16 / 33
温度差
しおりを挟む
三人の王子に囲まれたお茶会から数日後、ブランシュに対する周囲の反応は多少ましになった。
まず直接的な嫌がらせはなくなったのだ。
というのも、やろうとすればムゥがそれをはじき返す。相手が怒ってきても、それはこちらにやろうとしたことを返して防いだだけだと言い張るのみだ。
けれどそういうのはパタリと止まった。
どうやら三人がちゃんと言い含めたらしい。その方法をブランシュは聞くつもりはないが静かになったのはとても良い。
ただ、誰も近寄っては来ないので一人ではあるのだが。
別段一人が嫌いでも我慢ならないわけでもない。むしろ好きなくらいだ。
しかし、ちょっとした会話もないというのもなんだかなと思う。
朝の挨拶をしても無視。朗らかに挨拶を王子達が返すと、鋭い視線が刺さる。
それは変わってない様子。が、直接的なものが無くなったのは素直にありがたい。
人の心が簡単に変わるわけでもないので、ブランシュはそれを甘んじて受け入れている。
多少、生活は変わったが大問題ではない。
ブランシュは今、ムゥを伴って歩いていた。
「どこにいくのだ?」
「窓際さんにタオルを返しにいくの。水をかけられたときに借りたのよ」
それにお礼もしなきゃとブランシュは言う。助けてもらったのなら礼を返すのは当たり前だ。
そうだとわかってはいるのだが、何か気に入らない。腑に落ちない。
てこてことブランシュの隣を歩くムゥは面白くないと思っていた。
「いるかしら、窓際さん」
「その窓際さん、というのは呼び名か?」
「そうよ。あちらの名前をわたしが知るのは良くないみたいで」
「ふん……わけありか……」
ブランシュは警戒しすぎじゃないかしら、と思うのだがムゥにしてみれば得体のしれないものだ。
自分がこちらへ来る間に合った相手。何者かわからない。
常であれば、すぐに見ることはできるがそれは制限されているのだ。まだ、この身と力と世界はなじんでいない。
カミサマより無理をすればその身は砕けますよと言われているのだ。
そして、レンガの建物へとたどり着く。
ブランシュは入口をノックし、扉をおす。どうやら今日は鍵はかかっていないようだ。
中に入ろうか、とも思ったのだが。
「中に入ってしまうと、窓際さんじゃないわね……」
窓際にいる。そして窓越しで顔をしらないからこその窓際さんじゃないと思ったのだ。
そう思えば、扉から回る気はなくなる。
そこを離れて、この前出会った窓際へ。窓は開かれており、きっと中にはいるのだろう。
その窓の高さはブランシュが背伸びをしないと中は見えない。
つまり窓際さんがその姿を見せずに、ある意味いられる場所でもあった。
「窓際さん、いる?」
返事はない。いないならそれはそれで仕方ないわとブランシュはタオルを窓際へと置いた。
それともう一つ、お礼の気持ちを込めて焼き菓子を。
それを置いた瞬間だ。
「タオルは、返さなくてもよかったんだが」
「っ!」
焼き菓子を置いて、離れた手が掴まれる。
「ここに来てくれたのは素直に嬉しいと思う」
「突然触れられたらびっくりするわ。お久しぶりね」
ああ、と笑う声。それとともに手は離れた。
脅かすなんて意地悪ねとブランシュは、楽しそうに笑う。
「顔は見せたほうがいいか?」
「何故? わたしは声だけでも楽しいわよ」
窓際さんは、壁側に身を隠している。
ブランシュがいる場所からはその顔はわからない。そうか、と窓際さんは笑うだけだ。
「わたしに顔をみせるのは、あなたはあまりよくないと思っているのではなくて?」
「それは、どちらでもいいかな」
見せてもいいし、見せなくてもいい。
そんな曖昧な答えだ。
巻き込むだのなんだのいっていたから、身元が割れるのは相手の方がまずいのだとブランシュは思っていた。
ブランシュ自身はすでに学園で知らぬものはいないのだから隠す必要はない。
「じゃあ、見ないわ。そちらのほうが面白いじゃない」
もしかしたら、どこかで出会えば声で気づくかもしれない。
その時のお楽しみにしておくわとブランシュは笑う。
「ところで、素敵な呼び名は考えてくれたの?」
「ああ……呼び名……」
そういえば、そんなことも言っていたなというような。そんな声色だ。
あら、この人何も考えてなかったわねとブランシュは思った。
その時、なぁと足元から声がかかる。
「ブランシュは顔を見ないだろうが、俺はみていいだろう?」
「何故?」
「俺の敵かどうか判断する」
敵だなんて大げさねとブランシュは言う。ムゥは大げさではないと跳ねた。
仕方ないわねとブランシュはムゥを抱え上げた、窓枠へとちょんとおく。
「……初めまして、幻獣殿」
射抜くような視線を互いにぶつけ合う。
ムゥを見下ろす視線は、品定めするような居心地の悪いものだ。同じような視線をムゥもまた向けているのだから何も言わない。
黒い髪に、青い瞳。怜悧な雰囲気の男をムゥは気に入らないと感じた。それは相手も同じだったらしい。
口端上げて向けられた笑みが悠然とそれを語っていた。
