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俺がどんなに落ち込んでいても、日々は容赦なく巡る。なかなか眠れない夜を過ごし、朝になり、気持ちを紛らわせながら一日を過ごし、また夜になる。集中しなきゃと思うのに、授業にも身が入らない。可愛い女の子に自然にキスをしていた樹の姿が何度も何度も頭の中に浮かんでくる。思い出しては心が押し潰されるように苦しくなり、毎日辛くてたまらなかった。
一週間後の夜、あれ以来全然連絡がなかった樹から、ふいに電話がかかってきた。
「……っ、」
勉強していた俺は机の上に置いておいたスマホのコール音が突然鳴り出したことに驚き、肩がビクッと揺れた。
どうしよう。鳴り続けるスマホを見つめたまま、俺はしばらく逡巡する。声が聞きたい。話したい。でも何を言われるのかと思うとすごく怖いし、何より樹に嫌な態度をとってしまいそうな自分がいる。まだ失恋のショックは少しも癒えていない。逆恨みして、責めてなじってしまいそうだ。…樹に俺のそんな部分を見せたくない。そもそも嘘をつかれていたことがまだしこりとなって残っている。
……でも…………。
おそるおそるスマホを手に取り、どうすればいいか悩んでいると、ついに電話が切れてしまった。
「……。」
…無視してしまった…。ごめん、樹……。
かけ直す勇気も出ない。まだ明るく笑い話にしてあげられそうもない。
俺はスマホを置き、顔を覆って大きな溜息をついた。
……出てくれなかった。
俺は大きな溜息をつき、スマホを耳から離してがっくりと肩を落とした。
バス停でのキスを颯太に見られてから、もう一週間も経ってしまった。
できるだけ早く連絡を取って話した方がいいと分かっているのに、あの時の颯太の表情を思い出すと体が強張って電話をかける勇気が出なかった。どう思っただろう。呆然としたような顔をしていた。ものすごくショックを受けているように見えて、自分のついた嘘が颯太にとってとても大きな問題であることを察した。長年の付き合いなのに他人行儀に隠されていたことがショックだったのか。あの日のうちにすぐに電話して、そんなに大したことじゃない、これは些細なことなんだという風に話してしまおうかとも思った。
『もしもーし。お前今日見てただろー。なんでたまたまあそこにいんだよ。めっちゃ恥ずかしかったわ』
頭の中でこんな感じの会話を何度もシミュレーションしてみたが、……あの時の颯太の表情を思い出すと、それはかなり無理があるように感じた。下手をすればむしろ逆効果になりそうな気がして、電話することができなかった。
どうしよう。何て言おう。彼女いないなんて嘘ついてごめん、と素直に謝るべきか。だけどそれだと、蘭とのことをかなり真剣な仲だと勘違いされてしまいそうで……。いや、むしろこんなセックス目的の軽い気持ちで女と付き合ってるなんて知られる方がマズいんじゃ……。
だけど…。
自分でも自分の気持ちがよく分からない。ただ颯太に、「樹には好きな女がいるんだな」なんて思われたくなかった。どうしてなのか、…よく分からない。
何をどう話せばいいのか、いくら思い悩んでも答えが出ない。でも颯太からはあれっきり一切連絡が来なくなった。そのことが俺をたまらなく不安にさせていた。あんなシーンを見てしまって気まずいからだろうか。それとも単に忙しいのか。嘘をついていたことに怒っているのか。まさか…、…愛想を尽かされてしまったのか……。
不安な思いに耐えきれず、会話の方向も決めないままについに勇気を振り絞って電話をかけたのに、颯太は出なかった。
タイミングが悪かったのかもしれない。かすかな望みに賭けて、夜までスマホを見ながら祈るような気持ちで待ったが、やはり折り返しの電話がかかってくることはなかった。
「………………はぁ…」
どうしよう。どうしたらいいんだ。部屋でベッドに腰かけたまま、横になる気にもなれずに頭を抱えた。こんなことになってしまうなんて。今までケンカひとつしたこともないままここまで来た仲なのに、もしかしたら、このまま……、疎遠になってしまうんじゃないか。
そう思った途端、じっとしていられないほどに不安な気持ちが膨れ上がってきた。そんなの絶対に嫌だ。俺はこんなに颯太のことが大好きなのに。誰よりも特別な存在なのに。嫌われたくない。
