婚約者の浮気をゴシップ誌で知った私のその後

桃瀬さら

文字の大きさ
11 / 47

10 実は箱入り息子?

しおりを挟む
「街で調査するには地の利を知ってる者の助けが必要だ。魔力の流れを読む者は多いほうが調査が捗る。それに、僕は市街捜査が初めてな上、僕は外国に来るのも初めてだからな」


 初めて?聞き間違えじゃないわよね。
 市街捜査が初めてなのは分かる。若い頃から魔塔に所属し、高い地位にいた副所長は市街捜査をする機会がなかったのだろう。

 だけど、外国に来るのも初めてなの?
 瞬間移動を使える副所長が?瞬間移動が使えるなら何処へでも行き放題なのに……


「本当に外国に来るのは初めてなのですか?」

「そうだ」

「ゲートを使わずに瞬間移動の魔法を使える副所長が?」

「……あぁ」

「………」

 副所長の返答に言葉を失っていると、副所長は気まずそうに視線を逸らしスイーツを食べだした。

 長距離の移動は魔法使いが管理、維持しているゲートを使う事が一般的だが、例外として高位の魔法使いは瞬間移動を使う。

 副所長は数少ない例外の高位の魔法使いだ。 

 魔塔に籠りっぱなしで出掛ける姿を見るのはあまりなかったけど、外国に行った事がないのは意外だわ。

「副所長は実は…箱入り息子ですか?」


 魔力は貴族で受け継がれる事が多く、魔力量が多く、容姿端麗な事から貴族出身かと思っていたけど、私は副所長の事をあまり知らない事に気づく。

 実力主義の魔塔でわざわざ「貴族出身ですか?」なんて興味がないから聞く事がないし、「貴族です」と自己紹介する者もいない。


 副所長のエルバートという家門名を聞いた事はないけど、ラミア国の貴族に詳しくないから気にした事がなかったけど、知り合ってから2年と少し経つのに知らない事が多いわね。

「そんなんじゃない」

そう言って目を逸らす副所長の耳は赤く染まっていた。

 恥ずかしがっているらしい副所長は、ここに来るまでの間、熱心に馬車から外を見ていると思っていたけど、初めての海外を楽しんでいたらしい。


「意外ですね。外国に行った事がないのは何か理由があるんですか?」

「僕にも色々と事情があるんだ」 

 理由を聞くとさっきまでの恥ずかしがっていた姿が嘘の様に、濁された返答と冷たい表情で逸らされた視線に、私は副所長との壁を感じる。

 魔塔の同僚と話す事がない副所長が、私と外国のカフェで食事をしている事に気が緩んでしまったのかもしれない。

 あまり自分の事を話したがらない副所長に個人的な事を聞いてしまうなんて……


 話し声が聞こえる店内で、私と副所長の席は沈黙が続いた。

 私はこの空気を打破するために口を開く。


「そうだわ!外国が始めての副所長の為に、私が案内をして差し上げます」

 そう言ってフフッと笑うと、副所長は不思議そうに見てくる。

「シャーロットが?」

「はい、私が。確かに、本にはシェルロン国の有名な場所が載っています。でも、何処にでも現地の人しか知らない、"穴場"というのがあるんですよ」

 そう言って胸を張ると、副所長は小さく笑みをこぼす。
 

「それは楽しみだな」


 そう言って笑う副所長の笑顔を見て、私はホッと息を吐いて「楽しみにしていてくださいね」と笑った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

あなた方の愛が「真実の愛」だと、証明してください

こじまき
恋愛
【全3話】公爵令嬢ツェツィーリアは、婚約者である公爵令息レオポルドから「真実の愛を見つけたから婚約破棄してほしい」と言われてしまう。「そう言われては、私は身を引くしかありませんわね。ただし最低限の礼儀として、あなた方の愛が本当に真実の愛だと証明していただけますか?」

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

王族の言葉は鉛より重い

Vitch
恋愛
 フォークライン公爵の娘であるミルシェ。  彼女は間違い無く公爵の血を引く娘だった。  あの日までは……。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...