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一応戦闘
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「いやもう少しゆっくりさせてもらうとするよ」
「いや、冗談ではなく。本当に帰ってもらいたいです」
顔がマジだ……やばいかも。
「遠慮するなよ」
「お願いします。マジで帰って」
「そういうなって」
「いい加減にしろよ! あなたたちいつまでゴロゴロしているんですか? え? なろう系の小説の主人公の方はこんなことしません。ちゃんと魔王と闘います」
ついに王様はガチギレした。本当に切れている。今にも憤死しそうなほど怒り狂っている。
「まあまあ……」
「なろう系小説をバカにしているのですか? っていうかこの部屋で何か死んでいますか? 死臭がプンプンします」
「それは俺の口の匂いだ」
「それにあなた何日間風呂に入っていないのですか? 全身から排泄物のような匂いがします」
「一週間くらいだけど?」
「“一週間くらいだけど?”じゃないでしょう。なろう系の主人公は風呂に入ります。もう十分楽しんだでしょう? えっ? 女を侍らせ、従者をパシって、食って、飲んで、騒いで、死んだように眠り続ける。もういい加減自分の国に帰ってください。っていうか早く帰れ! 馬鹿者!」
雰囲気がガラリと変わる。もう以前までの従順な王様の面影すらない。顔面に“怒り”を貼り付けて、怒号をレーザーのように飛ばす。
「あの……すいません」
「謝っても遅いですよ。ほら! 準備をして、とっとと出ていってください! そして、金輪際この国の国境を跨がないでください。あなたのような人にいられるとこの国の将来が、なろう系小説の未来が、危ぶまれます」
「おっしゃる通りです」
俺は正座して、説教を受ける。
「だいたいあなた、一体何を考えているんですか? なろう系の世界に来れば、仕事も勉強も何もないとでも? そんな甘い世界などありません。いい加減にしてください!」
「はい。ごめんなさい」
うう……だんだん自分のバカさ加減に気づいた。帰ったら真面目に働こう。
「私も長年この国で王を務めていましたが、あなたのような腐った勇者は初めてです。あなたは、喋るうんこです。即刻この国から出て行ってください。“今すぐ”!」
「わかりました。長い間お世話になりました」
[一週間後]
「あっはっはっは! ケンさん、まじで面白いですな! このままずっとこの国でゴロゴロしていていいですぞ! というより、王自らお願いします。この国にずっといてください! 頼みます!」
「はっはっは。じゃあ。お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「あはー。王様、すっかりケンのこと気に入ったわね」
「最初はいがみ合っていたが、ここに友情が芽生えるなんてな。うんうん! いいことだ」
と、アル。膝の上ではもょもとが寝ている。
「わしは、アル殿とアリシア殿のことも親友じゃと思っていますぞ!」
「よせやい」
と、アル。
「照れるべ」
と、アリシア。
楽しそうに、談笑する俺たちに――
「あのー。王様? 何やっているんですか?」
と、水をさすもえ。
「あなたねー。この国の王様であることにもっと自覚を持ってください! あなたケンたちを『いい加減に追い出してやる、いや殺してやる! わしに任しとけ!』って言ってましたよね? ミイラ取りがミイラになっているじゃないですか?」
「ごめんなさい」
王様がめっちゃ年下の女の子に怒られている。この王様頼りねー。っていうか、俺のこと殺そうとしていたの?
「あなた執筆の方も全然やっていないじゃないですか? これじゃあなろうの国が消えてしまいますよ?」
「はい。おっしゃる通りです」
王様、情けねー。と、思いつつ、
「執筆? 執筆って何? それにこの国が消えちゃうって?」
と、もえに聞いてみた。
「王様はラノベ作家だからラノベを“なろう”に投稿し続けないといけないのよ。それがこの国のルールよ。っていうかお兄ちゃんは水を刺さないで! ばっかじゃない?」
もえは、再び哀れな王様の方を向いて、
「読者のことをいつまで待たせるおつもりですか? 投稿ペースが遅れると飽きられちゃいますよ? なろう系の小説なんて、激戦区ですからね! だいたい――」
『[一週間後]
「きゃっはははは。おっもしろーい! お兄ちゃん永遠にこの国にいてニートしていていいわよ!」
「おいおい! そんなにくっつくと他の妻たちが嫉妬しちゃうぞ! このー!」
俺はもえの額をコツンと叩いた。
「あいたっ! お兄ちゃんひっどーい! お兄ちゃんはもえだけのものなんだからねっ!」
「ははは。俺はみんなのものだよ」
「お兄ちゃん。だーいすきっ!」』
などという都合の良い展開になるはずもなく……
城下町まで案内されると――
「はい。じゃあ以上でケンのなろう滞在は終了です。お疲れ様でした。お帰りはあちらです」
営業スマイルが消えたもえは、まるで機械のようだった。淡々と蛋白に説明だけをする。
物言わぬ機会は、歯車の家。カタカタと音を立てて一定の動作のみを行う。
「はい。どうもありがとうございました。楽しか――」
「お帰りはあちらです」
