かたどる(仮題)

片坂 果/千曲結碧(他)

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試し読み、若しくは予告(第一話)

(E-000)

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 夜。

 湿った風のような音が聞こえ、両の手首と足首に重量を感じたので目を開くと若い女性が僕に覆いかぶさるようにして身体を拘束していた。

 彼女の体温が異様に冷たい所為で本当に枷を着けられている気分になる。赤らめた端麗な顔は恍惚としていて、暗くてもハッキリと見える眠たそうな眼に収まった虹彩は常夜灯にしているシーリング・ライトで逆光になっているのにも拘らずギラギラと肉食獣のように潤んでいた。

 ラヴ・コメディ系の娯楽作品で散見する事象であると記憶しているけれど実体験と化している現状はそんな生易しい快楽では決してなく、寧ろホラーだとか推理ドラマの殺人シーンに近い凄惨な恐怖以外の何物でもない異常だった。

 四肢は彼女の所為で身動きが取れなかったのでせめてもの抵抗として収縮し使い物にならない臆病な声帯に失望しながら首を少し横に動かすことで感情から逃れようとした。成功はしたけれどもそれは呼吸音一つ程度で、手首が解放された代わりに両頬を掴まれてしまい強制的に正面を向かされてしまった。

 視界が彼女で埋め尽くされて、唾液が頬骨のあたりに落ちる。顔が引きつるのが嫌味なくらいにわかった。彼女は如何してか悲しそうな顔をしていた。

 そして口づけをされた。捩じ込まれた舌が口内をかき混ぜるように這いまわっていて、全身の力を凄まじい勢いで奪っていった。している間、温かい水が目の横を伝っていた。泣いていたのかも知れない。冷えた雫が髪辺りを少し掠めていたから彼女も同じだったのかも知れなかった。

 暫くすると如何してか身体が自由に動かせるようになった。水中にいる感覚が全身を包んでその何かを沢山呑み込んだ。呑んでいくに連れ全身に激痛が走り、紛らわせるために我武者羅に手足を振り回した。

 何かにぶつかる。閉じ込められている?光が見えた気がした。その方向へ必死で向かう。

 弾力性のある膜を裂く音がして、唐突に視界が開けた。そして口一杯に液状の何かがせりあがり決壊したようにそれを吐き出した。そこにあったものを削り取ったと錯覚してしまうくらいにどす黒い液体だった。

 意識が薄れ始めている。

 助けを呼ぼうとしたけれど呼吸さえ儘ならなかった。そのまま肘から崩れ落ちるように布団に顔を埋める。

 思考と感覚のすべてが無に帰していく。

 眠りに落ちるように瞳を閉じた。
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