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最終章
どこぞの館で
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目が覚めると知らない場所でした。はい!
と、目覚めは突然。ばちっとしっかりしゃっきり!
周囲を見ればふかふかのベッドなので、扱いが悪いってことは無いみたい。調度品はセンスも質も良いものだと思う。
拉致とか久しぶりなんですけど! ちょっとテンション高くなってきた!!
と、余裕でいられるのも、私が魔術の扱いに長けているからで。普通の令嬢なら震えるかもしれない。
くるっと見回すけど、何かしら施されている気配はない。なにこれ、逃げ放題じゃない?
逆に、そうしてほしいのかもしれないけど。
連れてこられてからどれくらい時間がたってるのかなー。時間が、わかんない。
短時間なら私がいないことに、まだ誰も気付いてないかも。でもお妃教育では就寝前点呼があるから、最悪夜になればいないことはわかる。
プレッシャーに負けて失踪とか逃げた、って言われるかもしれないけど、私がそういうタイプじゃないのは殿下やデジレ様、お兄様もよくわかってる。もちろんお父様もお母様も。
私が自分でいなくなるって事はまずないと思う人達がいるから探しては貰えるだろう。
でも。
私は探して貰うのを待ってるタイプじゃないのよね!
「私が何もできない令嬢だと思ってるのかな。うん、まず……」
ドレスが動きづらい。
私はドレスを脱いで、コルセットつけた下着一枚状態。薄手のシンプルな膝丈ワンピースみたいなものだし。うん。
いや、やっぱりこれはちょっとあんまりだわ。それに見つかった時にお説教コースな服装に違いない……そう思って、もったいないなぁと思いつつ、ドレスを切った。
魔術はこういうの、便利ー。なるべく、あとで布地回収して他の何かにも使えるように。
ふわっふわの布地重ねたようなスカートは一枚、二枚と剥いでいく感じ。
上半身はどうしようなないからこのまま。
「あっ、コルセットはずそ」
そう、コルセット! ゆるくしてたけど、でもそれでもなくなると楽。
作業もはかどり、動きやすく長さも短くしたドレスを纏う。
よし。帰ろう。
そんな気持ちだったのだけど。
「ここってジャジャル家の持ち物よね……」
何もせずに帰るのは、何かもったいないかなと思ってしまう。最終的に、何かまずいことが起きれば魔力どーんで混乱してる間に姿消して空に逃げてしまえばいい。
と、私は思っている。
脱出は、何かよーっぽど、時限系か条件系のの魔術が仕込まれてない限りは可能のはず。そんなのあってもどうにかするけど。
私をここに連れてきたのはカロン様だ。
ああ、でも。でも本当に――カロン様、なのかな。何故そう思ったのかわからないけど、なんとなく。
なんとなく、そんな気持ちになった。
何にせよ、折角敵陣にご招待いただいたのだから、やれることはやっちゃおう。
姿を消して、屋敷の中を歩き回る。
ここにいる人たちの会話を聞けるだけでも何かになるかもしれないし。
脱出タイミングは、私がいないってわかったところにしよう。とりあえず、ベッドのシーツの下にもふもふと枕とか切り捨てた布を詰め込んで。人型にする。
よし、れっつごー!
その前に、ここは何階なのか。窓によると、一階ではないのがわかる。二階……ううん、三階かなー。
綺麗に整えられた庭があって、門もわかる。どこか郊外って感じでないとわかるのは、街並みが見えたからだ。それに、このお庭、なんか見た覚えがあった。
ということは、おそらく王都内。まだ明るいし、ほとんど時間がたってないか、一日以上たっているか。どっちかな!
それは脱出すればわかる事よね。
そっと扉を開けて廊下にでる。うーん、誰もいない。
右を見ても左を見ても、誰もいない。人気が、ない。
こういう時って何かあるとすれば最上階、もしくは地下って感じかな。
地下か。うん、地下しかないかな。
行く先を決めて、私は自分の姿を見えなくする魔術を紡ぐ。
間違いなく見えてないはず!
