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しおりを挟む「ハァハァハァ…」
無我夢中で走った。沢井君が心配だった。涙で前が見えなくなってきた。
ドドドドドド………
突然けたたましい足音が後ろから聞こえてきた。すると横に巨大な人影が見えた。カスミに追いつかれたんだ。終わった。泣きながら横を見た。
タ、タヌキ?????
私の横を大タヌキが並走していた!
また別の恐怖で私の顔は引きつった。
私は無我夢中で走った。どうやらタヌキを引き離せたようだ。
ドドドドドド…………
タヌキは怒りの形相で追い上げてきた!
「ひぃぃぃー!」
私は泣きながら全速力で走った。
「負けへんで! こんなとこで、負けられへんのやぁ~!」
タヌキは訳の分からない事を叫びながら尻尾をブンブン振り回し加速してきた。
何なの? このタヌキ!
私がタヌキを抜くと、タヌキは私を抜き返し、またさらに私がタヌキを抜くと、タヌキは「シャァァァァーーーーー!」と威嚇しながら私を抜きにかかってくる。
タヌキのえげつない闘争心に、私はいつの間にかカスミから逃げていることを忘れてしまっていた。
しかし、やがて私の体力も限界が来た。足がもつれて転び、その場にうずくまってしまった。
「私の圧倒的な勝利は揺るぎなきこと限りなしだけど、あなたもよくがんばったわ!」
優越感に浸りきったドヤ顔のタヌキは、地面にうずくまる私に手を差し出してきた。
見上げるとそこには大タヌキ。そのまたさらに上にはお月様。
いつの間にか、私は見たこともないような路地裏に迷い込んでいた。
路地裏には怪しげな赤い光を放つ提灯が無数に下げられていた。
「…ここ…どこ…?」
「ささ、どうぞ!」
タヌキは目の前の引き戸を開けた。
小料理 たぬき
店の前の小さな看板に、そう書いてあった。
「へぃらっしゃぁーーーーーぃ。」
突然ドスの利いた重低音が響いた。
「へぃらっしゃぁーーーーーぃ。おひとり様~カウンターへどうぞぉーーーーー!」
また別の声の重低音が轟いた。
何人もの店員さんから一斉に声をかけられているかと思いきや、周りを見回しても一緒に中に入ったこの大タヌキしかいない。
タヌキの一人芝居なのか?
でも何で…?
大タヌキは10人分くらいの声色を使い、一通り私への声かけを済ますと気が済んだのか、勝ち誇ったような顔をして悦に入っているようだった。そしてようやく私におしぼりとお茶と出してくれた。
何だったんだ、あれは…。何かの儀式? もしかして仕事前のルーティン???
私は頭が混乱していた。ここはどこ? 何故私はこんな小料理屋にいるの? そしてこのタヌキは…
「あらっ! お嬢さん、そんなに見つめないで下さいな! 恥ずかしいじゃありませんか! そりゃまね、お気持ちはお察ししますよ。私はこの界隈じゃ、ちょっとした美人女将って評判だから…。」
タヌキ女将は勝手に勘違いして、クネックネッと体をよじり、恥ずかしがっている。
あっけにとられている私に、タヌキ女将は突然、さっきとは打って変わってギロリと睨んできた。
「で、お嬢さん、そろそろご注文受けたまわりましょうかっ?」
テメェ、注文しないつもりなんじゃねぇだろうな…とでも言わんばかりに、タヌキ女将は牙を剥きだして私を威嚇した。
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