短編詰め合わせ

ナギ

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幼馴染はひどいやつ

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いきぬき!



 そもそも私に婚約者がいないのは、幼馴染のせいなのだ。
 私の家柄はそこそこいい。釣り合う相手もたくさんいる。
 いるのに。
 いるのに!
「おい、ブス。お前、また断られたんだってな」
「ええ、貴方のおかげで」
「はっ! 俺は本当のことをいってやっただけだろ」
 ええ、そうですけど。
 そうですけどね、アイン。
 そろそろ私も婚期がやばいのよ。
「……アイン、私はもうそろそろお嫁に行かないとまずいの」
「へー、そうなんだ」
「でも、お話が来るたびにあなたが――言ってるのは本当のことだけど? それでも、誇張して言わないでほしいの」
 そもそも、それは小さなころの話で今は違うわ。今は違うのよ。
 素手で蛇掴んだり庭で転がりまわったり、してないから。
 ちょっと刺繍は苦手だけど、ちゃんとできるし。おとなしくふるまうこともできるのよ。
 馬で駆けるのは好きだけど。
「私が婚期を逃すと、あとの妹たちにも響くの、わかる?」
「――別に、逃してもいいだろ」
「よくないわ」
「逃したら、俺が貰ってやるから」
「へ?」
 何言ってるの、と顔を見て。
 私は瞬いた。
 そっぽ向いてるくせに、頬が――赤く染まってる。
「俺が仕方なく、貰ってやるから。お前は! ありがたく貰われろ! いいな!」
「ちょ、人を指差すものじゃ……ああ……」
 もう、何を言っていったのか、わかってるのか。
 私の口の端は笑みを象る。
 だって嬉しかったから。
 私の事、好きだって思って良い?

 そして後日、正式にアインの家から婚約の話が来た。
 彼の家は、公爵家で。
 うちは、伯爵家で。
 アインと彼の父上はいろいろ、揉めたらしいのだけど。
 それはまた私の知らない話。




ツンツンいじわる幼馴染。
揉めたのは何でもっとはやくいわないのだとかいうそういう、揉め方。
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