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3.おにぎり
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しおりを挟む話は現在に戻ってルリとリコは黎明館展示室に来ている。
ギィィィ
滅多に人の来ない黎明館の戸は重く、そして気味の悪い音を立てて開いた。
「やっぱ気持ち悪いよね…。」
リコが呟いた。
「とりあえず窓開けて風入れよ!」
二人は急いでカーテンを開けた。
すると日差しが差し込んで部屋は明るくなった。窓を開けると風がそよぎ、運動部の練習している声が聞こえてきて少し安心した。
ルリの頭に昨日の出来事がよぎった。
―みんな美味しそうに立川さんのベーグル食べてたよね…。本当は私なんかより、立川さんにマネージャーしてもらいたいんじゃないかな…。拓海だって…
ルリの気持ちは沈んだ。
「これってさ、うちの卒業生のだよね…」
リコが指さした先には壁に駆けられた大きな日の丸が何枚も垂れ下がっていた。
中心から放射状に寄せ書きがしてある。それは戦争に行く友に向けた物だった。
「これを持って戦地へ旅立ったんだね…私たちとそんなに年が変わらない人たちが…」
ルリは呟いた。
自分と同年代が、そんな時代に生きなければならないのが想像も出来なかった。
「…これって…」
寄せ書きの下にあるガラスのショーケースにはたくさんの赤い縫い目がある白い布が展示してあった。千人針と説明書きがある。
―自分の家族や、好きな人の為に作ったんだろうな…
千人針を見ていたら、ルリは急に胸が苦しくなった。痛みはドンドン増して頭がクラクラする。そしてそのまま床に倒れ込んでしまった。
「ルリ! どうしたの? ルリ!」
リコは叫んだ。
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