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本編
菓子職人、ふたり
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料理長が、菓子職人を呼んだと連絡をくれた。
城の厨房にその紹介してくれる人たちに来てもらう日時を教えてもらったのでオードにも来いと伝える。
オードも忙しいのだが、新しく事業をやるならとどうにかやってきた。
そこになぜか、弟のセドリックもいる。まぁ、それはいいか。
そして、料理長の集めた菓子職人はといえば。
「おう、お前が噂の王子か。よろしく頼む」
「言葉遣いもう少しどうにかしないか!」
「ええー? だって堅苦しいのはよぉ……なぁ?」
なぁ、と言われても!
料理長がつれてきたのは!
俺より少し年下の、顔面に傷を持った男だったわけで!
菓子作る顔じゃねーだろ!! みたいな!!
不良あがり、みたいな!!
「えーっと……殿下、口が悪いのは許してやってください」
「ああ、うん、別に気にしないけど」
「ほら、デンカもそう言ってるだろ」
「……お前、気難しい貴族相手なら首、飛んでるぞ」
俺もそう思う。
よく今までやってこれたなと。
顔に傷のある男の名前はリド。短い名前は覚えやすくて良い!
料理長の教え子の同僚だったとのこと。その教え子はかつては城にいて、今は地方の貴族の家で腕を振るっているそうだが、このリドはそこのデザート係だったそうだ。
そんなつながりで料理長は知り合ったらしい。
腕は確か。だが奇抜な物をつくるので、追い出され。ふらふらしているというのを料理長が聞いて声をかけたとのこと。
「よ、よろしくお願いしますぅ~」
「よろしく」
そしてもう一人は、おどおどしている。
とてもおどおどしている、女の子だ。年齢は、いくつだろう。
俺にはニルと同じくらいに見える。
しかし、料理長がそっと年齢を耳打ちしてきた。
俺より年上だ、と……? ど、童顔かー!!
彼女の名前はシエル。手先がとても器用で、綺麗な菓子を作ると言う。
紹介もほどほどに、まずどの程度作れるのか見せて欲しいとお願いした。
俺もどうお願いすればいいのかわからないからだ。
俺は基本のレシピを紙に書いて渡す。
アイスクリームの。
「これが構えたい店で作るものの、基本レシピ。アレンジしてもらってもいい、もちろん。で、店で出す完成品にしてほしい」
店で出すというのは、その場で食べて貰えるサイズというくらいと注文を出す。あとはアイスに何を盛ろうが自由だ。
氷結系の魔術は使えるかと問えば、二人ともいけるとのこと。
なら問題なく作れるかな。わからないことがあったら聞いてと言って、俺はあとは自由にと言う。
出来上がりが楽しみだ。
俺も菓子は作るが、本職じゃない。料理長もそうだ。
調理場に二人を残して、俺達は邪魔にならないところで話をすることに。
ま、その場所は食堂なんだけど。
どんなふうになるかなぁと眺めていると先に作業に取り掛かったのはリドの方だった。
てきぱきと手際よく作って、味見。そこで頷く。なんか普通に納得してるから、もしかしてどっかで食べた事あるのかな?
でも、アイスはまだこの城から出してないから……食べる機会はなかったはずだ。
それから作ったアイスにドライフルーツとか、ナッツだろうか。それを小さ目にして混ぜ込んだり。
やー。どんな物作るのかなーって眺めてたら、なんか美味しそうな物作ってる。順調そうだ。
対して、シエルの方。
作業を始めて……うん。えっと。
うん。アイスが紫色なんだが? えっ、何入れたんだろう……そこ見てないからすごい不思議なんだけど。
それから、えっ、緑? えっ……えっ?
「殿下、変な顔になっておられますよ」
「セド、こいつはいつも変な顔だ、気にするな」
「オード、まるっと聞こえてるからな……いや、シエルの方のアイスがすごい色、してるなぁって……」
それがどこか不安で、楽しみだ。
それから、作業ちらちらみつつ。
先に出来上がったのはリドのほうだ。
「ほら、できたぜ」
アイスのどか盛だ。
どん! どん! どん! と皿の上に三種のアイスが三角錐型でそびえている。
それぞれ頂点にチェリー、板チョコ、クッキーが刺さってるという……お、おう……という反応しか俺はできない。
「うまそうだろう?」
「うん。美味しそうではある……ちなみに説明を」
まずチェリーののったアイス。それは淡いピンク色。クリームチーズとチェリーの砂糖煮を合わせてある。そこに食感の強化でナッツ。ちょっと酒も入ってるな。
板チョコが乗ってるのはチョコレートアイスに細かくしたチョコを混ぜてあると。
クッキーが刺さっているのは基本のアイス。
では、と俺は一口。
美味い。なんだこれ美味いな。舌触りもとても良い。俺が作るのより美味いのでは?