今すぐ、ブランシュにこいつは駄目だと言いたい。しかし、言っても何故と問われわたしの好きにするわと言われるだろうなと、今まで見てきたからこそわかる。
ムゥは会うのはいいが、余計なことを吹き込まれぬように、そして変なことに巻き込まれないよう守るのが一番だと思った。巻き込まれぬようにしつつ、首を突っ込みそうではあるが、だ。
何にせよお互いの印象はよくなかった。
「ムゥ?」
もういい? というような声色。ムゥがぴょんと窓枠から飛ぶとブランシュはそれを抱きとめた。
「顔は覚えた。害そうとすれば排除する」
「またそういう事を……ごめんなさい」
「ああ、嫌われてしまったみたいだが、俺は気にしないよ――幻獣の姫君」
「……それが私の呼び方?」
「そう」
「……かわいくないからやり直しね」
駄目かと苦笑が聞こえる。
駄目よとブランシュはすぐさま返した。
幻獣の姫君という呼び方は好きではないと思う。それはもうすでに学園の者達からあざけるように向けられる呼び方でもあるからだ。
ブランシュとしてはもっとくだけた、かわいらしい呼び方が良かったのもあるのだが。
「とりあえず返したいものも返せたしわたしは帰るわ」
「ああ、またいつでも来ると言い」
「ええ、ではまた」
散歩程度にここまで来るのは丁度良いわとブランシュは言う。
相手の姿は知らないけれど、それはそれでいいのだとブランシュは思っていた。
小さく笑み零す様を見上げて、ムゥは楽しそうだなと不機嫌そうに零す。
ブランシュはええ、楽しいわと答えた。
「だって、お友達と会っていたのよ。楽しいじゃない?」
「友達……そう、か。そうか……そう、だな」
ブランシュはあの男のことを友達だと思っていることをムゥは知る。
あちらはどう思っているのかは知らないが、なんとなく自分の心が穏やかに凪いだ。
先程まで、あの男は気に入らないという思いばかりだったのだが今はどうでもいいとさえ思えた。
ブランシュはあの男のことをなんとも思っていないのだな、という安心感が芽生えたからだ。
男としては、絶対に見ていない。その核心が心穏やかにしたことをムゥはまだ気づいていない。
まず直接的な嫌がらせはなくなったのだ。
というのも、やろうとすればムゥがそれをはじき返す。相手が怒ってきても、それはこちらにやろうとしたことを返して防いだだけだと言い張るのみだ。
けれどそういうのはパタリと止まった。
どうやら三人がちゃんと言い含めたらしい。その方法をブランシュは聞くつもりはないが静かになったのはとても良い。
ただ、誰も近寄っては来ないので一人ではあるのだが。
別段一人が嫌いでも我慢ならないわけでもない。むしろ好きなくらいだ。
しかし、ちょっとした会話もないというのもなんだかなと思う。
朝の挨拶をしても無視。朗らかに挨拶を王子達が返すと、鋭い視線が刺さる。
それは変わってない様子。が、直接的なものが無くなったのは素直にありがたい。
人の心が簡単に変わるわけでもないので、ブランシュはそれを甘んじて受け入れている。
多少、生活は変わったが大問題ではない。
ブランシュは今、ムゥを伴って歩いていた。
「どこにいくのだ?」
「窓際さんにタオルを返しにいくの。水をかけられたときに借りたのよ」
それにお礼もしなきゃとブランシュは言う。助けてもらったのなら礼を返すのは当たり前だ。
そうだとわかってはいるのだが、何か気に入らない。腑に落ちない。
てこてことブランシュの隣を歩くムゥは面白くないと思っていた。
「いるかしら、窓際さん」
「その窓際さん、というのは呼び名か?」
「そうよ。あちらの名前をわたしが知るのは良くないみたいで」
「ふん……わけありか……」
ブランシュは警戒しすぎじゃないかしら、と思うのだがムゥにしてみれば得体のしれないものだ。
自分がこちらへ来る間に合った相手。何者かわからない。
常であれば、すぐに見ることはできるがそれは制限されているのだ。まだ、この身と力と世界はなじんでいない。
カミサマより無理をすればその身は砕けますよと言われているのだ。
そして、レンガの建物へとたどり着く。
ブランシュは入口をノックし、扉をおす。どうやら今日は鍵はかかっていないようだ。
中に入ろうか、とも思ったのだが。
「中に入ってしまうと、窓際さんじゃないわね……」
窓際にいる。そして窓越しで顔をしらないからこその窓際さんじゃないと思ったのだ。
そう思えば、扉から回る気はなくなる。
そこを離れて、この前出会った窓際へ。窓は開かれており、きっと中にはいるのだろう。
その窓の高さはブランシュが背伸びをしないと中は見えない。
つまり窓際さんがその姿を見せずに、ある意味いられる場所でもあった。
「窓際さん、いる?」
返事はない。いないならそれはそれで仕方ないわとブランシュはタオルを窓際へと置いた。
それともう一つ、お礼の気持ちを込めて焼き菓子を。
それを置いた瞬間だ。
「タオルは、返さなくてもよかったんだが」
「っ!」
焼き菓子を置いて、離れた手が掴まれる。
「ここに来てくれたのは素直に嬉しいと思う」
