王の元に念動力で引き寄せられた。そして、竜王の頭の上に乗った。
「息子を救ってくれたことに礼を言う」
「ああ! 感謝しろよ!」
俺はちょっと強気に言って見せた。多分こっちの方が竜王好みの返事だろう。
「お前との約束はしっかりと守ることをここに誓う。これより、竜の世界はハイデルキアと同盟を結ぼう。我と」、「あたちと」、「僕はこれからはお前の味方だ!」
竜王は三つの首それぞれでハイデルキアに同盟を誓ってくれた。
「よろしくな!」
「同盟を結んだからには、こちらが困った時に手助けを求めるぞ?」
「もちろんなんでも言ってくれ! でも困ることなんてあるのか?」
「ああ。今、困っている。あたちの攻撃で」、「エディフィスドラゴンは」、「はるか彼方に飛ばされた」
「ん? ってことは先代竜王の息子はまだ生きているのか?」
「まあ。手加減したからな」
「どこかだよっ!」
「そこでお前に頼みがある。今、エディフィスドラゴンは高速で空を吹っ飛ばされている最中だ。我が今からケンのことをエディフィスとは反対方向に投げる」
「?」
俺の頭の中に疑問符が敷きつめられるような音がした。
「そして、エディフィスドラゴンをあたちのもとに連れてこい! 惑星を一周して戻ってくるんだ。頼むぞ!」
「は? 何言っているの? バカなの?」
「心配するな! 禁則地域の上空は通らないようにするし、ちゃんと念動力で受け止める」
「いや。そう言う問題じゃ、」
俺が言い切る前に、俺は竜王に口で掴まれて投げ飛ばされた。
「ひいゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
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