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夜闇の精霊の話
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ギルドとゼノーはそれから、私にいろいろな話をしてくれた。
夜闇の精霊の話だ。
夜闇の精霊は、昔はたくさんいたのだと言う。
けれど、その数は人々が光を好むようになって減っていった。
精霊とは求められなければ、消えて行ってしまう存在なのだと私は知った。
「たとえば、光」
「光は無いと困る。生きるために与えられる、明るさとしての光」
「心にともる光」
「炎も、求められる。生活のために使う炎、心にともる炎は進むためのもの、やる気、前向き」
「けれど反面、危険なもの。苛烈に燃え上がれば」
何もかもを飲み込んで焼きつくして、失わせることもある。
二柱はそう言って、それでも人は炎を拒絶しないと言う。
「風も、水も、地も、緑も」
「反面があっても求められるのだよ」
けれど夜闇は、求められなくなった。
それゆえに数が減っていったと言う。
「我ら三柱。一時は二柱、ルドヴィガは滅び、生じ、永らえたけれど不完全なのだよ」
「不完全だからこそ、存在していられるともいう。あれは夜闇の一番奥深い衝動を失ってしまったのだ」
「違う、失ってはいない、忘れている」
「忘れているのだから、失っているのと同じ」
一番奥深い衝動を失って、忘れてしまった。それはとても、まずいのではないかと私は思う。
けれど二柱は、それで構わないのだと笑った。
「あれがあの衝動を持つと言うことは滅びだ。我らもそれは少なからずあるが」
「そう、少なからずあるのだが、我らはそれより静を求める」
「それでいいの?」
それでいいと、声がそろう。
夜闇の精霊は、不思議ねと私は思う。
私も、こうなれるのだろうか。
なるのだろうか。
そもそも精霊に成るというのがよくわからない。
「私が精霊にというけれど本当に成れるの?」
私には不安がある。
私はルドヴィカが望むのならそうなれたらと思うのだけど。
自信がないのだ、自分に。
本当に、成れるのか。
成れなくて、呆れられて、捨てられたら。
怖くて仕方ない。
私のこの不安も見透かしているのかもしれないけれど、言葉にして問うのも怖い。
「いいよ、そのままで」
「間違っていないよ」
迷いも、不安も。
嫌悪しなくていい、怖がらなくていいとギルドとゼノーは私に囁く。
その囁きはとても、甘い。
とろけて沈んでいきそうだと私は思う。
二柱は優しい。
見つめられる事に居心地の悪さはなかった。
ギルドとゼノーと一緒にいることは嫌いではない。
もちろん、ルドヴィカと一緒にいることも。
早く戻ってこないかなと私は少し、寂しさを感じていた。
夜闇の精霊の話だ。
夜闇の精霊は、昔はたくさんいたのだと言う。
けれど、その数は人々が光を好むようになって減っていった。
精霊とは求められなければ、消えて行ってしまう存在なのだと私は知った。
「たとえば、光」
「光は無いと困る。生きるために与えられる、明るさとしての光」
「心にともる光」
「炎も、求められる。生活のために使う炎、心にともる炎は進むためのもの、やる気、前向き」
「けれど反面、危険なもの。苛烈に燃え上がれば」
何もかもを飲み込んで焼きつくして、失わせることもある。
二柱はそう言って、それでも人は炎を拒絶しないと言う。
「風も、水も、地も、緑も」
「反面があっても求められるのだよ」
けれど夜闇は、求められなくなった。
それゆえに数が減っていったと言う。
「我ら三柱。一時は二柱、ルドヴィガは滅び、生じ、永らえたけれど不完全なのだよ」
「不完全だからこそ、存在していられるともいう。あれは夜闇の一番奥深い衝動を失ってしまったのだ」
「違う、失ってはいない、忘れている」
「忘れているのだから、失っているのと同じ」
一番奥深い衝動を失って、忘れてしまった。それはとても、まずいのではないかと私は思う。
けれど二柱は、それで構わないのだと笑った。
「あれがあの衝動を持つと言うことは滅びだ。我らもそれは少なからずあるが」
「そう、少なからずあるのだが、我らはそれより静を求める」
「それでいいの?」
それでいいと、声がそろう。
夜闇の精霊は、不思議ねと私は思う。
私も、こうなれるのだろうか。
なるのだろうか。
そもそも精霊に成るというのがよくわからない。
「私が精霊にというけれど本当に成れるの?」
私には不安がある。
私はルドヴィカが望むのならそうなれたらと思うのだけど。
自信がないのだ、自分に。
本当に、成れるのか。
成れなくて、呆れられて、捨てられたら。
怖くて仕方ない。
私のこの不安も見透かしているのかもしれないけれど、言葉にして問うのも怖い。
「いいよ、そのままで」
「間違っていないよ」
迷いも、不安も。
嫌悪しなくていい、怖がらなくていいとギルドとゼノーは私に囁く。
その囁きはとても、甘い。
とろけて沈んでいきそうだと私は思う。
二柱は優しい。
見つめられる事に居心地の悪さはなかった。
ギルドとゼノーと一緒にいることは嫌いではない。
もちろん、ルドヴィカと一緒にいることも。
早く戻ってこないかなと私は少し、寂しさを感じていた。
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