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最終決戦オクトパス
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俺たちはココを呼び出して、
「「「退院おめでとーーーー!」」」
「退院? 退院したのは数週間前だけど……?」
「いいんだよ。細かいことは!」
「バタバタしていて何もあげていなかったからね!」
「うおおおい。おいおいおい」
ゴリアテはまだ泣いている。泣き方がおっさんくさい。
ココは俺たちからプレゼントボックスを受け取り、開けた。
「うわあ! 綺麗! これ僕にくれるの?」
俺たちがあげたのはイヤリング。ココはそれを右耳につけた。
「すっごく似合っていましゅよ! 赤い瞳に合わせた赤いイヤリングでしゅ!」
「とっても可愛いわ!」
「ココ! それはお前のアイデンティティー。強さの象徴だ! いついかな――」
「うっわー! すっごい可愛いでしゅね! いいでしゅ。いいでしゅよ!」
いいところだったのにゴリラが邪魔をする。ってか声でけーよこいつ。
「ねえ。ちょっと聞けよ。そのイヤリングは、ココがココであるためのものなんだ! だから――」
「うわっほい! とってもおしゃれじゃない! 私もイヤリングつけようかしら?」
アリシアがうるさい。
「なあ。聞けって。そのイヤリングはな――」
「ゴリちゃん! アリちゃん! どうもありがとう! 僕、一生大切にするよ! 何がっても絶対にずっとこのイヤリングだけは手放さない!」
俺の話は誰も聞いていなかった。っていうか俺もお金出してんだけど、なんで俺だけスルー?
そして、ココはさらに頑張った。途中、バカにされることも、意地悪なことを言われることも何度もあった。それでも自分は自分だと自覚した。来る日も来る日もがんばった。
「花よ! 食い尽くせ!」
だけど、努力の成果は出なかった。
そして、そのままオクトパスとの決戦の日はきた。
「オクトパスの居場所が判明した。ココの修行は終わっていないが、今日でケリをつけよう! これ以上犠牲者は出せない」
「頑張りまちょう!」
「今日この日をもって、この国から差別主義者は消える」
「うん!」
「そして、この国を変えるのは俺じゃない。ココだ」
「わかっている。僕がやらないといけないんだ! みんなは僕の指示に従って! 僕が勝つところをしっかりと見ていてほしい!」
その瞬間、俺の頭の中に予知が見えた。
[予知]
戦場に一人の人間が立っている。それはまるで砂漠に咲くバラのよう。まっさらな紙の上に落ちるインクの一雫。顔はよく見えないが、確かに誰かの後ろ姿が見える。
黒光する爆煙が空を焼いている。焼けた土の匂いが鼻を刺す。焦げた空気はまるで蜜のようにねばついている。
荒れた大地が、その者の力を荒々しく削り行く。
俺にはわかる、それは強くなったココだ。ぼんやりした映像からははっきりとした何かは見えない。だけど確信している、ココは誰よりも強くなった。
頭の中に描かれたココは、ピンチになった俺のことを助けてくれる。
これがいつを表しているのかわからない。だけど未来のどこかでこのシーンは起こり得る。
そして、脳内から予知の映像は次第に消えていく。徐々に落ちていくモニターの画面のように色あせ……消えた。
俺たちは、歩幅を合わせることなく歩いていく。戦いの前の静けさが、やけにうるさく耳に残る。
一定のリズムで地面を叩く足音は、心臓の音と互い違いに音を作る。交互に体に響く音は、俺の体を休ませない。緊張の渦の中に飲み込み……閉じ込める。
暗い部屋の中に閉じ込められているみたいだ。真っ暗で何もない部屋は、静寂で俺を押しつぶす。冷たい沈黙の中で、心臓の音だけが羽を伸ばす。
手足の梢までもが沈黙で濡れている。
コンコン――
コンコン――
誰かが俺をノックする。
「大丈夫?」
「え? ああ」
俺に声をかけたのは、ココだった。
「すごく思い詰めたような表情をしてたけど」
「いや、大丈夫だ」
「あまり無理しないでね。僕を……頼って」
ココはしっかりと強い表情を見せた。それを見て、俺は頼もしくなった。
「ああ。さっきココが俺を助けてくれる予知が見えたんだ。きっとあの予知は現実になる! 俺が負けそうになったときはココが俺のことを助けてくれ!」
「うん! 約束だよね!」
そして、俺たちはオクトパスのねぐらにたどり着いた。ねぐらは山の奥にある滝壺の中だった。頭上から降り注ぐ水の流星群が、水溜りに大瀑布を作り出す。渦潮がいくつも水の中でトグロを巻いている。水しぶきが無色透明な絵具で空に色を付け加える。
