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第一章
1.異界渡りは突然に
1日の終わりに、350ミリのビールを一缶だけ開けるのが、私の至福の時間。趣味もこれと言って無いし、自分のために使える時間も多くない。私の宝物を守るために、精一杯の現状だけど、それもそれほど悪くない。
王子さまを待ってメソメソするのなんか、時間の無駄だと気づいたから。幸せはもう手の内にあるのだから。
無い物ねだりして、今ある幸せが見えなくなること、それは私の両親と変わり無いって気づいたから。
■
最初に少しだけ私の話をしようと思う。
物語の始まりは10年前。私、春日居 樹璃16歳の時だった。
私の両親の仲は完全に冷えきっており、それぞれが別の相手と家を持ち、私はマンションに一人きりで住んでいた。せめてもの世間体で、通帳に定期的に振り込みがあることだけが、私に両親の存在を知らせていた。
そんな荒んだ環境で、一人っ子の私は誰にも心開けなかった。ただ淡々と死んだように生きる毎日。
ある日気まぐれに、少年を拾った。同い年か、少し下の。
記憶を失っているという彼には、自分しか頼る人がいない。それは歪な優越感だった。
二人はかけた隙間を埋めるように互いを必要としていく。もはやそれは依存だった。
でも、そんな日は長く続かない。ある日突然、彼がいなくなったのだ。
彼が私に残したのは、一つだけ。
黒い髪に蒼い眼の愛しい愛しい我が子。
■
ガチャ
ドアの開く音がした。
ぼんやりとした思考を止めて、立ち上がる。
「澪璃、おかえり」
玄関まで出迎えたら、彼女は玄関に腰掛けて俯いていた。
人種が多様化しているとはいえ、蒼い瞳の澪璃は、噂の標的になりやすいらしい。ましてや、樹璃はシングルマザーだ。あることないこと言われているらしいことは気づいていた。それでも何とかやっていけていると思っていたのだが…。
「もう嫌だもうこんな世界にいたくない…」
澪璃からこぼれた言葉に反応するように、彼女の身体が光り始めた。
「えぇぇぇ?な、何これ?」
慌てた私は、咄嗟に澪璃を抱き締める。だんだん強くなる光は、私の視界を奪った。
グラリと脳が揺れた気がした。
光が落ち着いたのを感じ、ゆっくりと目を開ける。
「ここ、どこ……?」
その問いに答えられる者は、どこにもいなかった。
王子さまを待ってメソメソするのなんか、時間の無駄だと気づいたから。幸せはもう手の内にあるのだから。
無い物ねだりして、今ある幸せが見えなくなること、それは私の両親と変わり無いって気づいたから。
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最初に少しだけ私の話をしようと思う。
物語の始まりは10年前。私、春日居 樹璃16歳の時だった。
私の両親の仲は完全に冷えきっており、それぞれが別の相手と家を持ち、私はマンションに一人きりで住んでいた。せめてもの世間体で、通帳に定期的に振り込みがあることだけが、私に両親の存在を知らせていた。
そんな荒んだ環境で、一人っ子の私は誰にも心開けなかった。ただ淡々と死んだように生きる毎日。
ある日気まぐれに、少年を拾った。同い年か、少し下の。
記憶を失っているという彼には、自分しか頼る人がいない。それは歪な優越感だった。
二人はかけた隙間を埋めるように互いを必要としていく。もはやそれは依存だった。
でも、そんな日は長く続かない。ある日突然、彼がいなくなったのだ。
彼が私に残したのは、一つだけ。
黒い髪に蒼い眼の愛しい愛しい我が子。
■
ガチャ
ドアの開く音がした。
ぼんやりとした思考を止めて、立ち上がる。
「澪璃、おかえり」
玄関まで出迎えたら、彼女は玄関に腰掛けて俯いていた。
人種が多様化しているとはいえ、蒼い瞳の澪璃は、噂の標的になりやすいらしい。ましてや、樹璃はシングルマザーだ。あることないこと言われているらしいことは気づいていた。それでも何とかやっていけていると思っていたのだが…。
「もう嫌だもうこんな世界にいたくない…」
澪璃からこぼれた言葉に反応するように、彼女の身体が光り始めた。
「えぇぇぇ?な、何これ?」
慌てた私は、咄嗟に澪璃を抱き締める。だんだん強くなる光は、私の視界を奪った。
グラリと脳が揺れた気がした。
光が落ち着いたのを感じ、ゆっくりと目を開ける。
「ここ、どこ……?」
その問いに答えられる者は、どこにもいなかった。
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