銃声

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命令

2. 病室

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病室のカーテンが風になびいている。横になっていた理人は上半身を起き上がらせた。
「いったぁ……」
頭を包帯でぐるぐる巻きにされている。この傷を負ってから二時間という時間が過ぎただろうか。三針縫い、ホッチキスで傷口を塞いだ。絶対安静と言われた理人は、医者に言われたことを素直に聞き入れることにして、もう一度、ゆっくりと身体を横にさせた。
《ガラガラ…》
ドアの開く音がして、ゆっくりとその方向を見ると、歩が入ってきていた。
「なに?泣いてんの?」
「りひっとさん…っ……三針も縫ったって……っく……うぅ…」
「バカ。泣くなって。」
「だって……うぅ……」
「お前だって顔の腫れはどうなんだよ?しっかり冷やしたか?」
「……っ…はい…。」
「顔、見せろ」
目に涙を浮かべながら理人の方を歩は向いた。
「うん。腫れ、ひいたみたいだな。」
軽く微笑む理人の顔を見たら、また一気に涙が溢れてきた。
「っ!おぉい。泣くなよ?」
「私のせいです…。私のせいで理人さんがぁ……っ」
「俺が歩に夢中だったのが悪いんだよ。周りが見えてなかった。拘束をさきに済ませとくべきだったんだ…。歩が無事だったことが嬉しくて…。この怪我は俺のせいだ。歩のせいじゃないよ。」
声を殺して泣く歩を優しい瞳で見ていた。
「それに普通の人間相手だと勝手に思い込んでた。ここら辺では民警殺しの事件が多発しているのにも関わらず、その可能性に全く気づかなかった。それに簡単に人を殺せるような人間ではないと思ってたんだ。」
「……」
「民警殺しなら、人殺しも躊躇わずにするかもな」
苦笑いしている理人を歩は見ていた。
「理人さんが人に銃を向けられないって聞きました…。」
「前にもそんなこと聞いたって言ってたな…。」
「はい…。理人さんが体術が得意なことは百も承知です…。助けに来てくれたことはとても嬉しかったですし、ホッとしました。でも私は銃の使い手。銃であなたを援護しなければいけないのに足かせとなってしまった…。」
「…」
「いくら体術が得意とは言え、不利だったかもしれません…。民警殺しは今もなお、たくさんの民警を殺している。今日は少し手加減してくれただけだと私は思います…。」
理人は暗くなった外を眺めていた。
「私のせいで、民警殺しに理人さんが殺されそうになった…。見逃してくれたとはいえ、私はあなたの足かせです…。理人さんがソロで活動したいっていう気持ちもわかります…。」
「…」
「私っ…私はっ!……理人さんに認められたかった……。なのに今日、こんなことが起きてしまった……。私はあなたの足手まといになりました…。」
「そうかもしれないな。」
「!?……はい…。そうです…。だから、ペアを組むのが嫌なら…解消してくだ…」
「それよりもお礼が聞きたかったんだけど?」
歩が最後まで言い切る前に、理人は言葉を発した。
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