そもそも料理はともかく、菓子は下手の横好きみたいなもんだからなぁ。
「美味しいですね……とても上品な味がします」
「食べやすいな。俺はこのチェリーのが好きだ」
「僕はチョコが」
「うん。美味しい……でも、な」
「ん? 美味いけどダメか?」
「見た目がドンドンドンな感じなのがな……」
「そうか? 控えめにしたんだけどな」
控えめとは。
味のセンスは良いのに盛り付けセンスはというところ。
なるほど。なんとなく、何で貴族の家をやめたのかわかった。
多分、お洒落な盛り付けできないからだ。そういうの、パーティーとかする家なら必要な能力だしな。
しかし、うーん。この味作りのセンスは逃したくない。
「できましたぁ~」
と、続いてシエルが。
「おおお、すごい!」
思わず、声零れた。
丸い形で置かれたアイスクリームは二種。見た目からしてチョコとバニラだろうか。
その傍にはフルーツを切ったものが並び、生クリームと。
それからチョコレートソース。他にもジャムとかで皿が彩られている。さらにふわっと飴が雲のようにかけられているのだ。
芸術的と言える一皿。見た目はばっちりだ。
「じゃあいただきます」
ひとすくい。
バニラアイスを俺は救って食べると――ごっふ!
「げほっ! んんっ!? えっ、しょっぱ! しょっぱい! 度を越したしょっぱさ!!」
「はい、砂糖のほかに塩をたっぷりと~」
「塩!?」
「甘みを引き立たせるために塩ですぅ~」
まさか、と思って恐る恐る、チョコ……いや、チョコっぽいものを口にする。
えっ、何だこの味。何いれたんだ。何、ちょ、何!? 甘くないのに甘、え!?
見た目に対して、この味はちょっと。ちょっと……口直しにフルーツが進む!!
「……うん、なんだかすごい味だった。前衛的ってこんな味を言うんだと思う……」
「ははは! これすげーな。あんたすげーな……まじかよすげーな……」
横から手を出したリドは最初は笑っていたもののその味を理解するほどに声のトーンが落ちていく。
わかる。その気持ちわかる。
正直、この味では店を任せてはおけない。
しかし、だ。しかし――盛り付けのセンスは良い。
となると選択肢はひとつ。
「調理担当主任としてリド、盛り付け担当主任としてシエルを雇うってことにしよう」
「ま、それが妥当だよな……どうせ他にも人は雇うし、お前が店をやるって言えば客は最初から多い」
「そうなんだよな。オード、店のほうは?」
「いくつか場所は。それはあとでお前と決めることにする」
「なら二人にも混ざってもらって、希望を聞こう。ということで、二人とも雇うし担当を分ける。と言っても、それぞれやってもらう事は互いに手伝ってもらうし、協力はしてもらいたい」
それでいいか、と言えばお互いに顔を見合わせる。
「そうですねぇ……ええ、わ、私の味覚がちょっと、アレなのはちゃんと理解しているのです」
お、本当に? そ、それはよかった……よかった。
そう思ってリドを見るとがしがしと頭を書きながら、確かにお嬢ちゃんの味はなと苦笑している。
「俺も、この皿をみたらお嬢ちゃんの盛り付けのレベルが高い事はわかる。こういうセンスはねぇし」
互いの勉強にもなるし店は一人でやるわけでもないしなとリドは言って、よろしくとシエルへと手を差し出した。
シエルもはいと頷いてその手をとる。
うん、問題なくいけそうだな。
こうして、俺は無事に店の従業員を手に入れた。
店長はシエルとうことにした。リドはめんどいのは嫌だと言うのもある。
それにどーんとリドが前にでるよりシエルが前に立った方が、女性客は店に入りやすいだろう。
「んじゃ、あと店員。製菓の従業員と店の給仕を考えないとな」
「それでしたら殿下、ひとつ提案が」
と、料理長が手をあげる。
料理長は製菓についてはメインというわけではないがこういうツテコネはあるのだ。
「城の製菓部門から週替わりで一人、出向させていただければ。下働きで良いのです!」
「えー」
「殿下、お願いします。給料無しでいいので!」
いや、そうもいかないだろう。あ、でも城の勤務時間的なものと同じにはなるのか。
ま、できなくはないけど。
「そちらの店で勉強できれば幸いかと。というのも、城の製菓部門の者はいずれは独り立ちするのです。その時、自分で店を持つということも可能だと見せてやりたく。あと殿下が二号店を出すときにですね」
「ああ、そういう打算な……」
「後進の為と思って」
そう言われると、わからなくもない。
菓子店を増やすというのは俺の目標でもある。というのも、俺だけにかかる負担がでかい。
甘いものはな、女性陣がよく求めるのだ。あと年下達も。いや大人も求めるか。しかしそれがお手軽に買えるようになれば、というところ。
今は貴族が楽しむというようなものが多い。もっと手軽に皆楽しめたらいいのになと思うわけだ。
リドとシエルを見れば、むしろそれは歓迎だというような顔をしている。
それから、リドが先に言っておきたいことがあると手をあげた。
「俺は、帳簿とかわからねぇ」
「あ、私もです」
「えー。オード」
「……帳簿関係ができる人間を商会から出そう。これは、出向手当つけていいよな?」
「おう。それって仕入とかも入るよなぁ。二人の欲しい品質と価格との計算とかも必要だし。俺みたいに原価無視はできない。給料ださなきゃいけないし
うーん、まだまだ悩むところは有りそうだ。
店をするのだったら、利益はとらなきゃならない。でも、たくさんの人が楽しめる値段で、だ。
それは商会もあるし、そのツテコネで良い所と繋がれるとは思うけど。
まだまだ決めることはたくさんあるが、これは楽しい。
「とりあえず、契約書用意するから二人はそれを確認して了承したらサインを。で、店とか、内装とかそういう話にも加わってもらう。レシピは基本のものから好きにしてくれていい。メニューは任せた」
ちなみに俺の考えはだ。
店内に飲食スペース。それは時間制にしてお茶ができるように。
店先にも飲食スペース。そっちは、アイスだけの盛り付けでぱっと食べていってもらえるようなイメージだと伝える。
で、店先では持ち帰りもできる、と。
こっちは容器に一定時間、保存できる系の魔法をかけてもらって用意すればいい。
あとは自分で器持ってきてもらうとかだな。
そういった事を伝えるとなぜか料理長がメモをしている。料理長?
