6 / 23
第六章 招かざれる影
しおりを挟むクラリッサが盗難事件を解決したことで、セリアの評価は高まり、彼女の無実を信じる人々が増えた。一方で、クラリッサ自身への注目も増し、その行動や言動に興味を持つ者たちが現れ始めた。だが、それは善意ばかりではなかった。
不穏な噂
「クラリッサ様、少し気になることがございます。」
エレナが緊張した表情で報告に訪れた。
「どうしたの?」
クラリッサは落ち着いた声で答える。
「最近、貴族院の中で妙な噂が流れています。クラリッサ様がセリア様を助けたのは、自身の罪を隠すためだと……。」
「罪を隠すため?」
クラリッサは眉をひそめた。そのような噂が流れるのは予想外ではなかったが、明確な意図を持った者が動いていることに気づいた。
「おそらく、ルクレティアの取り巻きたちが仕掛けているのだと思います。」
(このままでは、再び私が悪役に戻される恐れがある……。)
クラリッサはすぐに対策を練る必要があると考えた。
天界からの警告
その夜、クラリッサは奇妙な夢を見た。天使だった頃の仲間が彼女の前に現れたのだ。
「リリス、時間がない。」
声をかけたのは、天界時代の盟友であり、穏やかな笑みを浮かべる大天使ラファエルだった。
「ラファエル……?あなたがなぜここに?」
「お前が転生した後、天界でもお前の行動が問題視されている。特に、今回の転生先での運命の操作について、監視が強化されている。」
「運命の操作……?」
クラリッサは困惑した。
「お前がセリアを助けたことで、既定の運命が歪み始めている。お前を追放した勢力は、この状況を利用して再びお前を罰しようとしているのだ。」
「それなら、どうすればいいの?」
「まずは、この世界の破滅フラグを回避しながらも、運命を極端に歪めないようにしろ。バランスを保つのだ。それができなければ、お前自身の存在が消されるかもしれない。」
その言葉が残り、夢はそこで途切れた。
アレクシスの提案
翌日、クラリッサはいつも通りの生活を送っていたが、アレクシスから突然の呼び出しがあった。
「君に頼みがある。」
アレクシスは真剣な表情で切り出した。
「頼み……ですか?」
「近々、貴族院で開かれる晩餐会に君も出席してほしい。そこで、僕と共にセリアの無実をさらに広める場を作りたい。」
「私が、ですか……?」
クラリッサは一瞬戸惑った。自分が目立つことで、新たな問題を引き寄せる危険性がある。だが、セリアを守るためにアレクシスの提案を無下にはできない。
「わかりました。お役に立てるなら、喜んで。」
晩餐会での暗躍
晩餐会の夜、クラリッサは華やかなドレスを身に纏い、アレクシスと共に会場へ向かった。
セリアも招待されており、多くの貴族が彼女の周囲に集まっていた。だが、その中に、ルクレティアの取り巻きたちの姿もあった。
(何か仕掛けてくる可能性が高い……油断はできない。)
クラリッサは周囲の動きを注意深く観察していた。そして、その予感は的中した。
晩餐会の最中、セリアが提供したワインに毒が盛られているという告発が突然飛び出したのだ。
「このワイン、毒が入っている!セリア様、これは一体どういうことですか?」
会場がざわめき、セリアは驚きに目を見開いた。
「私が……?そんなはずありません!」
クラリッサは即座に行動を起こした。
「毒が入っているかどうか、まずは確かめるべきですわ。」
彼女は冷静にワインを取り上げ、専門の毒見役に確認させた。すると――
「毒は……ありません。」
毒見役の言葉に、会場が再びざわつく。
「どういうことだ?」
アレクシスが鋭い目で周囲を見回すと、一部の貴族たちが焦りを隠せない様子だった。
(これは罠……セリアを陥れるための。)
クラリッサは微笑みながら、毅然と声を上げた。
「今回の告発は根拠がありません。むしろ、この場でセリア様を貶めようとする意図が明白ですわ。」
その言葉に、場の空気が一変した。
真実への追及
クラリッサはその後、毒告発を仕掛けた者の背後にルクレティアの取り巻きたちがいることを突き止め、再び陰謀を暴いた。
セリアは感謝の意を伝え、アレクシスもクラリッサの行動を評価した。しかし、クラリッサの胸には一つの疑念が生まれていた。
(これで終わりではない……背後にはもっと大きな勢力がいる。)
天界での警告もあり、彼女はこの先待ち受けるさらなる試練に備えなければならなかった。
0
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる