ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々

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「……ぐっ……、……立本ぉ……、お前…、本当によくやったよ。俺はお前という生徒を絶対に忘れないぞ。……お前は、俺の誇りだ。後輩たちの希望の光だ……!…ふぐぅ……」
「せ、先生、……マジで感謝してます。ありがとうございました」

 卒業式の日。口の悪い担任は俺の肩を握ったまま片手で顔を押さえながら大粒の涙を零していた。

「じゃあな、お前らー。時々遊ぼうなー」
「い、樹……、まさかお前が本当にA高に行くなんてなぁ…」
「お前は俺の自慢のダチだぜ…」
「安心しろ。あとはもう落ちこぼれる一方だから。だはは」

 どうせこれからもちょくちょく集まるであろう友人たちとも簡単な別れを済ませ、俺は高校生活に思いを馳せ浮き足立ちながら帰宅した。いかん、スキップとかしてしまいそうだ。
 あぁ……、ついにもうすぐ高校生活が始まる……!また毎日毎日颯太の顔が見られるんだ……!しかも、しかも俺らはもう、り、両想い……。ここっ、恋人同士なんだ……!これは…、これはもう…、思っていた以上に楽しい生活になるのは間違いない…っ!
 頭の中で先に始まる高校生活。屋上で一緒に食べる弁当。『はい樹、あーん、して』
 サッカー部の練習をグラウンドの隅から応援してくれる颯太。『樹ー!カッコいい~っ!頑張れー!』
 人目を忍んで放課後の教室でするキス。『もう……っ、誰か来たらどうするの…バカ』

「…………ぐふ」

 ……いかん。一人でニヤけちまった。横を通り過ぎたOLっぽい人がビクッとして小走りに去って行った。

 ……はぁ。これで毎日颯太とエロいことができたらもう言うことないんだけどなぁ。…まぁでも仕方ねぇよな。そりゃ怖いよ。だって颯太は初めてなんだからさ…。俺も言うほど経験値高くねーし、そもそも男とそうなるのは初めてなんだ。し、しっかり勉強しておかねば……!そして、高校に入学したら俺がやるべきことはただ一つ……。バイトだ!!ホテル代を……ホテル代を稼がねば……!

 あぁ……、夢が広がるぅぅ……!マジで頑張ってよかったぁぁ~~!!

 俺はついにスキップしながらマンションに入っていった。



 春休み。そうは言っても生殺しの日々だ。

「……いつき、……ダメ、だってば……」
「シーッ…。……大丈夫だって。……そんなしょっちゅう見に来ねぇよ」

 せっかく会えても颯太はガードが固くてなかなか触らせてもくれない。おかんはリビングでワイドショー見てんのに、そんなちょこちょこ覗きに来るわけないじゃんか。少しはいちゃいちゃさせてほしい…。

「ほ、ほら…。こうやってテーブル引っ張り出して参考書まで広げてんだぜ?二人で勉強してるとしか思ってねーって…」
「……入学して樹の成績が暴落してるのを見たら気付くよ、おばさんも。春休みあれ一体何してたんだって」
「シーーッ!!……な、なぁ。……チューだけ……」
「…………もぉ……」

 渋る颯太の隣にいそいそと近づいて、静かに唇を重ねる。……あぁ、……ヤバ。気持ちいい…………。
 俺がさらに深いキスをしようとした時。

「はいっ、終わり」
「ちょ、えっ?」

 颯太は俺の胸をぐっと押してサッとあっけなく離れてしまう。

「そ、……そんなぁ……」
「そんなぁ、じゃないよ。おばさんに見られたらどうするの」

 ガ、ガードが固すぎる……。俺はガックリと肩を落として床に寝そべった。

「……そんなに露骨に落ち込まないでよ。しかたないでしょ。親の前で変なことできないよ」
「うぅ……っ。……颯太とヤりたいよぅ……」
「……少しは下心隠してくんない……?」

 颯太はやれやれと溜息をつきながら俺をほったらかして勉強を始めた。

「…なんでもう受験終わったのに勉強する気になるの?すげーなお前」
「いや、だってA高入ったらたぶん皆すごいよ。ボケッとしてたらすぐに置いて行かれちゃう…。樹こそそんなにエッチエッチってそればっかり考えないでちょっとは勉強してよ」
「や、俺はもういいんだ。どうせ入学式から置いて行かれるよ。俺にははっきりと分かる。気にすんな、俺のことは。お前の顔を毎日見るためだけに入学したんだからもう目的は達した。あとは毎日お前を眺めながら幸せに過ごすからよ」
「……バカ」

 口ではそう言いながらもちょっと嬉しそうで可愛い。
 その時、おかんがドアの向こうから声をかけてきた。

「樹ー、ちょっと母さん買い物行ってくるからー」

 ガバッ!!
 き、来たー!!

「お、おー。…どうぞごゆっくりー」
「…………。」

 よっしゃぁぁ!行け!おかん!できるだけ遠くまで!キラキラと目を輝かせる俺を颯太がジトッと見ている。

「そこのドラッグストア行くだけだから、すぐ帰ってくるからぁー」

 チッ!!

「……へーい……」
「…………。」

 すぐに玄関のドアが開いて、おかんが鍵をかける音が聞こえた。立ち去った気配を感じた瞬間、俺は颯太に飛びかかった。

「!!……ちょっと!!樹…」
「す、少しでいいから…颯太、お願い……!触らせてくれぇぇ」
「ケ、ケダモノか…………。……あっ、」

 颯太が若干引いてるけどそんなこともう構ってはいられない。だって二人きりになれるチャンスが少なすぎるんだ。こんな機会スルーできるはずがない。俺はそのまま颯太をラグの上に押し倒して性急に唇を重ねた。



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