小料理 タヌキ屋 3

まんまるムーン

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 その日は嫌な予感がしていた。その予感は的中し、夕方宅配が届いた。かなり巨大な箱だ。配達員さんも運ぶのが大変そうだった。

 まただ…。

差出人は佐伯美穂。私のママ友だ。
今、家族で北海道旅行に行っている。彼女が旅行に行くと必ず、高価なお土産をよこしてくる。

ハワイに行ったときは、ハワイ限定のブランド品のトートバッグだった。ママ友みんなでお揃いを持ちたかったそうだ…。韓国に行ったときは大量の高麗人参と高級かたつむりパック。シンガポールに行ったときはブランドのコスメセット、挙げだしたら切りがない…。

「わー! 何コレ? すごいね!」

帰宅早々、夫が叫んだ。

「ママ友の佐伯さんから送られてきたの。北海道に行ってるんだって。」

「うまそう~! 美咲、いい友達持ってるな~!」

「そ、そう…?」

夫はノンキに喜んでいるが、私は内心動揺している。

ママ友の美穂から送られてきた巨大きな発砲スチロールの箱の中には、立派な蟹、ホタテ、鮑、など、北海道の新鮮な海の幸が溢れんばかりに美しく並んでいた。

 お返し…どうしたらいいの…?

「美咲、何暗い顔してんだよ? こんなおいしそうな物もらっといて。早く食べようぜ!」

「ノンキに喜んでる場合じゃないわよ! こんなにすごい物もらって、お返しどうしたらいいの? これ、きっと高価なはずよ! 」

「別にそんなに深刻にならなくても…。向こうだって見返り期待して送った訳じゃないだろうし、気持ちの問題だろ?」

「そんなわけにはいかないわよ! パパはママ友の社会を知らなすぎるのよ!」

「パパー、おかえり~! わー、カニさん! すごーい!」

子供部屋で遊んでいたリコがやってきた。今にも動き出しそうな新鮮な魚介に大喜びだ。

「じゃ、今日はパパが腕を振るうかな!」

「わーい!」


はしゃぐ父と娘。誰も私の気持ちなどわかってくれない…。



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