足音をさせないためにふわっと飛んで、移動開始。うろうろしていると階下への階段を見つけてそっと降りていく。
階下で長い廊下を右左とみて、右側のほうが開けてる感じがしたので向かうと、玄関ホールだった。緩いカーブを描いて続く階段。
さすがに一階には人がいた。執事やメイドというところ。
けど、家人っぽい人はいない。しばらくそこで様子を窺っていると、ワゴンに色んなものを乗せたメイドさんが、執事と一緒にどこかへ向かっている。
うん、あれどうみても一人だけの量じゃないし、グラスも複数あった。
私はそーっとその後をついていくことに。
ある扉の前で止まって、執事が声をかける。入室を許す声がして、扉が開いた。
その中に数人、姿が見える。全員が視得たわけじゃないけど、バルトロメ様がいた。
そのほかは、貴族で見覚えがあるけどどちらかはわからない。
すぐ、扉は閉じられた。あの中に入っていくのは、さすがにと思って入らなかったのだけど。
扉の外でも、音は拾える。
私は執事とメイドが出てくるのをその場で待った。しばらくして準備を終えたのだろう。
外に二人が出てくる。
ぱたんと扉が閉じられた。
「大急ぎで準備しましたが、大丈夫でしょうか……」
「簡単につまめるものだからまた呼ばれるかもしれない。客人をもてなせる料理の用意を伝えなさい」
「はい」
「それから……旦那様とカロン様の食事の用意も。食べやすい者を」
「はい。お二人とも、お医者様に見ていただかなくてよろしいのでしょうか」
そんな、会話が聞こえてきて。ここはジャジャル家、もしくはその家の持ち物で間違ってない。
けど、お医者様? ということは体調が悪いのかしら。
じゃあ、あのカロン様は?
……一体どういう事なのかな、と。いろんな疑問が持ち上がってきた。
と、扉の向こうから声が微かに漏れてくる。
そっと扉に触れて、集音。といっても、私に直接届くだけの音を拾っていく。
楽しげな談笑。近況報告、情報交換といったところでとりたてて反応するような事がない。
うーん……これ以上いても、無駄かしら。
そう思った時、気になる言葉が聞こえた。
と、目覚めは突然。ばちっとしっかりしゃっきり!
周囲を見ればふかふかのベッドなので、扱いが悪いってことは無いみたい。調度品はセンスも質も良いものだと思う。
拉致とか久しぶりなんですけど! ちょっとテンション高くなってきた!!
と、余裕でいられるのも、私が魔術の扱いに長けているからで。普通の令嬢なら震えるかもしれない。
くるっと見回すけど、何かしら施されている気配はない。なにこれ、逃げ放題じゃない?
逆に、そうしてほしいのかもしれないけど。
連れてこられてからどれくらい時間がたってるのかなー。時間が、わかんない。
短時間なら私がいないことに、まだ誰も気付いてないかも。でもお妃教育では就寝前点呼があるから、最悪夜になればいないことはわかる。
プレッシャーに負けて失踪とか逃げた、って言われるかもしれないけど、私がそういうタイプじゃないのは殿下やデジレ様、お兄様もよくわかってる。もちろんお父様もお母様も。
私が自分でいなくなるって事はまずないと思う人達がいるから探しては貰えるだろう。
でも。
私は探して貰うのを待ってるタイプじゃないのよね!