そこにオクトパスはいた。
「「「退院おめでとーーーー!」」」
「退院? 退院したのは数週間前だけど……?」
「いいんだよ。細かいことは!」
「バタバタしていて何もあげていなかったからね!」
「うおおおい。おいおいおい」
ゴリアテはまだ泣いている。泣き方がおっさんくさい。
ココは俺たちからプレゼントボックスを受け取り、開けた。
「うわあ! 綺麗! これ僕にくれるの?」
俺たちがあげたのはイヤリング。ココはそれを右耳につけた。
「すっごく似合っていましゅよ! 赤い瞳に合わせた赤いイヤリングでしゅ!」
「とっても可愛いわ!」
「ココ! それはお前のアイデンティティー。強さの象徴だ! いついかな――」
「うっわー! すっごい可愛いでしゅね! いいでしゅ。いいでしゅよ!」
いいところだったのにゴリラが邪魔をする。ってか声でけーよこいつ。
「ねえ。ちょっと聞けよ。そのイヤリングは、ココがココであるためのものなんだ! だから――」
「うわっほい! とってもおしゃれじゃない! 私もイヤリングつけようかしら?」
アリシアがうるさい。
「なあ。聞けって。そのイヤリングはな――」
「ゴリちゃん! アリちゃん! どうもありがとう! 僕、一生大切にするよ! 何がっても絶対にずっとこのイヤリングだけは手放さない!」
俺の話は誰も聞いていなかった。っていうか俺もお金出してんだけど、なんで俺だけスルー?
そして、ココはさらに頑張った。途中、バカにされることも、意地悪なことを言われることも何度もあった。それでも自分は自分だと自覚した。来る日も来る日もがんばった。
「花よ! 食い尽くせ!」
だけど、努力の成果は出なかった。
そして、そのままオクトパスとの決戦の日はきた。
「オクトパスの居場所が判明した。ココの修行は終わっていないが、今日でケリをつけよう! これ以上犠牲者は出せない」
「頑張りまちょう!」
「今日この日をもって、この国から差別主義者は消える」
「うん!」
「そして、この国を変えるのは俺じゃない。ココだ」
「わかっている。僕がやらないといけないんだ! みんなは僕の指示に従って! 僕が勝つところをしっかりと見ていてほしい!」
その瞬間、俺の頭の中に予知が見えた。
[予知]
戦場に一人の人間が立っている。それはまるで砂漠に咲くバラのよう。まっさらな紙の上に落ちるインクの一雫。顔はよく見えないが、確かに誰かの後ろ姿が見える。
黒光する爆煙が空を焼いている。焼けた土の匂いが鼻を刺す。焦げた空気はまるで蜜のようにねばついている。
荒れた大地が、その者の力を荒々しく削り行く。
俺にはわかる、それは強くなったココだ。ぼんやりした映像からははっきりとした何かは見えない。だけど確信している、ココは誰よりも強くなった。
頭の中に描かれたココは、ピンチになった俺のことを助けてくれる。
これがいつを表しているのかわからない。だけど未来のどこかでこのシーンは起こり得る。
そして、脳内から予知の映像は次第に消えていく。徐々に落ちていくモニターの画面のように色あせ……消えた。
俺たちは、歩幅を合わせることなく歩いていく。戦いの前の静けさが、やけにうるさく耳に残る。
一定のリズムで地面を叩く足音は、心臓の音と互い違いに音を作る。交互に体に響く音は、俺の体を休ませない。緊張の渦の中に飲み込み……閉じ込める。
暗い部屋の中に閉じ込められているみたいだ。真っ暗で何もない部屋は、静寂で俺を押しつぶす。冷たい沈黙の中で、心臓の音だけが羽を伸ばす。
手足の梢までもが沈黙で濡れている。
コンコン――
コンコン――
誰かが俺をノックする。
「大丈夫?」
「え? ああ」
俺に声をかけたのは、ココだった。
「すごく思い詰めたような表情をしてたけど」
「いや、大丈夫だ」
「あまり無理しないでね。僕を……頼って」
ココはしっかりと強い表情を見せた。それを見て、俺は頼もしくなった。
「ああ。さっきココが俺を助けてくれる予知が見えたんだ。きっとあの予知は現実になる! 俺が負けそうになったときはココが俺のことを助けてくれ!」
「うん! 約束だよね!」
そして、俺たちはオクトパスのねぐらにたどり着いた。ねぐらは山の奥にある滝壺の中だった。頭上から降り注ぐ水の流星群が、水溜りに大瀑布を作り出す。渦潮がいくつも水の中でトグロを巻いている。水しぶきが無色透明な絵具で空に色を付け加える。
そこにオクトパスはいた。
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