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2.塩豆大福
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しおりを挟む綾女はその日の朝に大事な予定があった。その為、早朝から繁充たちと約束をしていたのだった。
(大黒堂の復刻版塩豆大福の販売、間に合わないよ! 砂原に先に行ってもらったよ!)
繁充からメッセージが入っていた。。
「ごめん、すぐ行く!」
綾女は急いでカバンを持って走って行った。
駅前の大通りまで来ると、繁充が待っていた。
「こっち!」
繁充は大きく手を振った。綾女は急いで駆けて行った。
「繁充君! 楽しみだね、復刻版の塩豆大福。」
「明治時代の味を再現しているらしい。百年以上も昔の味って…どんなだろう…。」
繁充も待ちきれない様子だった。
―綾乃さんは繁充さんに塩豆大福ご馳走してもらえたのかな…?
綾女は繁充の横顔をチラっと見た。
―やっぱり似てる…いや、似てるどころじゃない、本人だ!
現代に生きる同級生の繁充と、明治時代のひいひいお祖母ちゃんの初恋の相手・繁充は、どう見たって同一人物だ。
―私も綾乃さんにそっくりだった…。と、言う事は…私たちって
生まれ変わりってこと???
「お~い! こっち~!」
大黒堂から続く長い列の前方で砂原が綾女たちに手を振った。
「砂原君、並んでくれてありがとう!」
綾女と繁充は列の中に入った。後ろの何人かが嫌な顔をしたが砂原がさっと綾女の後ろに入ってくれて見なくて済んだ。綾女は砂原をまじまじと見た。
―砂原君も私が夢で見た人にそっくりだわ…。
綾女は思い切って二人に今朝見た夢の話と両親から聞いた先祖の話をしてみた。
「…マジで?」
砂原も繁充も驚いていた。
「うちの先祖も元華族でかなりの資産家だったって聞いたことある。」
砂原が言った。
「そうなの?」
綾女は目を丸くした。
「そう言えば…うちのひいばあちゃん、「お父さんにはずっと好きな人がいて、お母さんと結婚した後もずっとその人のことを想っていたからお母さんとはずっと険悪だったのよ」…って親戚の集まりの時、大人たちが話してるの聞いたことある…って、待って! じゃあ、俺と立川さんは、前世で結ばれなかったから、今世で結ばれるために生まれ変わったってことっ???」
砂原は一人ニヤケまくった。
―砂原君…自分の都合のいいようにしか解釈してないな…
綾女は思ったが口には出さなかった。
「繁充君は? ご先祖様ってもしかして…」
綾女は繁充に聞いた。
「さあ…聞いたことないな…」
繁充は呟いた。
僕の母は父の妾だったんです
綾女の脳裏に夢の中の繁充の言葉が蘇った。
―もし私の夢が本当だったとしても、それは繁充君にとってそんなに喜ばしい事じゃないよね…
「ま、その…あれだよ! 塩豆大福! 今日は集中しなきゃね! 明治の味に!」
綾女はその場を紛らわせるように言った。
「…何が明治の味だってぇ?」
三人は目を見合わせた。そしてゆっくり振り向くと、担任教師の遠藤司が仁王立ちし、物凄い形相で睨んでいた。
「ひぃぃぃぃ~!」
三人は悲鳴を上げた。
「おまえら~! 授業さぼって何やってんだぁ~~~!」
通りに遠藤の声が響き渡った。
第二章 終り
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