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3.おにぎり

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 ルリは砂原を呼び止めたが時すでに遅し。砂原はおにぎりの入った大きなタッパーの蓋を開けて部員の前に差し出した。

「オシャレなベーグル食べた後だから、おにぎりってなんか実家感湧くよな。」

「毎日おにぎりだから、たまには違うのもアリかも…」
部員たちは勝手な事を呟いた。

 ルリはモヤモヤした気持ちでいっぱいになった。

「おまえら何勝手な事抜かしてんだよ! ルリ一人でこれだけ準備するの大変だって分かってんだろ? 毎日俺たちのために作ってくれてんのに感謝くらいしろよ!」
砂原は部員たちに言った。

―拓海…

 砂原が自分の事を理解してくれたことにルリの心を温かくなった。

 が…

「ほんと…大変だよね…。これだけたくさんのおにぎり、全部形も大きさも揃ってる! 凄いね、松浦さん!」
綾女が感動してルリに言った。

 その言葉に裏は無いとルリにも伝わった…が…ルリは苛立ちと恥ずかしさが混沌として急に頭に血が昇ってきた。

 気づいたらルリはその場を立ち去っていた。ルリは昇降口前の手洗い場で何度も顔を洗った。血が上った頭を冷やしたかった。

「…ルリ…」
後を追ってきた砂原が後ろから声をかけた。

 ルリはタオルを持ってきていなかったのを思い出し、ポケットからハンカチを取り出して顔を拭こうとした。

 フワッ
砂原がタオルをルリの頭にかけた。

「大丈夫。それ使ってないやつだから…」

―拓海…

「もう、ほんとに~? 拓海の汗まみれのタオルなんてごめんだからね!」
何故か涙が出てきてルリは困ってしまった。泣いているのがバレないように、拭いているフリをしてタオルを顔から外さなかった。

「…ごめん、俺、無神経だったよな。ついうっかり立川さんの申し出受けちゃって…おまえの顔潰すような事してしまって…」
砂原は言った。

「何言ってんの、あんたたちは体をおっきくしなきゃいけないんだから、食べるものが増えるのは有難い事じゃない! 私、ちょっと目に砂が入っちゃって…それで顔洗いにきただけだから。」

「…ほんとに?」

「当たり前じゃん! それ以外何があるって言うのよ。」

「…だったら良かった。俺…てっきりルリのこと傷つけたんじゃないかって…焦った~!」

「違うから! だから先に行ってて。私、砂がまだ取りきれてなくて…」

「分かった。じゃ、俺行くわ。」

「…うん。」
砂原は去って行った。

 ルリはタオルの隙間から砂原の背中を追った。そしてタオルをギュっと抱きしめた。


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