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しおりを挟む次の週末、俺はノエルの家に行った。例のラジオをじーちゃんに渡す為だ。
ノエルの住む街の駅に着いたのは、まだ朝の早い時間だった。空気の冷たさが、もうそこまでやってきている冬の気配を感じさせた。
俺はノエルと初めて会った水飲み場へ寄ってみた。水飲み場は今日も変わらぬ姿で俺を迎えてくれた。
「君と会うのは、今日で三度目だが、私と君の付き合いは、もっとずっと長いものなのだよ。」
水飲み場は俺にそう話しかけた。
「ずっと遠い過去、俺はあなたから水をいただきましたね。その節はありがとうございました。」
俺は水飲み場に語りかけた。
「私は何百万という人々を、ここから見送った。そしてそのほとんどが、再びこの地を踏むことは無かった。もうあんな悲しい別れはしたくないものだ。」
水飲み場は悲しそうに言った。
「俺たちは、もうあんな悲しい未来は作らない。」
俺は水飲み場の蛇口を優しく撫でた。
「そう願うのみだ…。」
水飲み場は悲しそうに俺に向かって微笑んだ。
そんな気がした。
俺はノエルの家に向かって坂道を登っていった。ノエルの家が見えてくると、ノエルはすでに門の前に立って俺を待っていた。
「おはよー!」
ノエルは俺に笑顔で手を振った。
「おはよ。」
俺はノエルを抱きしめた。
「ノエルー、会いたかったよー。」
ノエルは顔を真っ赤にした。
何て可愛いんだろ。俺は我慢出来なくなってキスをした。
ノエルはびっくりして何か言いかけたが、その口をふさぐようにまたキスをした。とうとうノエルは話すのを諦めてくれたようだった。
「じゃ…あ…、そろそろ…ラジオを…。」
「…いやだぁ~、離れたくないよぉ~。」
ノエルは中に入ろうと体を離したが、俺は半分ふざけて後ろからまた抱きついた。
半分呆れた目でノエルが訴えてきたので、俺はノエルを自由の身に開放してあげた。
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