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本編
プロローグ
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世界創生の話。
何もない暗闇にぽつりと現れた『魔法使い』が杖振るう。
そこにできたものに、女神がその身の一部を溶かしこみ大地を得て。
その女神の友はそれを見て、わたしも何かしようと涙こぼし海とした。
2柱の愛でていた竜は齢を重ね終わりも近く、2柱の関わりし世界に何か残したいと『魔法使い』に願った。
その願いを叶えるため『魔法使い』は杖の先で竜の鼻先を叩く。
すると竜は大気になり、2柱の気配を感じる世界の礎となることを喜んだ。
そのうちに、そこには様々なものが生まれた。
『魔法使い』と『始まりの2柱』はその日々を見守るのみ。
それを見た悪神が面白がって己の指を、足を、瞳を、髪を、そして角を切り落とし世界に落とした。
それはやがて、そこにあるものを脅かすものとなる。
それ即ち『弾く指先』、『無垢の一足』、『見通す瞳』、『無貌の髪』、『暴虐の角』と、名を持つものに。
それらは強く、恐ろしく。その世界の者たちにとって決して勝てぬもの。
奪うだけの存在であった。
しかし、これはいけないと『魔法使い』は杖を振るい、世界に贈物をした。
それらに勝てる存在がいつか、生まれるように。
それらに滅ぼされぬように時も与えた。
かわりに『魔法使い』は力を失い、今も世界のどこかで眠りについている。
これが、世界の始まりの話。
アジール王国の民は幸せだ。
ほどほどに気候が良い場所、ほどほどに他国から攻め入られるのが難しく、他国の仲介となるような場所。
面積はそれほどあるわけでもないが、中堅の国としては大きな国だった。
そしてここ何代も民を虐げるような、実のない治め方をするような王も出ていない。
特に先代のイフェルエラ王は賢王とされ、よく国を治め民に慕われていた。
しかし、その賢王は40に届く前に亡くなる。
楽しく乗馬をしているときに、調子に乗って、落馬してぽっくりと。
やめろと周囲にたしなめられているのに、俺はこんなこともできるのだわはははと高笑いしながら立ち乗りし、バランスを崩し落馬した。
妻も二人の子も残して一人だけ旅立ったのだ。
妻も、二人の子もイフェルエラ王の死を嘆き、悲しみはしたのだが賢王だがお調子者。彼の性格をよく知っているからこそ、なんだからしい死に方でもあると諦めにも似た、苦笑まじりのような、そんな感情を持って見送った。
そして、イフェルエラ王の次は、彼の弟であったウベルディアが王となった。
ウベルディア王は兄のように人々を導くと誓ってその座についたという。
それまで片腕として政に関わっていたウベルディア王もまた、民にとってよき王となる。
国は乱れることもなく、粛々とイフェルエラ王の死を嘆き、新たな王を迎え入れた。
それから――十年。
国は衰えることなく、栄えていた。
特に、食文化において。
食。
その文化を花開かせたのは、先王イフェルエラ王の子。
本人曰く、美味しいもの食べたかっただけなんだけどという事なのだけれども。
これはちょっと変わり者の兄王子と、その付き人である少女と。
彼女に恋心抱く弟王子と。他の兄弟姉妹達と。
それから、彼等をとりまくもの達の話。
何もない暗闇にぽつりと現れた『魔法使い』が杖振るう。
そこにできたものに、女神がその身の一部を溶かしこみ大地を得て。
その女神の友はそれを見て、わたしも何かしようと涙こぼし海とした。
2柱の愛でていた竜は齢を重ね終わりも近く、2柱の関わりし世界に何か残したいと『魔法使い』に願った。
その願いを叶えるため『魔法使い』は杖の先で竜の鼻先を叩く。
すると竜は大気になり、2柱の気配を感じる世界の礎となることを喜んだ。
そのうちに、そこには様々なものが生まれた。
『魔法使い』と『始まりの2柱』はその日々を見守るのみ。
それを見た悪神が面白がって己の指を、足を、瞳を、髪を、そして角を切り落とし世界に落とした。
それはやがて、そこにあるものを脅かすものとなる。
それ即ち『弾く指先』、『無垢の一足』、『見通す瞳』、『無貌の髪』、『暴虐の角』と、名を持つものに。
それらは強く、恐ろしく。その世界の者たちにとって決して勝てぬもの。
奪うだけの存在であった。
しかし、これはいけないと『魔法使い』は杖を振るい、世界に贈物をした。
それらに勝てる存在がいつか、生まれるように。
それらに滅ぼされぬように時も与えた。
かわりに『魔法使い』は力を失い、今も世界のどこかで眠りについている。
これが、世界の始まりの話。
アジール王国の民は幸せだ。
ほどほどに気候が良い場所、ほどほどに他国から攻め入られるのが難しく、他国の仲介となるような場所。
面積はそれほどあるわけでもないが、中堅の国としては大きな国だった。
そしてここ何代も民を虐げるような、実のない治め方をするような王も出ていない。
特に先代のイフェルエラ王は賢王とされ、よく国を治め民に慕われていた。
しかし、その賢王は40に届く前に亡くなる。
楽しく乗馬をしているときに、調子に乗って、落馬してぽっくりと。
やめろと周囲にたしなめられているのに、俺はこんなこともできるのだわはははと高笑いしながら立ち乗りし、バランスを崩し落馬した。
妻も二人の子も残して一人だけ旅立ったのだ。
妻も、二人の子もイフェルエラ王の死を嘆き、悲しみはしたのだが賢王だがお調子者。彼の性格をよく知っているからこそ、なんだからしい死に方でもあると諦めにも似た、苦笑まじりのような、そんな感情を持って見送った。
そして、イフェルエラ王の次は、彼の弟であったウベルディアが王となった。
ウベルディア王は兄のように人々を導くと誓ってその座についたという。
それまで片腕として政に関わっていたウベルディア王もまた、民にとってよき王となる。
国は乱れることもなく、粛々とイフェルエラ王の死を嘆き、新たな王を迎え入れた。
それから――十年。
国は衰えることなく、栄えていた。
特に、食文化において。
食。
その文化を花開かせたのは、先王イフェルエラ王の子。
本人曰く、美味しいもの食べたかっただけなんだけどという事なのだけれども。
これはちょっと変わり者の兄王子と、その付き人である少女と。
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