銃声

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命令

1. 油断

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「俺の相棒に手を出すなんていい度胸してるじゃねぇか…」
「理人さん……っ」
「覚悟は出来てるんだろうなぁ!?」
理人は銃を向けて近づいた。
「ちっ…」
我慢していた涙は流れ続ける。歩の顔はボロボロだ。
(助けてくれないと思ってた…。ここで遊ばれて死ぬんだって…。理人さん……)
「歩!無事か!?」
「……はいっ…」
銃相手では敵わないと思ったのだろう。三人の男たちは小刀を地面に落として、両手を上に挙げていた。
「そのまま動くなよ。」
そう言い、理人は歩の縄を解いた。
「大丈夫か?怪我は…してるか…」
「二回くらいしか叩かれてませんよ。」
「……」
ヘラッと笑う歩を強く抱きしめた。
「りっりひとさん!?」
「ごめんな…。もっと…もっと……早ければこんなことには……」
歩は理人の背中に手を回した。
「助けてくれてありがとうございます。嬉しかったです」
泣きながら笑う歩を可愛いと理人は思った。


その時、
《ガン!》と、鈍い音が轟いた。
「!?!?理人さん!!」
後ろから固いもので軽く殴られた。理人の頭からは血が流れている。
「どうしてこんなこと!」
「今回は見逃してやるよ。」
「見逃す…?」
「俺たちは下っ端。殺していいって命令が上から出るまで、まだまだ時間がかかるからな。」
「上?どういうことですか…?」
理人は意識が朦朧として、歩に体重を預けた。そして震える声で、
「そうか…。お前らは…」

「《民警殺し》」

「っ!?この人たちが!?」
「まあ、今回のところは殺さずに済ませてやるよ。上の者はもっと容赦しないぞ。俺らよりも格段に強い。」
「外から、民警の車のサイレンが聞こえてきてるしな。そろっと逃げるとするか。今度、会う時が楽しみだ。」
そう言って三人は姿を消した。

「…ごめん……油断……してた…」
「話さなくていいです…。少し、安静にしてましょう。ここに駆けつけに来てくれてるのか、サイレンの音が聞こえますし、すぐに民警が来てくれます……」
「うん…。」
理人は目を軽く瞑っていた。
「歩が無事でよかった…。」
「私よりも理人さんの方が…」
止まったはずの涙がまたボロボロと落ちてきた。
「さっきはごめんな…。八つ当たりしたんだ…。本当はお前のこと認めてるよ…。銃が凄いこともわかってる…」
「はい…」
「ごめん…少し抱きつかせて…。」
「体重、あずけたいんですね。いいですよ…。重くないですから。」
「ありがとう…」

そして一分もしない内に、民警が来た。理人は救急車で病院へ運ばれて、念のため三日間、入院することとなった。
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