やり直しの異世界転移

紅葉

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記憶を無くした青年

2話 境界の森(グレイ視点)

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一週間前にギルマスから境界の森の調査を依頼された。野宿を繰り返し、森の奥まで10日かかると考えていた道を7日でたどり着いた。これまでBランク以上の魔物には出合わず、滞りなく調査が進められていた。
この境界の森は、魔王領とグルムンド王国を繋いでおり、10年前に代替わりした魔王が各国との協定を破棄して以来、Aランクの魔物が蔓延るようになっていた。
にもかかわらず、Aランクの魔物が一匹も見当たらないのはおかしいと感じていた。

翌日の朝、目が覚めると昨日までとは打って変わって森全体に霧がかかり、薄暗くなっていた。時間が経つにつれて霧はどんどん濃くなっていき、足元も見えないほどになっていた。Aランクの魔物には問題なく対処できるのに、霧によって視界を奪われた途端、転ぶわ、落ちるわ、ぶつかるわ…散々な目にあった。
疲れ果て、そろそろ休もうと足を止めようとした瞬間、今度は気の根っこに足を取られて地面に膝をつく。

「グッ………だぁ!!何なんだよ!?」

イラつきながら顔を上げるとそこには奇妙な空間が広がっていた。何かを避けるかのように霧が晴れた空間があったのだ。

「何だ…?」

立ち上がりあたりを見渡すと草木の奥に黒い塊が見えた。少しだが動いた気がする。

「魔物か?」

慎重にゆっくりと近くと、人間だとはっきりとわかった。

(何故こんな森の最奥に人が倒れてるんだ?)

「おい…!お前大丈夫か…!?」

慌てて抱き抱えると、意識を失った青年に目を奪われた。透き通る様な黒髪に多少の汚れはあるがハリのある白い肌。先ほど一瞬だけ見えた瞳は黒かったのではないだろうか…この世界では魔力が高ければ高いほどその人物の髪や瞳の色は属性の色に伴って、より濃くなっていく、魔力があまりにも多過ぎたり、属性が多数あると髪の色は最終的に黒に行き着くのだ。俺はここまでの漆黒の髪や瞳を生まれて初めて見たのだった。
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