そんな俺の視線に気づいた料理長は顔をあげ、こほんと咳払いをひとつ。
「……あ、いえ。城の料理長を辞したならばあとは後進を育てつつ自分の店をと思ってまして。大変参考になります」
なんという料理長の野望。それはそれで良い事だと思うけど。
けど確かに、いつまでも料理長をしていられるわけではない。
そこに入れ替わりはあるのだ。
「料理長が店出すときは相談にのるよ。それくらいはするって」
「なんと! 殿下ありがとうございます!」
「……殿下、よろしいですか?」
「おい、セド」
と、そこで控えめにセドリックが声をかけてくる。オードが窘めるが、別に俺はそういうの気にしない。
公式の場じゃないしな。
なので、どうしたと問えばだ。
「お話を聞いていれば、お店の方向性はわかるのですがコンセプトがないかと」
「コンセプト? それはアイスの店っていう」
「いえ、そうではなく。たとえば……大人向け、子供向け。見目は綺麗でいくのか、かわいいでいくのかというような。そういう事に対しても面倒を見る方が必要ではないか、と。つまり企画です。殿下お一人でされるわけにはいかないでしょう?」
「それは、確かに……オード、そういうつてはあるか?」
「うーん……探さないとない。二人にやってもらうのは? 二人っていうか、シエルに」
「さ、さすがにそこまではぁ~。それに、お皿の上は考えられますかお店全体は無理です」
セドに言われて気付くなんて。
そうだな。商会は……俺の見たものを一般に広めるためのものだ。だから、俺がしたいことをしてついてきてもらうスタンスで丸投げ。
けど店は違う。
俺のという触れ込みで最初は賑わうだろう。でもアイスのレシピが表に出たら――そういう指針をしっかりもっていなければ潰れる可能性だってある。
作る菓子の方向性については丸投げで良い。でもそれも放りっぱなしではいけない。
何か一本、芯がないといけない。そういうコンセプトのことか。
「……俺は、アイスは美味いって知ってもらいたいし。広まってほしいから作りたい奴は自由に。俺の店だって自由で良いって思ってたけどそうもいかないか」
そこで俺はちょっと考える。
俺が一人で決めるより、これからその店を動かしていくのは二人なのだ。
「リドとシエルはどんなものが作りたい? この店、じゃなくて自分が」
「どんなっていうのは……たとえば、お皿の上をかわいく、とかそういうのでよいのですかぁ?」
「そうそう、そういうので良いよ。きっちり言葉にできなくて良い」
それでしたら、とシエルは微笑む。
「私は見るだけで、心楽しくなるようなお皿を作りたいです。幸せいっぱいの」
「そういうのでいいなら俺もある。菓子は美味い。美味いと笑顔になるだろう? 泣いていても食べれば笑顔になるような美味さを俺は追及している」
「ということはぁ、私達、似たもの同士ですねぇ」
「そうだな」
なるほど。
じゃあコンセプトは笑顔で幸せになれる店だ。
そういうことになるだろう。
セドリックを見ればにこりと微笑んでいる。なるほど、なるほど。
促したのはこういう言葉を引き出すためか。これはそのうち聞くことだったろうけど、今聞いたことに意味があるのだと思う。
二人はここで距離を詰めることができたし、俺も知ることができた。
店作りには大切なことだろう。
オードをちらりとみる。すると肩をすくめてみせた。それは俺に好きにすれば良いと言っているのだ。
俺がこれからどうするかなんとなく察しているのだと思う。
俺はセドリック、と名を呼ぶ。
「君、このまま店の運営に携わる気はないか? 俺は店は持ってるけど……あれはまぁ、実験する場所みたいなもので。こういうことは初めてなんだ。オードも商売はできるが店の運営というのはしたことがない。セドリックはそういった事ができそうだ」
「はい、よろこんで。お力になりたいです」
「ああ、よろしく。といっても、表立っては公爵家に迷惑をかけられないしな……」
「それでしたら殿下、僕をお雇いください。社会勉強ということで、父の説得はどうにかします。賃金も必要ありません、関わらせていただくだけで嬉しいです」
そうきたか。
これは、セドリックにとってはのちのちの勉強ということにもなる。
しかし店のすべてを任すわけにはいかないしな、どうするか。
超御得意客という扱いはどうだろうか。それは公爵家を、という形にはなるけれど。
まだこういう店というのは初の試み。色々な意見を取り入れたいと思う。
けど、ひとつの家では偏りがでるし。
いやいや、駄目だな。
まだ学生のセドリックに責任を持てとも言えない。公爵家を巻き込むのはちょっと違う。
セドリック自身に、俺は手伝ってほしいと思う。
やっぱり雇うべきか。雇う……でも雇うっていうのはな。公爵家の直系を雇う?