今、颯太は何を考えているんだろう。俺のことどう思ってるんだろう。これ以上このままの状況が続くのは耐えられない。颯太の気持ちが知りたい。
焦燥感に駆られた俺は行動を起こすことにした。
一週間後の夜、あれ以来全然連絡がなかった樹から、ふいに電話がかかってきた。
「……っ、」
勉強していた俺は机の上に置いておいたスマホのコール音が突然鳴り出したことに驚き、肩がビクッと揺れた。
どうしよう。鳴り続けるスマホを見つめたまま、俺はしばらく逡巡する。声が聞きたい。話したい。でも何を言われるのかと思うとすごく怖いし、何より樹に嫌な態度をとってしまいそうな自分がいる。まだ失恋のショックは少しも癒えていない。逆恨みして、責めてなじってしまいそうだ。…樹に俺のそんな部分を見せたくない。そもそも嘘をつかれていたことがまだしこりとなって残っている。
……でも…………。
おそるおそるスマホを手に取り、どうすればいいか悩んでいると、ついに電話が切れてしまった。
「……。」
…無視してしまった…。ごめん、樹……。
かけ直す勇気も出ない。まだ明るく笑い話にしてあげられそうもない。
俺はスマホを置き、顔を覆って大きな溜息をついた。
……出てくれなかった。
俺は大きな溜息をつき、スマホを耳から離してがっくりと肩を落とした。
バス停でのキスを颯太に見られてから、もう一週間も経ってしまった。
できるだけ早く連絡を取って話した方がいいと分かっているのに、あの時の颯太の表情を思い出すと体が強張って電話をかける勇気が出なかった。どう思っただろう。呆然としたような顔をしていた。ものすごくショックを受けているように見えて、自分のついた嘘が颯太にとってとても大きな問題であることを察した。長年の付き合いなのに他人行儀に隠されていたことがショックだったのか。あの日のうちにすぐに電話して、そんなに大したことじゃない、これは些細なことなんだという風に話してしまおうかとも思った。
『もしもーし。お前今日見てただろー。なんでたまたまあそこにいんだよ。めっちゃ恥ずかしかったわ』
頭の中でこんな感じの会話を何度もシミュレーションしてみたが、……あの時の颯太の表情を思い出すと、それはかなり無理があるように感じた。下手をすればむしろ逆効果になりそうな気がして、電話することができなかった。
どうしよう。何て言おう。彼女いないなんて嘘ついてごめん、と素直に謝るべきか。だけどそれだと、蘭とのことをかなり真剣な仲だと勘違いされてしまいそうで……。いや、むしろこんなセックス目的の軽い気持ちで女と付き合ってるなんて知られる方がマズいんじゃ……。
だけど…。
自分でも自分の気持ちがよく分からない。ただ颯太に、「樹には好きな女がいるんだな」なんて思われたくなかった。どうしてなのか、…よく分からない。
何をどう話せばいいのか、いくら思い悩んでも答えが出ない。でも颯太からはあれっきり一切連絡が来なくなった。そのことが俺をたまらなく不安にさせていた。あんなシーンを見てしまって気まずいからだろうか。それとも単に忙しいのか。嘘をついていたことに怒っているのか。まさか…、…愛想を尽かされてしまったのか……。
不安な思いに耐えきれず、会話の方向も決めないままについに勇気を振り絞って電話をかけたのに、颯太は出なかった。
タイミングが悪かったのかもしれない。かすかな望みに賭けて、夜までスマホを見ながら祈るような気持ちで待ったが、やはり折り返しの電話がかかってくることはなかった。
「………………はぁ…」
どうしよう。どうしたらいいんだ。部屋でベッドに腰かけたまま、横になる気にもなれずに頭を抱えた。こんなことになってしまうなんて。今までケンカひとつしたこともないままここまで来た仲なのに、もしかしたら、このまま……、疎遠になってしまうんじゃないか。
そう思った途端、じっとしていられないほどに不安な気持ちが膨れ上がってきた。そんなの絶対に嫌だ。俺はこんなに颯太のことが大好きなのに。誰よりも特別な存在なのに。嫌われたくない。
今、颯太は何を考えているんだろう。俺のことどう思ってるんだろう。これ以上このままの状況が続くのは耐えられない。颯太の気持ちが知りたい。
焦燥感に駆られた俺は行動を起こすことにした。
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