「突然触れられたらびっくりするわ。お久しぶりね」
ああ、と笑う声。それとともに手は離れた。
脅かすなんて意地悪ねとブランシュは、楽しそうに笑う。
「顔は見せたほうがいいか?」
「何故? わたしは声だけでも楽しいわよ」
窓際さんは、壁側に身を隠している。
ブランシュがいる場所からはその顔はわからない。そうか、と窓際さんは笑うだけだ。
「わたしに顔をみせるのは、あなたはあまりよくないと思っているのではなくて?」
「それは、どちらでもいいかな」
見せてもいいし、見せなくてもいい。
そんな曖昧な答えだ。
巻き込むだのなんだのいっていたから、身元が割れるのは相手の方がまずいのだとブランシュは思っていた。
ブランシュ自身はすでに学園で知らぬものはいないのだから隠す必要はない。
「じゃあ、見ないわ。そちらのほうが面白いじゃない」
もしかしたら、どこかで出会えば声で気づくかもしれない。
その時のお楽しみにしておくわとブランシュは笑う。
「ところで、素敵な呼び名は考えてくれたの?」
「ああ……呼び名……」
そういえば、そんなことも言っていたなというような。そんな声色だ。
あら、この人何も考えてなかったわねとブランシュは思った。
その時、なぁと足元から声がかかる。
「ブランシュは顔を見ないだろうが、俺はみていいだろう?」
「何故?」
「俺の敵かどうか判断する」
敵だなんて大げさねとブランシュは言う。ムゥは大げさではないと跳ねた。
仕方ないわねとブランシュはムゥを抱え上げた、窓枠へとちょんとおく。
「……初めまして、幻獣殿」
射抜くような視線を互いにぶつけ合う。
ムゥを見下ろす視線は、品定めするような居心地の悪いものだ。同じような視線をムゥもまた向けているのだから何も言わない。
黒い髪に、青い瞳。怜悧な雰囲気の男をムゥは気に入らないと感じた。それは相手も同じだったらしい。
口端上げて向けられた笑みが悠然とそれを語っていた。
今すぐ、ブランシュにこいつは駄目だと言いたい。しかし、言っても何故と問われわたしの好きにするわと言われるだろうなと、今まで見てきたからこそわかる。
ムゥは会うのはいいが、余計なことを吹き込まれぬように、そして変なことに巻き込まれないよう守るのが一番だと思った。巻き込まれぬようにしつつ、首を突っ込みそうではあるが、だ。
何にせよお互いの印象はよくなかった。
「ムゥ?」
もういい? というような声色。ムゥがぴょんと窓枠から飛ぶとブランシュはそれを抱きとめた。
「顔は覚えた。害そうとすれば排除する」
「またそういう事を……ごめんなさい」
「ああ、嫌われてしまったみたいだが、俺は気にしないよ――幻獣の姫君」
「……それが私の呼び方?」
「そう」
「……かわいくないからやり直しね」
駄目かと苦笑が聞こえる。
駄目よとブランシュはすぐさま返した。
幻獣の姫君という呼び方は好きではないと思う。それはもうすでに学園の者達からあざけるように向けられる呼び方でもあるからだ。
ブランシュとしてはもっとくだけた、かわいらしい呼び方が良かったのもあるのだが。
「とりあえず返したいものも返せたしわたしは帰るわ」
「ああ、またいつでも来ると言い」
「ええ、ではまた」
散歩程度にここまで来るのは丁度良いわとブランシュは言う。
相手の姿は知らないけれど、それはそれでいいのだとブランシュは思っていた。
小さく笑み零す様を見上げて、ムゥは楽しそうだなと不機嫌そうに零す。
ブランシュはええ、楽しいわと答えた。
「だって、お友達と会っていたのよ。楽しいじゃない?」
「友達……そう、か。そうか……そう、だな」
ブランシュはあの男のことを友達だと思っていることをムゥは知る。
あちらはどう思っているのかは知らないが、なんとなく自分の心が穏やかに凪いだ。
先程まで、あの男は気に入らないという思いばかりだったのだが今はどうでもいいとさえ思えた。
ブランシュはあの男のことをなんとも思っていないのだな、という安心感が芽生えたからだ。
男としては、絶対に見ていない。その核心が心穏やかにしたことをムゥはまだ気づいていない。
0
あなたにおすすめの小説
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~
朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。
婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」
静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。
夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。
「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」
彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる