世界に蔑まれた黒の転移者 -拝啓-母さん、僕はこの異世界を滅ぼすことにしました。-

第一章 理想

第１３話 ギルドランク➀

僕は井戸から水を汲み顔を洗った。昨日の大掃除から一夜明け清々しい朝を迎えていた。今日は昨日計画を立てた通り、魔晶石を換金して必要な生活用品を揃えるつもりだ。

『ベットに敷く布団は欲しいよなー』

固い床に寝ていたせいで体中がガチガチになっている。安眠するためには柔らかい寝具は必要不可欠だ。

パパっと身支度を済ませ村に向かう。

『おっと、イザールに言われた通りフードかぶっとかなきゃ』

イザールが別れ際に話していた事を思い出しフード付きのマントを羽織る。フードは出来るだけ目深に被っておこう。

『コロ！今から出かけるけど人に見られないように気を付けながらついてきて！』

「お任せください！」

万が一モンスターに遭遇してしまった場合コロがいないと対処できない。念のためコロには村の入り口まで隠れながらついて来てもらう事にした。村までの道のりは結構遠い。だが今まで都会の無機質な風景に慣れていた僕にとってはすべてが新鮮だった。

見たこともないような植物や生き物が、ここが別の世界であることを改めて実感させる。

『ここで静かに暮していこう』

僕は誰に話すでもなく呟いた。

ー しばらく歩くと村が見えてきた。

(ちょっと行ってくる。コロは人に見られないように待機しておいて)

(わかりました！)

コロと別れ僕は村に入った。まずは昨日お世話になった老神父の所へ行くことにした。家を借りているお礼もかねて村の事を色々と教えてもらおうと考えていた。

村の外れにその小さな教会は立っている。昨日の騒動がまるで嘘だったかのように今は静かだ。
教会の扉を開けようとするとちょうど扉が開き中から老神父が出てきた。

「おーっ！昨日の御仁か！」

『こんにちは！昨日はお世話になりました！』

『そういえばまだ名乗っていませんでした。僕はソラといます。改めてよろしくお願いします。』

「ソラ殿か良い名じゃな。わしはこの教会で神父をやっとるブロンじゃ。こちらこそよろしくな。ところで今日はどうしたんじゃ？」

僕は、魔晶石の換金と生活用品を買いに来たことを告げた。

「布団は綿が高価じゃからのー。ゴブリンくらいの魔晶石では買えんじゃろうな」

『そ、そんな。今日も床で寝るのか…』

「それなら寝床用の藁とその上にかぶせるシーツを購入すると言い。床で寝るよりかは幾分ましじゃろう」

『なるほど！試してみます！ありがとうございます！』

「よいよい、わしはこれからギルドに用があるのじゃが一緒に来なさるか？」

『ギルドにですか？』

「昨日の魔晶石を換金するならギルドに行かなければならんからの」

そういえば昨日イザールが魔晶石はギルドで換金できると言っていた。

『ぜひご一緒させてください！』

「そうか、では行こうかの」

僕はブロン神父の後に続きギルドまでの道すがら道具屋や市場など生活用品を購入する場所を教えてもらいながらギルドへと足を運んだ。

「ここがギルドじゃ。わしはギルド長に用があるからここでな」

『ありがとうございました！ブロン神父！』

ブロン神父と別れた僕はギルドに入る。体格のいい世紀末のような人たちがたむろっているかのようなイメージを持っていたが中は清潔感があり、カウンターに受付の女性が立っている。冒険者であろう人たちは壁に貼られた紙を見ているが、おそらく依頼が壁に貼られているんだろう。

僕はカウンターに向かった。

「こんにちは！冒険者ギルドレーメ村支部へようこそ！本日はどのようなご用件でしょうか？」
ちんまりした受付嬢が満面の笑みで僕に話しかけてきた。

『えっと、これを換金したいんですけど。』

「魔晶石の換金ですね！かしこまりました！登録証はお持ちですか？」

『登録証？』

僕はちょっと焦る。魔晶石を売るには登録証と言うモノが必要らしい。あいにく僕はそんなもの持っていない。すると受付嬢は、

「換金は初めての方ですか？コチラで登録証の発行もできますのでご安心ください。」

なんという神接客。元コンビニ店員の俺も見習わなくちゃいけないな。

『じゃあ登録証の発行もお願いします。』

「わかりました！まずはコチラの用紙にサインをお願いします」

僕は渡された用紙に自信の名前と住んでいる場所を記入する。記入が終わり受付嬢に渡す。

「確認させていただきますね！…ハイ！問題ありません！」

「それではソラさん、こちらの魔力球に触れてもらえますか？」

『魔力球？』

目の前に水晶玉のような魔力球と言うモノが差し出された。

「魔力球は人が持つ魔力や能力値によって光るんです、それを基準にランク付けがなされます。」

「色は下から白⇒青⇒緑⇒黄色⇒赤の順でランクが上がっていきます。赤の上もあるんですが、それは伝説の輝きの勇者しか光らせた人物はいないそうです」

なるほど。魔力球の光る色でその人物の力を計るわけか。

「それではソラさん、魔力球に触れてください。」

僕はドキドキしながら魔力球にそっと触れてみた。曲がりなりにも転移者だしちょっと自分が特別な人間かもしれないと期待してしまう。

僕は深呼吸をするとそっと魔力球に触れた。