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しおりを挟むしばらく休んでから、重い腰をあげて会社を出た。
両足に重りをつけているみたい。肩には砂袋が入ったリュックサックを背負っているようだ。
必死に駅まで歩き、電車に乗った。案の定、電車は満員で空いている席など無い。
つり革にぶら下がって、ひたすら耐える。
降りる駅は15番目。この電車は急行だから、5番目。朦朧としながら車窓を眺めていた。
「…今井さん…?」
突然、私の前に座っている男の人が声をかけてきた。
「…覚えてる? 俺、中学の時、一緒に生徒会活動をしていた…。」
「あ! 沢井君?」
「思い出してくれた? もしかして…気分悪いの? 青ざめてるよ。」
「…大丈夫。」
「ここ、座りなよ。」
沢井君は席を譲ってくれた。
「ありがとう。」
席を譲ってもらうと、一瞬にしてそこに根が張ったように体が沈み込んだ。眠気が襲ってくる。
「降りる駅って、一緒なのかな?」
「実家だから…、沢井君も?」
「あ、うん、俺も…。いい年して恥ずかしいんだけど。」
沢井君は照れ笑いした。
「駅に着いたら起こしてあげるから寝てなよ。」
「ありがとう。」
体がどうしようもない状態だったので、その申し出をありがたく受け取った。
「チカコ! コイツ、気を付けた方がいいよ! 聞いたでしょ! いい年して実家暮らしよ! きっとマザコンなのよ。おまけに地味で冴えない風貌。完全に陰キャでしょ。どうせ周りの女に相手にされないんだろうから、面識のあるチカコに言い寄ろうとでもしてるんじゃないの? 同級生だし、同じ地味なキャラだし、チカコは人がいいから何言っても断れないとでも思ってるんじゃないの? ったくどうしようもない男だよ! 駅についたら無視するんだよ!」
カスミが耳元で囁いてきた。
「…そうなの…? 私も実家暮らしだし…自分の事を言われているみたいで、なんだか胸が痛むな…。でも、そんな風には見えないけど…カスミがそう思うんだったら…そうなのだろうね…」
カスミに返事をしている途中で、私は完全に眠ってしまった。
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