それは、なぁ……オードとは違う。
セドリックが店を持つオーナーというのなら可能だろうが、それはまだ早いだろう。そうなると公爵の許可もいる。
むしろ公爵がオーナーになる。
俺はオーナーは、雇う二人にそのうち、なってほしいと思っている。
だから、生まれた利益は店のものに。最初からそうしておきたい。
迷うところがあれば意見を求められ一緒に考えてくれるというような――相談役。
そうだな、それが良い。
「相談役っていうのはどうだろうか。その、経営云々に関しては口を出さないけれど、店の方向性、出す商品とかについては味見して意見を出す、って感じの……」
雇うだと賃金が発生する。一時間だけきてはいさよなら、というわけにもいかない。
これから雇う者達に対して、いちいちセドリックは特別だ、なんてこと言うと問題がありそうだし。
セドリックはまだ学生だ。それに公爵としての勉強もありずーっと店のために働けとも言えない。
負担は軽い方がいいな。となれば、同じ立ち位置のものを増やすのみ。
「で、それも一人じゃなくて数人、信用のできる者にお願いしたい。料理長」
「はい! よろこんで! ついでに製菓部門の者も二人くらい連れて行ってもよろしいでしょうか」
「いいよ。でも、メインはふたりだから。二人にこういうのしろ、とは命令できない」
「おう」
「はぁい。どうするか困った時、相談できる方がいると嬉しいです」
うんうん、わかる。
そしてそういうのは自分とは立ち位置の違う人間が良い。
「あくまで相談役。あ、でもオードは経営側だからな、そういう点で口出していい。俺も多分、出す」
「そうだな……あくまで経営的な点には。でも菓子や店内の雰囲気なんかの相談は俺じゃあ限界があるしこれは良いと思うぜ」
ということでこれも決まり。
それから。
店の場所の再考に入り、下見をして決めた。
ちょーっと痛かったけど二階建て、庭付きのかわいらしい感じの店を買った。その場所は城にも近い。
そして学校にも近く、賑わいは多い。貴族も、平民も。皆等しく通るような通りから一歩はいった場所にある。
もともとはブティック店だったらしく、赤いレンガでできた建物。
通りに面する場所はガラス張りにし、シエルが盛り付けるのを見えるように。そしてすぐに入ればカウンターで色々なアイスクリームが並んでいるのを見えるように――する!
今はまだオーソドックスなものから行こうという提案だ。色々あると迷うし、どんなものか知ってもらうのが先決。
なおリドが作ってる姿は見えない場所にしておいた。
で、庭が見える場所に飲食ができる場所。そこで出すものはシエルとリド次第だ。
こっちは、アイスは色々な種類にしてもらい、他にも何か菓子を添えてもらうことに。その辺はもうお任せだ。
と、俺が口をだしたのはこのへんまで。
あとは、二人でメニューを決めてやってくれと投げた。
良いのか、というような顔をされたのだけど最初からそのつもり。
ただし、出すものについては一度俺の口に入れてから、という約束を。あと余裕があれば相談役にも。
あっという間に色々なことが決まっていく。そして気付いたら他にも相談役が増えていた。
それは置いといて。
店の開店が決まる。
それが決まって、俺はアイスクリームのレシピをギルドへと出した。
基本のレシピを登録し、いつもの皆自由に使ってである。
それから、リドとシエル。二人の名前でアイスクリームを三種含んだレシピを提出した。
クリームチーズとチェリーのアイスクリーム。
ドライフルーツのチョコレートのアイスクリーム。
キャラメルとナッツのアイスクリーム。
その三つを添えたパフェ。フルーツと生クリームを添えたものを店のメインとして据えたからだ。
つまり、そのままでも美味しいけどこうするともっと良いという試作例。
これをそのまま真似することは許されないが参考にはしていい。
同じような店がこれからもっと増えることを祈って、というところだ。
【菓子職人、ふたり】
・アイスクリーム
城の厨房にその紹介してくれる人たちに来てもらう日時を教えてもらったのでオードにも来いと伝える。
オードも忙しいのだが、新しく事業をやるならとどうにかやってきた。
そこになぜか、弟のセドリックもいる。まぁ、それはいいか。
そして、料理長の集めた菓子職人はといえば。
「おう、お前が噂の王子か。よろしく頼む」
「言葉遣いもう少しどうにかしないか!」
「ええー? だって堅苦しいのはよぉ……なぁ?」
なぁ、と言われても!
