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しおりを挟む「なんじゃ?そりゃ?」
類が呆れて旭に聞いた。
「学校に来る途中、電車の窓から見えた(トラクター王国)っていう看板にインスピレーションを受けて創作した。」
旭がオムそばをずるずる食べながら言った。
俺たち三人はまたいつものように、学校の帰りに横綱でオムそばを食べていた。
「トラクラー王国って、トラクターのレンタルか販売の会社だろ。んで?乃海のキーホルダーの話聞いて、そのトラクター王国の物語作ったってか?」
「ウム。」
「おまえ、アホなんか頭いいんかわからんな!」
「は?頭いいんだよ!」
類と旭はギャーギャー言って盛り上がっていた。
「で、乃海はそのミズハラノエルって子が澄ちゃんと何か関係があると思ってるわけ?ってかさ、そんな宝探しなんておもしろそうな事、何で俺ら抜きでするわけ?誘ってよー!」
類は口を尖らせて俺を睨んだ。
「今そのキーホルダー持ってんの?見せて。」
旭がそう言うので、俺は二人にキーホルダーを見せた。
「キレイだねー。これ作った人、めちゃ器用じゃん。」
旭がキーホルダーを持ち上げて光にすかしてみせた。
「じーちゃんの話聞いてさ、その後施設の石田さんから来世の約束の話聞いてさ、それで宝箱のノートにノエルが(来世の約束を信じますか?)だろ。どう考えても何かに導かれてるとしか思えない。」
「かもな…。」
二人も頷きながら俺の意見に同意した。
「やっぱ行ってみるしかねーんじゃないの?その水原工務店に!」
「電話番号わかってるんだったら、電話して澄子さんの事聞いた方が速いんじゃない。」
「バカ、おもしろくないだろそれだったら!ここはやっぱりドラマみたいに劇的な展開が欲しいっつーの!」
類と旭は好き勝手に俺の重要案件を計画し合っている。
突然、見ず知らずの高校生がその工務店のおばあさんの事を聞きに来たらどうなんだろ?快く教えてもらえるんだろうか?変な勧誘とか詐欺とかと勘違いされて警察に通報されるんじゃないか?俺はどうしたものかと悩んだ。そんな時、
“何となく俺の感では、澄子さんを探し出すのは速い方がいいかもしれない。根拠は無いんだけど、なんだかそんな気がするんだ…”
突然じーちゃんの施設で石田さんが言っていた言葉が頭に浮かんだ。
そうか!
石田さん、そう言ってたな!
「俺、ちょっと行ってくる!」
俺はカバンを背負って、靴を履いた。
「ちょっとって、どこよ?」
「何?何?おもしろそうなとこなら俺も連れてけー!」
類と旭が聞いてきたが、今日はなんとなく一人で行ったほうがいいような気がしたから、二人を置いて俺は駅へ走った。
「なんだ?乃海のやつ。自分だけおもしろいことしようとしてないか?」
「あんた、お詫びに私にクリームぜんざい奢って!」
「何で俺が詫びなきゃなんねーんだ。ん、まてよ、俺のお腹さんも同意している…。おばちゃーん、クリぜん二つねー。」
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