やり直しの異世界転移

紅葉

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記憶を無くした青年

14話 レイの行方(グレイ視点)

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コンコン…。

扉を叩く音が聞こえた気がして沈んでいた意識が浮上する。まだ眠りについてから数時間と言ったところだろうか…。外は日がちょうど上りきったような明るさだった。ぼんやりする頭を持ち上げようと上半身を起こした。

「誰だ…?」

寝起きだと一発でばれそうな掠れた声で扉の外側にいるであろう人物に問いかける。いまだに視界は寝起きでぼやけており、青を洗おうとベッドに手をついた途端つい先程まで隣にいたレイの姿がない事に気がつく。ドッと鼓動が早まるのを感じた。レイの姿を探そうと身を起こし冷たく果てた床に足をつけた時。外にいた人物から声をかけられた。

「宿屋のものです。お連れさまのことでお伝えしたいことが…、」

外にいるや宿屋の男が言葉を言い切る前にグレイが扉をバタンッ!と音を立てて開く。

「お…お客様。まだ朝早いので他のお客様のご迷惑になることは何卒…、ご遠慮くださいませ。」

そう言って宿屋の男がペコペコと頭を下げるので悪かったと伝え、はやる気持ちを抑えて先程の続きを聞いた。

宿屋の男曰く、1時間ほど前にレイが風に当たると言って扉から外に出て行った。最初は扉の前にいるのを扉横の窓から確認していたそうだが、男がコーヒーを注ぎに受付を離れ奥に行き、戻ってきたときにはそこにいたはずのレイは消えていたのだという。そこから1時間近くたっても戻ってこないので心配になった男は同じ部屋に宿泊している俺の元を訪ねてきたらしい。男からは最近この辺りで年若く綺麗な見目をした若者の失踪が増えていると聞き、嫌な考えに結びつく。恐らくこの男も同じ考えを持っているのだろう。

グレイはすぐに身支度を済ませて宿屋の男に、3日間だけ待って俺たちが戻らなければそのままチェックアウトにしてくれ。と伝えて3日分の宿代の倍額を支払い、外に飛び出して行った。

(大丈夫だ…落ち着け、たとえ奴隷商人に捕まったとしてもまだそんなに遠くには行ってないはずだ。)



しかしどうしてレイは宿屋の前にいたはずなのに移動したのだろうか、宿屋の前で攫われたのなら物音ですぐに宿屋の男が気づくはずだ。だとすれば、レイ自ら宿屋の前を離れて行ったということ…。

あたりは少しずつ人が出てきており、皆それぞれ朝の準備をしていた。とりあえず宿屋付近の家の主人に近くで不審な物音や声が聞こえなかったか聞き込みを続けていると、宿屋の前にある八百屋の主人が通りとは反対の方から微かに声を聞いた気がすると話してくれた。八百屋の脇の路地に入り、入り組んだ道をわずかな痕跡を探りながら進んだ。しばらくすると何者かが争った後を見つける。

「コレは…3人いや…4人か?」

この痕跡がレイのものであるかは確かではないが、今はここに賭けるしかない。

「レイ、頼むから無事でいてくれ。」

ボソリと呟きグレイはその先へと続く僅かな痕跡を辿り出した。
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