料理長がつれてきたのは!
俺より少し年下の、顔面に傷を持った男だったわけで!
菓子作る顔じゃねーだろ!! みたいな!!
不良あがり、みたいな!!
「えーっと……殿下、口が悪いのは許してやってください」
「ああ、うん、別に気にしないけど」
「ほら、デンカもそう言ってるだろ」
「……お前、気難しい貴族相手なら首、飛んでるぞ」
俺もそう思う。
よく今までやってこれたなと。
顔に傷のある男の名前はリド。短い名前は覚えやすくて良い!
料理長の教え子の同僚だったとのこと。その教え子はかつては城にいて、今は地方の貴族の家で腕を振るっているそうだが、このリドはそこのデザート係だったそうだ。
そんなつながりで料理長は知り合ったらしい。
腕は確か。だが奇抜な物をつくるので、追い出され。ふらふらしているというのを料理長が聞いて声をかけたとのこと。
「よ、よろしくお願いしますぅ~」
「よろしく」
そしてもう一人は、おどおどしている。
とてもおどおどしている、女の子だ。年齢は、いくつだろう。
俺にはニルと同じくらいに見える。
しかし、料理長がそっと年齢を耳打ちしてきた。
俺より年上だ、と……? ど、童顔かー!!
彼女の名前はシエル。手先がとても器用で、綺麗な菓子を作ると言う。
紹介もほどほどに、まずどの程度作れるのか見せて欲しいとお願いした。
俺もどうお願いすればいいのかわからないからだ。
俺は基本のレシピを紙に書いて渡す。
アイスクリームの。
「これが構えたい店で作るものの、基本レシピ。アレンジしてもらってもいい、もちろん。で、店で出す完成品にしてほしい」
店で出すというのは、その場で食べて貰えるサイズというくらいと注文を出す。あとはアイスに何を盛ろうが自由だ。
氷結系の魔術は使えるかと問えば、二人ともいけるとのこと。
なら問題なく作れるかな。わからないことがあったら聞いてと言って、俺はあとは自由にと言う。
出来上がりが楽しみだ。
俺も菓子は作るが、本職じゃない。料理長もそうだ。
調理場に二人を残して、俺達は邪魔にならないところで話をすることに。
ま、その場所は食堂なんだけど。
どんなふうになるかなぁと眺めていると先に作業に取り掛かったのはリドの方だった。
てきぱきと手際よく作って、味見。そこで頷く。なんか普通に納得してるから、もしかしてどっかで食べた事あるのかな?
でも、アイスはまだこの城から出してないから……食べる機会はなかったはずだ。
それから作ったアイスにドライフルーツとか、ナッツだろうか。それを小さ目にして混ぜ込んだり。
やー。どんな物作るのかなーって眺めてたら、なんか美味しそうな物作ってる。順調そうだ。
対して、シエルの方。
作業を始めて……うん。えっと。
うん。アイスが紫色なんだが? えっ、何入れたんだろう……そこ見てないからすごい不思議なんだけど。
それから、えっ、緑? えっ……えっ?
「殿下、変な顔になっておられますよ」
「セド、こいつはいつも変な顔だ、気にするな」
「オード、まるっと聞こえてるからな……いや、シエルの方のアイスがすごい色、してるなぁって……」
それがどこか不安で、楽しみだ。
それから、作業ちらちらみつつ。
先に出来上がったのはリドのほうだ。
「ほら、できたぜ」
アイスのどか盛だ。
どん! どん! どん! と皿の上に三種のアイスが三角錐型でそびえている。
それぞれ頂点にチェリー、板チョコ、クッキーが刺さってるという……お、おう……という反応しか俺はできない。
「うまそうだろう?」
「うん。美味しそうではある……ちなみに説明を」
まずチェリーののったアイス。それは淡いピンク色。クリームチーズとチェリーの砂糖煮を合わせてある。そこに食感の強化でナッツ。ちょっと酒も入ってるな。
板チョコが乗ってるのはチョコレートアイスに細かくしたチョコを混ぜてあると。
クッキーが刺さっているのは基本のアイス。
では、と俺は一口。
美味い。なんだこれ美味いな。舌触りもとても良い。俺が作るのより美味いのでは?
