この小説は絶対に読まないでください 〜パワーワード〜

大和田大和

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第四巻完 エピローグ

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「ぇ? ぁ、ぅん。頑張る(消え入りそうな小声)」
ちょっと自信がなくなってきた。

「人間を投げ飛ばして、惑星を一周させるような化け物だぞ!」
「しかもそれを正確に受け止めるような化け物だぞ!」
と、アリシア。なんでこいつら俺を不安がらせるんだ?

「しかも一千年傷一つつけられたことないんだぞ!」
「しかもしかも不老不死なんだぞ!」

「ねえ。なんでそう言うこというの? だんだん不安になってきたんだけど」
「不死身で不老不死。無敵で最強。念動力。重力操作。変身能力。パワー。スピード。
どれを取っても右に出るものなどいないな!」
「そうよそうよ! とりわけやばかったのはあのブレス攻撃ね! 
惑星の形が少し変形していたわよ。
それに宇宙に向けて撃ったからよかったものの、あんなのこの星に向けて撃ったら星がなくなるわ!」

「ねえ。お前ら俺を不安がらせて楽しいか?」
俺をシカトして、
「ああ、あれはやばかったな。“ブレス攻撃の溜め”だけで周囲の生態系がぶっ壊れされていたぞ!」
なんでこいつらこんなに楽しそうに喋るんだ? なんか腹たつ。
「それにそれに、空間がねじ切れて、過去と現在が入り乱れていたわよね! 
ケンはあの竜王に勝つのね! 頑張ってね! 応援しているわ!」

「うるせーよ! なんか嫌味に聞こえるんだけど!」
竜王は最強だ。間違いなく全生物の中で最も強い。
あれと戦うなんてぞっとする。
だけど少しだけワクワクしている自分もいる(本当に少しだけ)。
「俺もあれくらい強くなりたいな」

気づいたら、俺は、少年漫画の元気な主人公みたいなことを言っていた。テンプレの台詞をまるぱくりしたみたいだ。
「世界最強の竜王に? 無理でしょ」

「やってみないとわからないだろ!」
胸の中には希望がいっぱいだった。
はちきれそうな勇気がパンパンに詰まっている。

俺は空に向かって手を伸ばす。
「いつか絶対に追い抜いてやるっ!」
竜王は、世界で一番最強で、無敵で、不老不死で、究極で、至高で、唯一無二だ。

俺の憧れで、強さの象徴。

そして、たった今からは、俺の目標だ。


エピローグ  黒い光

[ケンたちが竜の世界を去ってから二時間後]












「そんな。竜王様が一撃で殺されるなんて」、「信じられない」、「竜王様お一人で他の全ての竜よりも戦闘力が高いのに」。「そんな! 嘘だと言ってくれ!」

竜たちは、変わり果てた竜王の姿を見て動揺を隠しきれない。

竜王は首だけ残して、体の全ての部位が消し飛ばされた。

もう細胞の核小体一つすらこの世に残っていない。

首だけになった竜王は、もう助からない。
竜王に勝ったのは、黒フードを被った人物だった。

彼は、首だけになった竜王を見て、
「千年負け知らずらしいが、伝説も追いついてみれば案外大したことはないな」
首だけになった竜王が、最後の力を振り絞って、
「お前その力は、ブラックワードによるものだな。
闇の力なんざに手を出しおって、後悔することになるぞ」

黒フードの人物は少し笑いながら、
「まだ生きていたのか? ならとどめを刺してやろう。俺は不死身を殺す」
『パワーワードを感知。ダーク・クーザの能力が上昇します』
黒フードは右手の手のひらを竜王の首にかざす。

そして、念動力で空中へ浮かび上がらせる。
竜王の首は、空高くまで浮き上がる。

まるで公開処刑のようだ。
「死ぬがいい。今からは……俺が竜王だ」
ダーク・クーザは開いた右手を勢いよく閉じた。

「逃げろ、ケン」
それが竜王の最後の台詞だった。
竜王の首は、爆発音とともに、木っ端微塵に吹き飛ばされた。

ベチャベチャ。バシャッ。
脳漿が地面に溢れ、粉々になった頭蓋骨がパラパラと地面を叩く。
どす黒い血が床を染める。
脳みそが辺りに肉のぬかるみを作る。

パラパラ。グチャッ。ドロッ。
鉄と油の匂いが充満する。
ぐちゃぐちゃに損壊された頭部は、もう原型をとどめていない。
竜王の目玉が床にぶつかって潰れた。
中からはどろりとした白い液体が溢れる。

ビチャビチャ。バシャリ。
吐き気を催すような最悪な絵は、この世の終わりの始まりを如実に表していた。

黒フードは、残された竜たちの方を向いて、フードを外す。

中からは、ウェーブのかかった白髪の青年が出てきた。

「我ら“どす黒い光”の前にひれふせ。そうするのなら……我らが導いてやろう」

そしてクーザは不気味にも、両手を合わせ、祈りのポーズをとる。

すると彼の髪は頭のてっぺんから次第に黒く染まっていった。
「漆黒の暗闇が、明るい未来を照らしますように」

それを見て、
「新たなる竜王様」、「新たな竜王様だ」、「竜王様」、「ああ竜王様」、「竜王様」
竜たちは次々と新たな竜王にこうべを垂れる。

この世界は力が全て。強いものこそが正義なのだ。

そして、ハイデルキアと同盟を結んだ竜の世界は、わずか一人の人間に敗れ、闇に落ちた。

第四巻完 第五巻へ続く。
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