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記憶を無くした青年
13話 甘い行動
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ゆっくりと意識が浮上する。重い瞼を持ち上げ、ぼんやりと天井を見上げた。あたりは薄らと明るくなってきており、あと数十分かそこらで日が上り始めるのではないだろうか。体の気だるさと腰の鈍い痛みから昨晩グレイと最後までやったのだと理解できる。
「途中から記憶がないな…、、、」
ぼそりと呟き、横に視線を向けるとグレイが半裸の状態でうつ伏せになって寝ていた。体が綺麗になっているので、あの後意識のない俺をグレイがもう一度風呂に入れてくれたのだろう。恐らくまだ眠りについてから2~3時間しか経ってないのではないだろうか。
「グレイ…。」
昨晩のグレイを思い出してまた少し、体が熱を持ち始める。なんとかして体を冷まそうとグレイを起こさないようにしながら、外の空気を吸いに静かにベッドから降り、念のためカツラを被ってから部屋を出ていった。
ここの部屋はニ階にあるので窓を開けた方が風通しが良くなるが、グレイの目が覚めてしまいそうなので必然的に部屋を出て階下へ向かう。一階のロビーの受付には朝の早い冒険者達に合わせてか、宿屋のおじさんがコーヒー片手に座っていた。
「そんな格好でどこいくんだ?」
確かに今の格好は完全に寝巻きであり、足元も部屋についてる歩きにくいサンダルのようなものだった。
「少し外の風に当たってきますね。」
そう言って手早く扉を開けて外に出た。少し体を冷やしたらすぐに戻るつもりだったので、宿屋の扉の横で深呼吸しながら、朝の少し湿気のある空気を肺いっぱいに吸い込んでいた。
「……!!!………!?」
宿屋の前の建物の脇の路地から誰かの話し声が聞こえた気がした。こんな朝早くから誰だろうと、ほんの興味本位で前の通りを歩き建物の脇の路地に足を踏み入れる。路地は入り組んでおり、進むごとに声はだんだんと近づいていき、会話の内容が少しずつ読み取れるようになった。
「やめろ!!離してくれ!!!」
「大人しくしろっつってんだろ!!」
長い金髪の女性が、口を塞がれていかつい顔した屈強な男たちの肩に担がれ、暴れていた。
「おいっ!!何してんだ!?」
考えるより体が動いてしまったとはまさにこのことだろう。後先考えずに思わず男たちの前に姿を表してしまった。どうしようか頭をフル回転させていると男たちがボソボソと会話を始める。
「おい…あいつ昨日の…。」
「ハハッ!!こりゃいいな…。」
小さな声で話しているのか、レイには部分的にしか聞こえてこなかった。
「いやぁ…、あはは、、お恥ずかしいところを見られました。コレはその~、俺の恋人でですね~、ときどきこうやってヒステリックを起こすんですよ~。んで~その度に友人に力を貸してもらってるんです。」
女性を担いでいない方の男がベラベラと言い訳がましいことを言いながらこちらにゆっくりと近づいてくる。
なぜ自分は1人でここに出てきてしまったのかと今更ながらに反省する。ここにグレイがいてくれたなら…あるいはこんなに朝早い時間でなければ…、こんな周りを石の壁に囲まれた裏路地でなければ、誰かに助けを求められたのかもしれないのに…。しかし助けを求め、必死に暴れている女性を置いて今更1人で逃げる気は全くなかった。
レイの魔力が戻ってからグレイから魔法の使い方を学んではいたが急に増えた魔力に体がまだ上手く慣れていないのか、魔力操作という基本的な段階でつまづいていた。すぐに戻るつもりだったので役に立ちそうな物も、何も身につけてはいなかった。
「クソ…。俺ってほんと役に立たないな。」
冷や汗が背中を伝う。奥歯がギリッと軋む音が頭に響いた。女性が捕まっているのだ、1人逃げることはできない。戦うこともできない。誰かに助けを求めることもできない。
広く分厚い手のひらがゆっくりとレイに伸びてくる。抵抗する暇もなく一瞬で男たちに捕らえられていた。
「途中から記憶がないな…、、、」
ぼそりと呟き、横に視線を向けるとグレイが半裸の状態でうつ伏せになって寝ていた。体が綺麗になっているので、あの後意識のない俺をグレイがもう一度風呂に入れてくれたのだろう。恐らくまだ眠りについてから2~3時間しか経ってないのではないだろうか。
「グレイ…。」
昨晩のグレイを思い出してまた少し、体が熱を持ち始める。なんとかして体を冷まそうとグレイを起こさないようにしながら、外の空気を吸いに静かにベッドから降り、念のためカツラを被ってから部屋を出ていった。
ここの部屋はニ階にあるので窓を開けた方が風通しが良くなるが、グレイの目が覚めてしまいそうなので必然的に部屋を出て階下へ向かう。一階のロビーの受付には朝の早い冒険者達に合わせてか、宿屋のおじさんがコーヒー片手に座っていた。
「そんな格好でどこいくんだ?」
確かに今の格好は完全に寝巻きであり、足元も部屋についてる歩きにくいサンダルのようなものだった。
「少し外の風に当たってきますね。」
そう言って手早く扉を開けて外に出た。少し体を冷やしたらすぐに戻るつもりだったので、宿屋の扉の横で深呼吸しながら、朝の少し湿気のある空気を肺いっぱいに吸い込んでいた。
「……!!!………!?」
宿屋の前の建物の脇の路地から誰かの話し声が聞こえた気がした。こんな朝早くから誰だろうと、ほんの興味本位で前の通りを歩き建物の脇の路地に足を踏み入れる。路地は入り組んでおり、進むごとに声はだんだんと近づいていき、会話の内容が少しずつ読み取れるようになった。
「やめろ!!離してくれ!!!」
「大人しくしろっつってんだろ!!」
長い金髪の女性が、口を塞がれていかつい顔した屈強な男たちの肩に担がれ、暴れていた。
「おいっ!!何してんだ!?」
考えるより体が動いてしまったとはまさにこのことだろう。後先考えずに思わず男たちの前に姿を表してしまった。どうしようか頭をフル回転させていると男たちがボソボソと会話を始める。
「おい…あいつ昨日の…。」
「ハハッ!!こりゃいいな…。」
小さな声で話しているのか、レイには部分的にしか聞こえてこなかった。
「いやぁ…、あはは、、お恥ずかしいところを見られました。コレはその~、俺の恋人でですね~、ときどきこうやってヒステリックを起こすんですよ~。んで~その度に友人に力を貸してもらってるんです。」
女性を担いでいない方の男がベラベラと言い訳がましいことを言いながらこちらにゆっくりと近づいてくる。
なぜ自分は1人でここに出てきてしまったのかと今更ながらに反省する。ここにグレイがいてくれたなら…あるいはこんなに朝早い時間でなければ…、こんな周りを石の壁に囲まれた裏路地でなければ、誰かに助けを求められたのかもしれないのに…。しかし助けを求め、必死に暴れている女性を置いて今更1人で逃げる気は全くなかった。
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「クソ…。俺ってほんと役に立たないな。」
冷や汗が背中を伝う。奥歯がギリッと軋む音が頭に響いた。女性が捕まっているのだ、1人逃げることはできない。戦うこともできない。誰かに助けを求めることもできない。
広く分厚い手のひらがゆっくりとレイに伸びてくる。抵抗する暇もなく一瞬で男たちに捕らえられていた。
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