そもそも料理はともかく、菓子は下手の横好きみたいなもんだからなぁ。
「美味しいですね……とても上品な味がします」
「食べやすいな。俺はこのチェリーのが好きだ」
「僕はチョコが」
「うん。美味しい……でも、な」
「ん? 美味いけどダメか?」
「見た目がドンドンドンな感じなのがな……」
「そうか? 控えめにしたんだけどな」
控えめとは。
味のセンスは良いのに盛り付けセンスはというところ。
なるほど。なんとなく、何で貴族の家をやめたのかわかった。
多分、お洒落な盛り付けできないからだ。そういうの、パーティーとかする家なら必要な能力だしな。
しかし、うーん。この味作りのセンスは逃したくない。
「できましたぁ~」
と、続いてシエルが。
「おおお、すごい!」
思わず、声零れた。
丸い形で置かれたアイスクリームは二種。見た目からしてチョコとバニラだろうか。
その傍にはフルーツを切ったものが並び、生クリームと。
それからチョコレートソース。他にもジャムとかで皿が彩られている。さらにふわっと飴が雲のようにかけられているのだ。
芸術的と言える一皿。見た目はばっちりだ。
「じゃあいただきます」
ひとすくい。
バニラアイスを俺は救って食べると――ごっふ!
「げほっ! んんっ!? えっ、しょっぱ! しょっぱい! 度を越したしょっぱさ!!」
「はい、砂糖のほかに塩をたっぷりと~」
「塩!?」
「甘みを引き立たせるために塩ですぅ~」
まさか、と思って恐る恐る、チョコ……いや、チョコっぽいものを口にする。
えっ、何だこの味。何いれたんだ。何、ちょ、何!? 甘くないのに甘、え!?
見た目に対して、この味はちょっと。ちょっと……口直しにフルーツが進む!!
「……うん、なんだかすごい味だった。前衛的ってこんな味を言うんだと思う……」
「ははは! これすげーな。あんたすげーな……まじかよすげーな……」
横から手を出したリドは最初は笑っていたもののその味を理解するほどに声のトーンが落ちていく。
わかる。その気持ちわかる。
正直、この味では店を任せてはおけない。
しかし、だ。しかし――盛り付けのセンスは良い。
となると選択肢はひとつ。
「調理担当主任としてリド、盛り付け担当主任としてシエルを雇うってことにしよう」
「ま、それが妥当だよな……どうせ他にも人は雇うし、お前が店をやるって言えば客は最初から多い」
「そうなんだよな。オード、店のほうは?」
「いくつか場所は。それはあとでお前と決めることにする」
「なら二人にも混ざってもらって、希望を聞こう。ということで、二人とも雇うし担当を分ける。と言っても、それぞれやってもらう事は互いに手伝ってもらうし、協力はしてもらいたい」
それでいいか、と言えばお互いに顔を見合わせる。
「そうですねぇ……ええ、わ、私の味覚がちょっと、アレなのはちゃんと理解しているのです」
お、本当に? そ、それはよかった……よかった。
そう思ってリドを見るとがしがしと頭を書きながら、確かにお嬢ちゃんの味はなと苦笑している。
「俺も、この皿をみたらお嬢ちゃんの盛り付けのレベルが高い事はわかる。こういうセンスはねぇし」
互いの勉強にもなるし店は一人でやるわけでもないしなとリドは言って、よろしくとシエルへと手を差し出した。
シエルもはいと頷いてその手をとる。
うん、問題なくいけそうだな。
こうして、俺は無事に店の従業員を手に入れた。
店長はシエルとうことにした。リドはめんどいのは嫌だと言うのもある。
それにどーんとリドが前にでるよりシエルが前に立った方が、女性客は店に入りやすいだろう。
「んじゃ、あと店員。製菓の従業員と店の給仕を考えないとな」
「それでしたら殿下、ひとつ提案が」
と、料理長が手をあげる。
料理長は製菓についてはメインというわけではないがこういうツテコネはあるのだ。
「城の製菓部門から週替わりで一人、出向させていただければ。下働きで良いのです!」
「えー」
「殿下、お願いします。給料無しでいいので!」
いや、そうもいかないだろう。あ、でも城の勤務時間的なものと同じにはなるのか。
ま、できなくはないけど。
「そちらの店で勉強できれば幸いかと。というのも、城の製菓部門の者はいずれは独り立ちするのです。その時、自分で店を持つということも可能だと見せてやりたく。あと殿下が二号店を出すときにですね」
「ああ、そういう打算な……」
「後進の為と思って」
そう言われると、わからなくもない。
菓子店を増やすというのは俺の目標でもある。というのも、俺だけにかかる負担がでかい。
甘いものはな、女性陣がよく求めるのだ。あと年下達も。いや大人も求めるか。しかしそれがお手軽に買えるようになれば、というところ。
今は貴族が楽しむというようなものが多い。もっと手軽に皆楽しめたらいいのになと思うわけだ。
リドとシエルを見れば、むしろそれは歓迎だというような顔をしている。
それから、リドが先に言っておきたいことがあると手をあげた。
「俺は、帳簿とかわからねぇ」
「あ、私もです」
「えー。オード」
「……帳簿関係ができる人間を商会から出そう。これは、出向手当つけていいよな?」
「おう。それって仕入とかも入るよなぁ。二人の欲しい品質と価格との計算とかも必要だし。俺みたいに原価無視はできない。給料ださなきゃいけないし
うーん、まだまだ悩むところは有りそうだ。
店をするのだったら、利益はとらなきゃならない。でも、たくさんの人が楽しめる値段で、だ。
それは商会もあるし、そのツテコネで良い所と繋がれるとは思うけど。
まだまだ決めることはたくさんあるが、これは楽しい。
「とりあえず、契約書用意するから二人はそれを確認して了承したらサインを。で、店とか、内装とかそういう話にも加わってもらう。レシピは基本のものから好きにしてくれていい。メニューは任せた」
ちなみに俺の考えはだ。
店内に飲食スペース。それは時間制にしてお茶ができるように。
店先にも飲食スペース。そっちは、アイスだけの盛り付けでぱっと食べていってもらえるようなイメージだと伝える。
で、店先では持ち帰りもできる、と。
こっちは容器に一定時間、保存できる系の魔法をかけてもらって用意すればいい。
あとは自分で器持ってきてもらうとかだな。
そういった事を伝えるとなぜか料理長がメモをしている。料理長?
