ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々

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 俺たちは毎月のように手紙を送り合い、長期休みに入れば互いの母親に連れて行ってもらってどちらかの家で会った。俺の想いは途切れることなく、樹も約束通りに俺との関係をずっと大事にしてくれて、俺たちはこの宝物のような絆を大切に育み続けた。

 久しぶりに会うたびにどんどん大人っぽくカッコよくなっていく樹に、俺はいつもどぎまぎしていた。でもこんな想いを知られるわけにはいかない。どんなに大切にしてくれていても、樹にとっては俺はただの男友達の一人なんだ。俺はできる限りポーカーフェイスを貫いた。

 中1の時、樹がうちに泊まりに来たことがあった。
 樹と一晩中一緒にいられるなんて。嬉しくて嬉しくて、バス停で樹を待っている間、俺はずっと胸がいっぱいだった。
 久しぶりに会った樹はまた少し大人っぽくなっていて、やっぱりカッコよかった。部屋で二人きりでたくさん話して、母と三人で一緒に夕食を食べて。その後、一緒にお風呂に入った。樹と一緒にお風呂なんて…。本当はものすごくドキドキして心臓が破れそうだったけどそんな様子を見せるわけにはいかないから、俺はバスタブの中でボーッとしている樹に向かって動揺を悟られないように必死で喋り続けた。体を洗いながら、文化祭のどうでもいいような内容をずっと話していた。そうして気をそらさないと、樹の裸にどうしようもなくドキドキしてしまうからだ。ほどよく日焼けした樹の体はたくましくてカッコよくて…。ジロジロ見ちゃダメだと思うのにどうしても目がいってしまう。普段からスポーツで鍛えている樹の体は俺のそれとは全然違った。触ってみたいな、なんて思ってしまって、慌ててその思いを打ち消した。後ろめたさがあるからこそなおさら、全然動揺してないよ、少しも意識してないよ、とアピールしたくて、わざと一緒にバスタブの中に入ってみた。でも、これは失敗だった。
 樹と並んでお湯の中に座ると、当たり前だけど狭くて裸の肩と肩が触れ合ってしまう。お湯の中でぬるりと二人の肌が触れた瞬間、俺はなんだか変な感覚が湧き上がってきた。それは初めて感じる得体の知れないもので、体の奥底からずん、と鈍く這い上がってくる妖しい熱のような感じだった。心臓が大きく音を立てる。

(……え?何、これ……)

 妙な感覚を覚えたことに何故だかますます後ろめたさを感じた俺は、ごまかすために慌てて樹にお湯をかけた。何も気付いていない樹はふざけて俺にお湯をかけ返してくる。少しの間そうしてやりあったけど、樹が

「やめろアホ。…もうのぼせそうだわ。先に上がるぞー」

と言ってさっさとお風呂からあがってしまった。

「ふふ。うん」

 俺は平常心を装ってさり気なく返事をしたけど、樹がいなくなった後、一人になったバスタブの中で口元を抑えて呼吸を整えなくてはいけなかった。
 心臓の音が大きく鳴り続けている。…何だったんだろう、さっきのあの感じ…。

 本当は一晩中でも樹と話していたかったのに、体力のない俺はわりと早くに眠ってしまった。せっかく二人きりでこんなに長く一緒にいられたというのにもったいなくて、朝起きてから後悔した。
 でも、一緒に修学旅行に行きたかったな、とつい寂しい思いを吐露すると、高校ではきっと一緒に行けると元気づけてくれたから、それだけですごく心が満たされて安心した。よかった。樹はまだ俺と一緒の高校に通いたいって思ってくれてるんだ。俺はすごく嬉しかった。
 ただ……。
 樹はあまり勉強得意じゃないし、好きでもない。…ちゃんと受験勉強とか、してくれるのかな。それが少し不安ではあった。
 それから街に出て二人で夕方まで一緒に過ごし、それぞれが別々のバスに乗って帰った。
 
 バスの中で、俺は寂しくて少し泣いた。

 
 中2になってから高校入試に備えるために塾に通うことになり、それにともなってついにスマホも持たせてもらえることになった。主に両親との送迎などの連絡のためだったけど、俺はもちろん真っ先に、聞いていた樹のスマホに電話をかけた。樹はすごく喜んでくれていた。これでどうしても話したい時にはすぐに連絡を取ることができる。両親がスマホを許可してくれたのはそんな目的のためではなかったのだけど、俺は浮き足立った気持ちを抑えることはできなかった。

 俺が通い始めた塾は樹とも何度か出かけた繁華街の近くにあり、バスで行くことが多かった。帰りが遅くなる時には両親に連絡して迎えに来てもらったり、学校から直接行く日などは送ってもらったり。その時々で臨機応変にってかんじだった。
 大手の塾で生徒も教師も人数が多く、近隣のいろんな中学校の生徒が集まってきているところだった。何人かと仲良くなって講義の合間の休憩時間に少し話したりするようになり、その中に樹と同じ中学校の子がいることが分かった。

「青木くんってT中学校なんだね。…じゃあ、立本樹って知ってる?」

 雑談の合間にその子が樹と同じ中学に通っていることを知った俺は少し興奮して尋ねた。その子はすぐに答える。

「あー、立本樹、知ってるよ。有名人だからね」
「そっ、そうなの?…やっぱりカッコいいから?」

 俺はドキッとして聞き返す。

「そうそう。めっちゃカッコいいし、運動神経抜群で足は速いしサッカー上手いし、いっつも女子が騒いでる。羨ましいわ~モテモテで。校内にファンクラブがあるらしいよ。すげーよな」
「へ、へぇ…」

 …やっぱり。そりゃそうだよね。樹は案の定学校内で目立っているようだった。誇らしいようなモヤモヤするような微妙な気持ちになっていると、その子が信じられない言葉を口にした。

「彼女いるヤツにあんなにキャーキャー騒いだってしかたないと思うんだけどなー。イケメンは得だよな」

 …………えっ。

 思わず自分の耳を疑った。……彼女?樹に?

「…い、……た、立本くんって、…彼女、いるの?」

 信じたくないのに、俺はわざわざ聞き返してしまった。

「うん、立本と同じクラスのめっちゃ可愛い女子だよ。その子も1年の頃からかなり目立っててさ。前から立本のことが好きだったらしいんだけど、1年の頃は3年に立本の前の彼女がいたから卒業するまで大人しくしてたらしい。すげーよな、もう世界が違うわー」
「……。…そっ、…そう、なんだ」

 ……本当に……?そうなの……?
 俺は彼の話を聞きながら、あまりのショックに指先がすうっと冷たくなっていった。



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