守護者の乙女

胡暖

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1章 貴族の養子

14.王族

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 降臨祭は1週間続くらしい。
 保護者《ユーハン》の仕事の都合で、エヴァ達は祭りの3日目に行くことになっていた。

「せっかく降臨祭という王族に由来のある祭りに行くんだ。これを機会に王族についての知識を入れておくのは悪くないだろう」

 そう言うユーハンにより、今日の授業は、王族の成り立ちになった。

「我が国の王族はもともと、虹の橋を渡った神族の国の青年と、人間の女性が結ばれたことから始まった。そこからは、神族の血を引く子供が、代々王となり、国を治めている」

ここまでは、エヴァも既に習った話だったので、ふむふむと相づちををうつ。

「王族は毎年この時期----初夏に、虹の橋を渡り、神族に参拝しているが、これは神族に対してのご機嫌伺きげんうかがいと同時に、年頃の王女がいる場合は、神族の青年とのお見合いを兼ねている」
「……お見合い?」
「あぁ。我が国の王は基本的に、神族の血を引いていないといけない。昔からの習わしでな。だから、在位中の王の息女を神族に嫁がせ、その王女が産んだ長男を、我が国に送り返――――もとい、授けていただく。その子どもが、次の王となる。こうして続いてきた」

エヴァは、へぇっと目を輝かせ、身を乗り出して言った。

「じゃぁ、王様は本当に神様の血を引いているんだね」
「あぁ」

 ユーハンは頷いて、一度口をつぐむ。
 厳しい表情で、エヴァに告げた。

「しかし、現王陛下、マクシミリアン様は、前王の息子だ」
「…………?あれ?次の王様はお孫さんになるんじゃないの?」

 ユーハンは頷く。

「……ここから先は、貴族社会では暗黙あんもくの了解となっていることだが、万が一、敵対派閥てきたいはばつに聞かれれば不敬罪ふけいざいで首が飛ぶ。絶対に外で口にするな」

 急に物騒ぶっそつな話になり、エヴァはたじろぐ。しかし、ユーハンに強い視線で見つめられ、おずおずとエヴァは頷く。それを見て、ユーハンは言葉を紡いだ。

「そう、現王は、神族の血を引かぬ王。……口さがないものは簒奪さんだつの王と呼ぶ」

 エヴァは目を見張った。

「もともと、次の王が成人なさる前に、前王が崩御ほうぎょした場合に限り、王の子息が、次代の王が大きくなるまでの中継ぎ役として、その位につくことはあった」
「ホウギョ?」
「亡くなることだ」

あぁ、とエヴァは頷く。ユーハンは、話を続ける。

「しかし、現王は、前王崩御によって即位した後、前王の娘で、神族にとつがれたキルスティ王女の子供を待つことなく、自身の子息を皇太子として宣言した。それだけではなく、自身の娘を神族に嫁がせることなく、有力貴族に降嫁こうかさせる腹積はらづもりのようだ」

難しい話しになってきた。エヴァには、その重要さがよく分からなくて首をかしげる。

「……?それはいけないことなの?」

ユーハンは重々しく頷いた。

「中継ぎではなく、正統な王として、マクシミリアン様が玉座に座ることをよく思わない貴族は多い。それだけでなく、皇太子として、自身の息子を指名するとは……。受け入れられない貴族が殆どだ」

エヴァは、 まだよく分からなくて、あいまいに頷く。ユーハンは、その様子を見て、さらに詳しく説明してくれる。


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説明回で、すみません。
分かりにくいかな…。長くなったので分けました。
もう少し続きます。
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