そんな俺の視線に気づいた料理長は顔をあげ、こほんと咳払いをひとつ。
「……あ、いえ。城の料理長を辞したならばあとは後進を育てつつ自分の店をと思ってまして。大変参考になります」
なんという料理長の野望。それはそれで良い事だと思うけど。
けど確かに、いつまでも料理長をしていられるわけではない。
そこに入れ替わりはあるのだ。
「料理長が店出すときは相談にのるよ。それくらいはするって」
「なんと! 殿下ありがとうございます!」
「……殿下、よろしいですか?」
「おい、セド」
と、そこで控えめにセドリックが声をかけてくる。オードが窘めるが、別に俺はそういうの気にしない。
公式の場じゃないしな。
なので、どうしたと問えばだ。
「お話を聞いていれば、お店の方向性はわかるのですがコンセプトがないかと」
「コンセプト? それはアイスの店っていう」
「いえ、そうではなく。たとえば……大人向け、子供向け。見目は綺麗でいくのか、かわいいでいくのかというような。そういう事に対しても面倒を見る方が必要ではないか、と。つまり企画です。殿下お一人でされるわけにはいかないでしょう?」
「それは、確かに……オード、そういうつてはあるか?」
「うーん……探さないとない。二人にやってもらうのは? 二人っていうか、シエルに」
「さ、さすがにそこまではぁ~。それに、お皿の上は考えられますかお店全体は無理です」
セドに言われて気付くなんて。
そうだな。商会は……俺の見たものを一般に広めるためのものだ。だから、俺がしたいことをしてついてきてもらうスタンスで丸投げ。
けど店は違う。
俺のという触れ込みで最初は賑わうだろう。でもアイスのレシピが表に出たら――そういう指針をしっかりもっていなければ潰れる可能性だってある。
作る菓子の方向性については丸投げで良い。でもそれも放りっぱなしではいけない。
何か一本、芯がないといけない。そういうコンセプトのことか。
「……俺は、アイスは美味いって知ってもらいたいし。広まってほしいから作りたい奴は自由に。俺の店だって自由で良いって思ってたけどそうもいかないか」
そこで俺はちょっと考える。
俺が一人で決めるより、これからその店を動かしていくのは二人なのだ。
「リドとシエルはどんなものが作りたい? この店、じゃなくて自分が」
「どんなっていうのは……たとえば、お皿の上をかわいく、とかそういうのでよいのですかぁ?」
「そうそう、そういうので良いよ。きっちり言葉にできなくて良い」
それでしたら、とシエルは微笑む。
「私は見るだけで、心楽しくなるようなお皿を作りたいです。幸せいっぱいの」
「そういうのでいいなら俺もある。菓子は美味い。美味いと笑顔になるだろう? 泣いていても食べれば笑顔になるような美味さを俺は追及している」
「ということはぁ、私達、似たもの同士ですねぇ」
「そうだな」
なるほど。
じゃあコンセプトは笑顔で幸せになれる店だ。
そういうことになるだろう。
セドリックを見ればにこりと微笑んでいる。なるほど、なるほど。
促したのはこういう言葉を引き出すためか。これはそのうち聞くことだったろうけど、今聞いたことに意味があるのだと思う。
二人はここで距離を詰めることができたし、俺も知ることができた。
店作りには大切なことだろう。
オードをちらりとみる。すると肩をすくめてみせた。それは俺に好きにすれば良いと言っているのだ。
俺がこれからどうするかなんとなく察しているのだと思う。
俺はセドリック、と名を呼ぶ。
「君、このまま店の運営に携わる気はないか? 俺は店は持ってるけど……あれはまぁ、実験する場所みたいなもので。こういうことは初めてなんだ。オードも商売はできるが店の運営というのはしたことがない。セドリックはそういった事ができそうだ」
「はい、よろこんで。お力になりたいです」
「ああ、よろしく。といっても、表立っては公爵家に迷惑をかけられないしな……」
「それでしたら殿下、僕をお雇いください。社会勉強ということで、父の説得はどうにかします。賃金も必要ありません、関わらせていただくだけで嬉しいです」
そうきたか。
これは、セドリックにとってはのちのちの勉強ということにもなる。
しかし店のすべてを任すわけにはいかないしな、どうするか。
超御得意客という扱いはどうだろうか。それは公爵家を、という形にはなるけれど。
まだこういう店というのは初の試み。色々な意見を取り入れたいと思う。
けど、ひとつの家では偏りがでるし。
いやいや、駄目だな。
まだ学生のセドリックに責任を持てとも言えない。公爵家を巻き込むのはちょっと違う。
セドリック自身に、俺は手伝ってほしいと思う。
やっぱり雇うべきか。雇う……でも雇うっていうのはな。公爵家の直系を雇う?
