皇子の憂鬱

ナギ

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2:憂鬱の本当の始まり

オウジの学校

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 晩餐会の次の日。
 王様の居城について三日後のこと。とうとう学校に行く日になった。
 俺は楽しみで、そわそわとしている。
 他国からの留学、そして皇族。おまけに王様が俺に求婚している。
 ということから、俺の扱いは国賓なのだが、かしこまられるのは嫌だ。
 皇族というのは隠せないけど、王様が俺に云々というのはあまり広めないようにしてもらっている。
 俺は半年したら国に帰るし。
 けど、ミアさんとかヒースさんとか。よく接する人たちには隠しようがない。
 皆は王様は良い人ですよと言う。けれど、俺の心が簡単にそうならないのもわかっているから変なことは言わないでくれた。
 王様は色々言うのだけれど、周囲の人達は生ぬるい目で見ている、様な感じだろうか。
 ミアさんの他にも部屋を掃除してくれる女中さんたちとはくだけてきたけど、それも人目がないところだけだ。
 お菓子とかそっと部屋に置いといてくれるのは地味にうれしい。
 で、学校の話だ。
 学校は、この居城の端のほうを利用して開かれている。図書室なんかも自由にどうぞという事だ。
 というのも、俺が留学したその学校は国のもので一部の優秀な生徒のみが通えるという。
 それも、一分野突出で構わないらしい。そういう意味なら、俺もオッケーだろう。
 基本的に授業はあるようでないと説明を受けた。
 好きなことを調べ、学ぶ。教えるものが必要ならば手配する。そういった感じらしい。
 そして年齢や出自も関係ない。そんな場所。
「ララトアっていいます。どーぞよろしく。出身は嘆きの『花鳥の国』で皇子ですが、そういうの気にしないでください」
 で、一応、最初は紹介ってことで教室に入った。名乗らず突然、知らない人が増えたらびっくりするだろうし。
 10人もいない。
 年齢も下は10歳くらい、上は大人まで。なんだこれって感じ。
 けど、面白そうだ。興味あるような、ないような。そんな視線を俺を感じている。
 監督責任者だという立派なひげのちょっとよぼよぼ気味のじぃさん先生。
 好きにしなさいと、挨拶終われば放置だ。
 好奇の視線は遠慮なく向けられている。俺はそれを感じて、何か聞きたいことあったら個別できてと紡いだ。
 で、適当な席に座ると同時にずずいと一人やってくる。年の頃は俺と同じか少し上くらい、赤毛の青年だった。
「ララトア君、だったよね。俺はシェラ、よろしく」
「よろしく」
「専攻はどのへんの分野? 俺は国の神話と歴史の分野なんだけど」
「あ、ちょっとかぶるかも。俺も歴史。でも建造物とか、そういう方向」
「なるほど! じゃあ色んな話できそうだな。他国の話ってやっぱその国の人から聞きたくてさ」
 嘆きの『花鳥の国』には神話がいろいろあるんだよねとシェラは楽しそうだ。有名なのは知ってる、といくつか挙げてくれる。
 俺は知っている限りなら、という。
 かわりにこの大遺跡たる居城を少し案内してもらうことになった。
 色々話していると、シェラは博識だなと思う。得た知識から自分でも考察してみせる。
 それは時に脱線するが、なかなか新鮮で面白い。その考えはなかったなと俺も思う事がある。
「いやー、ララトア君さ、国の名前でここにきたおのぼりさん系かと思ってたんだけど」
「ああ、やっぱりそういう……」
「ごめんごめん、本当に優秀だったな。俺もいい刺激を貰ってる、ありがとう」
 実際、そういった輩は今までいたらしい。
 他国から留学という名目で、実際は王様に取り入ろうとしている、というような。
「ララトア君はそんなことないんだろ?」
「ないねー、ほんとない。まったくないよ」
「あ、でも王様が嘆きの『花鳥の国』に行ったときに仲良くなって誘われたんだっけ?」
 えっ、そういう事になってるの?
 俺はうん? と首をかしげ、シェラに尋ねた。
 俺の噂みたいなものがあるなら、教えて欲しいって。
「うーん、王様がララトア君を気に入って、君の学びたいものが此処にあるって聞いたから留学できるようにとりはからったらしい、って感じかな。確かに、学びたいものがあったね」
「そう。この遺跡に来たかったんだ……だからもう、毎日万歳」
「はは! 確かに。学べるだけ学んで帰ったらいいよ」
「そのつもり。あ、でも俺の他には留学生っていない、よな? 他国からって珍しいのか?」
「そんなに珍しいわけではないけど最近いなかったから……勉強しにきたわけじゃないやつは帰ってもらってるし」
 そういう留学生はだいたいシェラか、他の生徒が追い出したりしたのだがララトア君は大丈夫そうだと笑っていた。
 なんだこの学校、思ってたより恐ろしい場所なんだなと俺は思ったのでした。
 遊びではこれない、精鋭の学校だ。
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