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しおりを挟む「夜景もキレイだけど、ノエルもキレイ。かわいい。あー、俺、何言ってんだかー。」
俺ってこんなこと平気で言えるタイプだったっけ?
旭が言う秀才ではないけど自我崩壊的男になったのかもしれない。
「あ、あの、ここが我が家です。どうぞ。」
ノエルはロボットのようにカチコチになって門を開けた。
ノエルの家は高い塀で囲まれていた。門の入り口は二つあって、大きな二枚扉の入り口と、その横に勝手口風の小さな入り口があった。小さな入口 と言っても普通の家の玄関ドアくらいありそうな大きさだった。門を入ると横に4~5台くらい入りそうな車庫があって、前は和風の日本庭園が広がっていた。向かって左が母屋で右が離れで母屋と離れを渡り廊下で繋いである。母屋はモダンな感じで、木材と金属をカッコよく組み合わせて、ガラスの壁と言ったほうがいいほどのデカイ窓がある。ドイツ車のカタログに出てきそうなモダンな造りだった。一方離れは和風モダンな感じですごく落ち着いた雰囲気だ。多分こっちに澄子さんが住んでいたんじゃないだろうかと思った。
「こっちが私の家で、向かい側がおばあちゃんの家なの。」
思ったとおりだった。
ノエルは俺を連れて澄子さんの家の方へ行った。鍵を開けて中へ入ると、木のいい匂いがした。ノエルの見せたい物は、澄子さんの寝室にあるらしい。ノエルは寝室のドアを開けて俺を中へ通した。
「どうぞ。」
澄子さんの部屋は、柔らかい空気に包まれていた。
いる筈もない澄子さんが、いるような気配が漂っていた。窓から月明かりが漏れて、室内を照らしていた。
その灯かりに照らされて、それは存在感を放っていた。
「これ…もしかして…。」
俺は飴色に輝くラジオに触った。
「うん。」
ノエルは頷いた。
「このラジオが澄子さんとうちのじーちゃんを結びつけたんだよな。」
澄子さんがずっとこのラジオを大事にしていたことを思うと、胸が切なくなった。
「おばあちゃん、死ぬまでずっとこのラジオを大事にしていたの。おばあちゃんが生きてきて、一番幸せだった事と、一番辛かった事が、このラジオに詰まってるって言ってた。」
「そっか…。」
「このラジオを、乃海君のおじいさんに渡してくれないかな?」
「…わかった。じーちゃんに渡すよ。」
「ありがとう。」
月明かりにノエルの涙が光った。
俺はノエルの頬に手をあてた。
「おまえ、誰?」
突然ドアが開いて男が入ってきた。
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