それは、なぁ……オードとは違う。
セドリックが店を持つオーナーというのなら可能だろうが、それはまだ早いだろう。そうなると公爵の許可もいる。
むしろ公爵がオーナーになる。
俺はオーナーは、雇う二人にそのうち、なってほしいと思っている。
だから、生まれた利益は店のものに。最初からそうしておきたい。
迷うところがあれば意見を求められ一緒に考えてくれるというような――相談役。
そうだな、それが良い。
「相談役っていうのはどうだろうか。その、経営云々に関しては口を出さないけれど、店の方向性、出す商品とかについては味見して意見を出す、って感じの……」
雇うだと賃金が発生する。一時間だけきてはいさよなら、というわけにもいかない。
これから雇う者達に対して、いちいちセドリックは特別だ、なんてこと言うと問題がありそうだし。
セドリックはまだ学生だ。それに公爵としての勉強もありずーっと店のために働けとも言えない。
負担は軽い方がいいな。となれば、同じ立ち位置のものを増やすのみ。
「で、それも一人じゃなくて数人、信用のできる者にお願いしたい。料理長」
「はい! よろこんで! ついでに製菓部門の者も二人くらい連れて行ってもよろしいでしょうか」
「いいよ。でも、メインはふたりだから。二人にこういうのしろ、とは命令できない」
「おう」
「はぁい。どうするか困った時、相談できる方がいると嬉しいです」
うんうん、わかる。
そしてそういうのは自分とは立ち位置の違う人間が良い。
「あくまで相談役。あ、でもオードは経営側だからな、そういう点で口出していい。俺も多分、出す」
「そうだな……あくまで経営的な点には。でも菓子や店内の雰囲気なんかの相談は俺じゃあ限界があるしこれは良いと思うぜ」
ということでこれも決まり。
それから。
店の場所の再考に入り、下見をして決めた。
ちょーっと痛かったけど二階建て、庭付きのかわいらしい感じの店を買った。その場所は城にも近い。
そして学校にも近く、賑わいは多い。貴族も、平民も。皆等しく通るような通りから一歩はいった場所にある。
もともとはブティック店だったらしく、赤いレンガでできた建物。
通りに面する場所はガラス張りにし、シエルが盛り付けるのを見えるように。そしてすぐに入ればカウンターで色々なアイスクリームが並んでいるのを見えるように――する!
今はまだオーソドックスなものから行こうという提案だ。色々あると迷うし、どんなものか知ってもらうのが先決。
なおリドが作ってる姿は見えない場所にしておいた。
で、庭が見える場所に飲食ができる場所。そこで出すものはシエルとリド次第だ。
こっちは、アイスは色々な種類にしてもらい、他にも何か菓子を添えてもらうことに。その辺はもうお任せだ。
と、俺が口をだしたのはこのへんまで。
あとは、二人でメニューを決めてやってくれと投げた。
良いのか、というような顔をされたのだけど最初からそのつもり。
ただし、出すものについては一度俺の口に入れてから、という約束を。あと余裕があれば相談役にも。
あっという間に色々なことが決まっていく。そして気付いたら他にも相談役が増えていた。
それは置いといて。
店の開店が決まる。
それが決まって、俺はアイスクリームのレシピをギルドへと出した。
基本のレシピを登録し、いつもの皆自由に使ってである。
それから、リドとシエル。二人の名前でアイスクリームを三種含んだレシピを提出した。
クリームチーズとチェリーのアイスクリーム。
ドライフルーツのチョコレートのアイスクリーム。
キャラメルとナッツのアイスクリーム。
その三つを添えたパフェ。フルーツと生クリームを添えたものを店のメインとして据えたからだ。
つまり、そのままでも美味しいけどこうするともっと良いという試作例。
これをそのまま真似することは許されないが参考にはしていい。
同じような店がこれからもっと増えることを祈って、というところだ。
【菓子職人、ふたり】
・アイスクリーム
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