「はい……」
荷物を持って、帰路に着く。その時だった――
「いや、冗談ではなく。本当に帰ってもらいたいです」
顔がマジだ……やばいかも。
「遠慮するなよ」
「お願いします。マジで帰って」
「そういうなって」
「いい加減にしろよ! あなたたちいつまでゴロゴロしているんですか? え? なろう系の小説の主人公の方はこんなことしません。ちゃんと魔王と闘います」
ついに王様はガチギレした。本当に切れている。今にも憤死しそうなほど怒り狂っている。
「まあまあ……」
「なろう系小説をバカにしているのですか? っていうかこの部屋で何か死んでいますか? 死臭がプンプンします」
「それは俺の口の匂いだ」
「それにあなた何日間風呂に入っていないのですか? 全身から排泄物のような匂いがします」
「一週間くらいだけど?」
「“一週間くらいだけど?”じゃないでしょう。なろう系の主人公は風呂に入ります。もう十分楽しんだでしょう? えっ? 女を侍らせ、従者をパシって、食って、飲んで、騒いで、死んだように眠り続ける。もういい加減自分の国に帰ってください。っていうか早く帰れ! 馬鹿者!」
雰囲気がガラリと変わる。もう以前までの従順な王様の面影すらない。顔面に“怒り”を貼り付けて、怒号をレーザーのように飛ばす。
「あの……すいません」
「謝っても遅いですよ。ほら! 準備をして、とっとと出ていってください! そして、金輪際この国の国境を跨がないでください。あなたのような人にいられるとこの国の将来が、なろう系小説の未来が、危ぶまれます」
「おっしゃる通りです」
俺は正座して、説教を受ける。
「だいたいあなた、一体何を考えているんですか? なろう系の世界に来れば、仕事も勉強も何もないとでも? そんな甘い世界などありません。いい加減にしてください!」
「はい。ごめんなさい」
うう……だんだん自分のバカさ加減に気づいた。帰ったら真面目に働こう。
「私も長年この国で王を務めていましたが、あなたのような腐った勇者は初めてです。あなたは、喋るうんこです。即刻この国から出て行ってください。“今すぐ”!」
「わかりました。長い間お世話になりました」
[一週間後]
「あっはっはっは! ケンさん、まじで面白いですな! このままずっとこの国でゴロゴロしていていいですぞ! というより、王自らお願いします。この国にずっといてください! 頼みます!」
「はっはっは。じゃあ。お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「あはー。王様、すっかりケンのこと気に入ったわね」
「最初はいがみ合っていたが、ここに友情が芽生えるなんてな。うんうん! いいことだ」
と、アル。膝の上ではもょもとが寝ている。
「わしは、アル殿とアリシア殿のことも親友じゃと思っていますぞ!」
「よせやい」
と、アル。
「照れるべ」
と、アリシア。
楽しそうに、談笑する俺たちに――
「あのー。王様? 何やっているんですか?」
と、水をさすもえ。
「あなたねー。この国の王様であることにもっと自覚を持ってください! あなたケンたちを『いい加減に追い出してやる、いや殺してやる! わしに任しとけ!』って言ってましたよね? ミイラ取りがミイラになっているじゃないですか?」
「ごめんなさい」
王様がめっちゃ年下の女の子に怒られている。この王様頼りねー。っていうか、俺のこと殺そうとしていたの?
「あなた執筆の方も全然やっていないじゃないですか? これじゃあなろうの国が消えてしまいますよ?」
「はい。おっしゃる通りです」
王様、情けねー。と、思いつつ、
「執筆? 執筆って何? それにこの国が消えちゃうって?」
と、もえに聞いてみた。
「王様はラノベ作家だからラノベを“なろう”に投稿し続けないといけないのよ。それがこの国のルールよ。っていうかお兄ちゃんは水を刺さないで! ばっかじゃない?」
もえは、再び哀れな王様の方を向いて、
「読者のことをいつまで待たせるおつもりですか? 投稿ペースが遅れると飽きられちゃいますよ? なろう系の小説なんて、激戦区ですからね! だいたい――」
『[一週間後]
「きゃっはははは。おっもしろーい! お兄ちゃん永遠にこの国にいてニートしていていいわよ!」
「おいおい! そんなにくっつくと他の妻たちが嫉妬しちゃうぞ! このー!」
俺はもえの額をコツンと叩いた。
「あいたっ! お兄ちゃんひっどーい! お兄ちゃんはもえだけのものなんだからねっ!」
「ははは。俺はみんなのものだよ」
「お兄ちゃん。だーいすきっ!」』
などという都合の良い展開になるはずもなく……
城下町まで案内されると――
「はい。じゃあ以上でケンのなろう滞在は終了です。お疲れ様でした。お帰りはあちらです」
営業スマイルが消えたもえは、まるで機械のようだった。淡々と蛋白に説明だけをする。
物言わぬ機会は、歯車の家。カタカタと音を立てて一定の動作のみを行う。
「はい。どうもありがとうございました。楽しか――」
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「はい……」
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