婚約者と義妹の浮気現場を見ても傷つかない私はおかしいのでしょうか?

桃瀬さら

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3.婚約破棄しましょう

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「いつからも何も……、俺がアンナとそんな関係になるはずがないだろう?」

 アレックスはわずかに震える声で言った。
 手を強く握っているのか、手は赤く充血していてこちらにも緊張感が伝わってくる。

 この後に及んで認めないなんて。
 アレックスは誤魔化せる何かがあるのかしら?

「私だけではなくルーカスも見ていたのに、それでも違うと言うの?アレックスは自分の発言に責任を持てる?」

 頬に手を添え息を吐く。

 私の言葉にアレックスはビクッと身体を震わせた。私を震えた目で見ると、何も言わずに顔を伏せて前髪で表情が読み取れなくなった。

 アレックスは何を考えているのだろう?
 言い訳を考えている?プライドの高いアレックスのことだ直ぐには認めないと思うけれど、私はアレックスを逃がすつもりわない。

 しばらく沈黙が続く中、アンナは不安そうな目でアレックスを見つめている。

 沈黙の末、口を開いたのはアレックスだった。
 
「……すまない。今回は魔が差しただけなんだ。だから、許してくれ……」

 あっさりと認めたアレックスの言葉と、許しを乞う言葉に驚いてしまう。

 婚約者の義妹と浮気をしておいて、許して欲しいなんて……。アレックスはどれほど私を馬鹿にしたら気が済むの?
 
?これは何回目なのかしら?パン屋のエリー、ダニエル男爵夫人、数えればキリがないけれど、最近だと留学生のデボワさんにも手を出していたでしょう?」
「どうしてそれを……」

 指折り数える私の言葉にアレックスは青褪めた顔をした。
 
 呆れた……。知られていないと思っているなんて。

 学園内でアレックスの浮気性は有名な話だ。
 だから、学園内の女生徒には相手にされていないけれど、外から来た留学生はアレックスの浮気性を知らなかったのか、アレックス毒牙にかかってしまったらしい。

 デボワさんには申し訳ないけれど、学園で浮気性で有名なアレックスと仲良くしていたと知られたら、男女共に白い目で見られることになる。

 浮気されたのは私なのに、どうして私が申し訳なく思わなければいけないのか。

 アレックスの浮気性はもはや病気だ。
 手の施しようのない不治の病とでも言うところか。

「私が認識しているだけでも、これだけの浮気相手がいるのに、アレックスを許す理由が私にあるかしら?」

 元より許すつもりもないけれど……。
 
「っアンナだ!言い寄ってきたのはアンナなのだから、アンナに責任がある!!」
「なっ!!誘って来たのはアレックス様ではありませんか!」

 アレックスは今度はアンナに責任を押し付けるつもりらしい。
 そんなアンナは先程までの不安な顔でアレックスを見つめていた顔とは打って変わって、顔を歪ませて否定した。
 
「何だと!?どうして嘘を付くんだ!!」
「嘘なんか付いていないわ!」

 言い合う二人に私は頭を抱える。

 どうして私は二人の痴話喧嘩を見せられているの?
 私はどちらから誘ったなんてどうでもいいのに。

 ハァと溜息を吐くと。

「放っておいていいのか?」

 今まで黙って聞いていたルーカスが小声で話しかけてくる。

「そう…ね。同じ話の繰り返しに飽きて来たところだから、そろそろ終わらせないといけないわね」

 ハァと溜息を吐くと、ルーカスは心配そうな目で私を見ている。

「そんな目で見ないでよ。私はこの状況が楽しくて仕方ないのよ?」
「マチルダがそう言うなら……。でも、無理はしないでくれ」

 巻き込まれている身でありながら、私を心配してくれるルーカスににっこりと微笑む。

 ルーカスはお母様が亡くなった時、隠れて泣いていた私を見つけて私が泣き止むまで、何も言わずに側にいてくれた優しい人だ。

 お父様が再婚すると知った時も、私を支えてくれた大切な幼馴染。
 
 ルーカスには私の弱いところも見せられる。
 だけど……、ルーカスに言った言葉はただの虚勢ではない。

 婚約破棄が目前に迫った出来事に、私は胸の高鳴りすら感じているのだから――。

 未だに言い合ってるアレックスとアンナを見て、私は手を叩く。

 乾いた音が庭園に響き渡って、二人は驚いた顔で私を見た。

「二人の言い分は分かったわ」
「悪いのはアンナだ!」「お義姉様!信じてください!」

 詰め寄ってくる二人を手で制して。

「分かったわ。言いたいことがあるなら後で聞くから、まずは私の話しを聞いてちょうだい」

 私の言葉に二人は静かになる。

 黙った二人を満足気に見て微笑むと、私は口を開く。
 
「アレックス。あなたの浮気性にはほとほと愛想がついたわ。……私達、婚約破棄しましょう」
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