「私が何もできない令嬢だと思ってるのかな。うん、まず……」
ドレスが動きづらい。
私はドレスを脱いで、コルセットつけた下着一枚状態。薄手のシンプルな膝丈ワンピースみたいなものだし。うん。
いや、やっぱりこれはちょっとあんまりだわ。それに見つかった時にお説教コースな服装に違いない……そう思って、もったいないなぁと思いつつ、ドレスを切った。
魔術はこういうの、便利ー。なるべく、あとで布地回収して他の何かにも使えるように。
ふわっふわの布地重ねたようなスカートは一枚、二枚と剥いでいく感じ。
上半身はどうしようなないからこのまま。
「あっ、コルセットはずそ」
そう、コルセット! ゆるくしてたけど、でもそれでもなくなると楽。
作業もはかどり、動きやすく長さも短くしたドレスを纏う。
よし。帰ろう。
そんな気持ちだったのだけど。
「ここってジャジャル家の持ち物よね……」
何もせずに帰るのは、何かもったいないかなと思ってしまう。最終的に、何かまずいことが起きれば魔力どーんで混乱してる間に姿消して空に逃げてしまえばいい。
と、私は思っている。
脱出は、何かよーっぽど、時限系か条件系のの魔術が仕込まれてない限りは可能のはず。そんなのあってもどうにかするけど。
私をここに連れてきたのはカロン様だ。
ああ、でも。でも本当に――カロン様、なのかな。何故そう思ったのかわからないけど、なんとなく。
なんとなく、そんな気持ちになった。
何にせよ、折角敵陣にご招待いただいたのだから、やれることはやっちゃおう。
姿を消して、屋敷の中を歩き回る。
ここにいる人たちの会話を聞けるだけでも何かになるかもしれないし。
脱出タイミングは、私がいないってわかったところにしよう。とりあえず、ベッドのシーツの下にもふもふと枕とか切り捨てた布を詰め込んで。人型にする。
よし、れっつごー!
その前に、ここは何階なのか。窓によると、一階ではないのがわかる。二階……ううん、三階かなー。
綺麗に整えられた庭があって、門もわかる。どこか郊外って感じでないとわかるのは、街並みが見えたからだ。それに、このお庭、なんか見た覚えがあった。
ということは、おそらく王都内。まだ明るいし、ほとんど時間がたってないか、一日以上たっているか。どっちかな!
それは脱出すればわかる事よね。
そっと扉を開けて廊下にでる。うーん、誰もいない。
右を見ても左を見ても、誰もいない。人気が、ない。
こういう時って何かあるとすれば最上階、もしくは地下って感じかな。
地下か。うん、地下しかないかな。
行く先を決めて、私は自分の姿を見えなくする魔術を紡ぐ。
間違いなく見えてないはず!
足音をさせないためにふわっと飛んで、移動開始。うろうろしていると階下への階段を見つけてそっと降りていく。
階下で長い廊下を右左とみて、右側のほうが開けてる感じがしたので向かうと、玄関ホールだった。緩いカーブを描いて続く階段。
さすがに一階には人がいた。執事やメイドというところ。
けど、家人っぽい人はいない。しばらくそこで様子を窺っていると、ワゴンに色んなものを乗せたメイドさんが、執事と一緒にどこかへ向かっている。
うん、あれどうみても一人だけの量じゃないし、グラスも複数あった。
私はそーっとその後をついていくことに。
ある扉の前で止まって、執事が声をかける。入室を許す声がして、扉が開いた。
その中に数人、姿が見える。全員が視得たわけじゃないけど、バルトロメ様がいた。
そのほかは、貴族で見覚えがあるけどどちらかはわからない。
すぐ、扉は閉じられた。あの中に入っていくのは、さすがにと思って入らなかったのだけど。
扉の外でも、音は拾える。
私は執事とメイドが出てくるのをその場で待った。しばらくして準備を終えたのだろう。
外に二人が出てくる。
ぱたんと扉が閉じられた。
「大急ぎで準備しましたが、大丈夫でしょうか……」
「簡単につまめるものだからまた呼ばれるかもしれない。客人をもてなせる料理の用意を伝えなさい」
「はい」
「それから……旦那様とカロン様の食事の用意も。食べやすい者を」
「はい。お二人とも、お医者様に見ていただかなくてよろしいのでしょうか」
そんな、会話が聞こえてきて。ここはジャジャル家、もしくはその家の持ち物で間違ってない。
けど、お医者様? ということは体調が悪いのかしら。
じゃあ、あのカロン様は?
……一体どういう事なのかな、と。いろんな疑問が持ち上がってきた。
と、扉の向こうから声が微かに漏れてくる。
そっと扉に触れて、集音。といっても、私に直接届くだけの音を拾っていく。
楽しげな談笑。近況報告、情報交換といったところでとりたてて反応するような事がない。
うーん……これ以上いても、無駄かしら。
そう思った時、気になる言葉が聞こえた。
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