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4. デート代は男が払うのか否か
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しおりを挟む「好きな子に奢ってあげたい、とか、何か買ってあげたい、っていう気持ち、全く無いわけ?」
絵美が呆れ顔で繁充に問いかけた。
「…無いね。そもそも金出さなきゃ嫌がる相手とは一緒に行動しない…。」
繁充はどこ吹く風の如く、もくもくとマドレーヌを食べた。
「呆れた~。繁充ってさ、せっかくいい顔してんのにもったい…。あんた絶対モテないよ…。」
絵美は言った。
「モテなくて結構! 」
繁充は全く動じずにマドレーヌを食べ続けた。
しかし、ふと食べる手を止め、宙を仰ぎ見て呟いた。
「もしも俺が相手の分まで払うとしたら、その相手は…」
急に意外な事を言い出した繁充に一同釘付けになった。
「…その相手とは?」
部員たちは息を飲んで繁充の言葉を待った。繁充は静かに目を瞑り、そして答えた。
「将来を誓える相手だけだ!」
ヒィィィィ
部員たちはのけぞった。
「それってちょっと重すぎない?」
「奢るのにそこまでの覚悟いる?」
「そうだよ! そんな事言われたら怖くて一緒に行けないよ!」
部員たちは大ブーイングだった。繁充は女子たちの自分に対するドン引きな態度に全く動じずマドレーヌを堪能した。
「…前から思ってたけど…おまえ変わってんな。」
砂原が繁充に囁いた。
「どうして?」
「だってさ、普通想像つくだろ? そんなこと言ったら女子からドン引きされるの…。」
「ドン引きさせときゃいい…。」
「はぁ…俺には理解できねーわ。陰でどんなこと言われるのか恐ろしくて反感買う恐れのあることなんて言えねーもん。」
「…そうか?」
「そうだよ。」
「自分を偽る方がしんどいと思うけどな。生きづらくねーか?」
「おまえは生きやすそうだよな…。」
砂原と繁充はお茶をズズズとすすった。
「繁充はさ、本当に誰かを好きになったことが無いんだよ!」
絵美が言った。繁充はいつのまにか横に仁王立ちになっている絵美をポカンと見上げた。
「何で?」
「だってさ、普通好きな人に喜んで欲しいって思うじゃん! そしたらプレゼントあげたり食事連れて行ったりして奢ったりするでしょ。」
「俺、今バイトしてないから奢るとしたらそれは親からもらった小遣いだし、うちの親がその子に奢ってあげるって事になるでしょ。それってなんか違うんじゃない?」
「おまえバイトしろよっ!」
絵美は話にならないと思ったのか、呆れ顔でそう吐き捨てて繁充の側を離れた。
ピコン
その時、絵美のスマホにメッセージが入った。絵美はスマホを見てニヤニヤと微笑んだ。
「何? 彼氏?」
部員たちが覗き込んだ。絵美はさっとスマホをポケットの中に入れた。
「まあね。私ちょっと用事できたから行くわ。」
そう言うと、絵美は後片付けもせずに調理室から出て行った。
「…相変わらずだね、あの子は…」
「いつか痛い目に会わないといいけどね…」
残された部員たちは嫌味半分やっかみ半分で呟いた。
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