世界に蔑まれた黒の転移者 -拝啓-母さん、僕はこの異世界を滅ぼすことにしました。-

第一章 理想

第４話 ギフト(gift)

異世界に転移することを決めた僕には理由があった。

母さんの手紙にあった“自分を信じて強く生きなさい”その約束を守るために。

球体が僕に話しかける。

「君を送る世界は魔法やスキルと言う概念が存在する世界だ。何の力も持たない君をそのまま送ってしまうと君そのものが異分子として綻びの原因になりかねない」

「そこで君に私からギフトを与えよう」

どうやら魔法やスキルのある世界で僕のような何の力も持たない普通の人間が存在する事自体がイレギュラーであり世界の綻びになりえるという事らしい。

『ギフトっていったい何なんですか？』

「ギフトとは転移者に与えられる特殊な力の事だ。あるものは大岩を穿つ力を、あるものは炎さえも凍てつかせる力を操る、人それぞれ与えられるギフトの力は異なる。」

話を聞いて少し心躍る自分がいた。ゲームや漫画の世界でしか聞いたことがないような力が自分にも使えるようになるのだ。

『僕にはどんなギフトがもらえるんですか？』

「ギフトは送られる人物の特性により変化する。どんな力を与えられるかは転移してみなければわからない。」

『送られる人物に影響する？』

「ギフトが送られる人物の深層心理に眠る渇望が大きく影響する。その為私にもどんなギフトが与えられるかはわからないのだ。」

話を聞く限りどうやら与えられる力は選ぶことなどはできないらしい。まるで“ソシャゲのガチャ”みたいだ。

「ではこれから君を転移させる。生きるために必要な知識と言語に関しても問題が無いように君の記憶に転移先の言語情報を追加しておこう」

僕が心配していたことも問題なさそうだ。

『最後に質問させてください。』

「何を聞きたい」

『本当に僕は自分の好きに生きていいんですよね？』

世界を救う？魔王を倒す？ゲームや漫画にありがちな設定だが、なにか目的があるなら正直めんどくさいと感じていた。

「何もなすことはない。君は世界に無数あるピースの一つに過ぎない。君の思うがまま自由に過ごしたらいい」

それを聞いて僕は安堵した。

「では、君を新たな世界に転移させる。新たな人生に幸あらんことを」

その言葉を残すと球体は消え、あたりは元の暗闇に戻る。そして瞬きをした瞬間、目の前の闇の世界から一変し全く別の場所に僕は立っていた。