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19 雑用係、青ざめる
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「二乃子殿!」
「あ、満殿おかえりなさい。どうでした、宝具は?」
氷嚢で左頬を押さえた二乃子がのん気に出迎える。右手も包帯を巻かれ、手当した跡が見える。服も朝と違う。
「大丈夫なんですか!?怪我は他には?」
「ありません。」
「右手の平から肘にかけてのの擦り傷、右半身の打ち身、左頬は殴られて腫れてる。」
奥の部屋から出てきたのは一花だった。
「一通り私が手当てした。子供たちはショックを受けるだろうから、後宮に行かせたよ。」
「ありがとうございます。」
満ですら真っ青に青ざめているのから、子供たちには衝撃だろう。
「奥の部屋に。犯人を拘束してる。二乃子が調べたいことがあるらしい。」
奥の部屋には一の姫・凛がいた。そして中央の椅子に縛り付けられていたのは、満も知っている人物だった。
「朝比奈博臣殿?」
「暴漢の常習犯よ。」
凛が言った。
「え?」
「夜間勤務の女官をね。大貴族だから泣き寝入りよ。」
人は見かけによらないとは言うが…正直ショックだ。そんなことをしている身で九条家に縁付こうとしたのも、なめられたものだ。
まあ、父上たちのことだ、いざそういう話になれば事前に調べてお断りしただろう。
「今回は違うかもしれません。」
二乃子が言った。
「どういうことですか?」
「博臣殿に襲われたとき、別の人間の意志が見えました。」
「別の人間…?」
「意識を乗っ取られていたと思われます。」
二乃子は博臣に近づき、まぶたをめくって中を覗き込んだ。
…少女が椅子に縛り付けられた青年のまぶたをめくっている。
「しかし、もういないようです。」
「そう。じゃあ、初めて現行犯で捕まえたんだもの。このまま近衛の部署にしょっ引いていくわ。言い逃れわさせないわ。」
凛は意気揚々と椅子の背をつかんだ。そのままひょいと担ぎ上げる。
…本当に一の姫は女性だろうかと思うことがままある。
「満が帰ってきたし、私もお暇して大丈夫かな?あとは頼んだよ。」
一花の言葉に満は大きく頷いた。
ーーーー
「さて、二乃子殿。顔の傷を見せてください。」
時間が経つごとに、冷やしているとはいえ、二乃子の顔は見てられないほどに腫れていた。
「口開けて。…ああ、そんなに大きく開けないで。」
口の中も切れていたが、一花が治療してくれたのだろう。血が止まり、何か薬を塗ってあった。
一花は医師である叔父の光に外傷の治療法は一通り習ったらしい。
「薬は一花殿にもらいました。」
「はい。満殿に渡すように、と。」
「しかし、二乃子殿。暴漢にあったと聞きましたが…暴力をふるわれただけで、殺されそうにはならなかったのですか?」
「おそらく、強姦しようとしたんでしょう。」
「ごっ…!?な、大丈夫ですか!?何もされてませんか!?」
二乃子は頷く。ひとまずは安堵する。
「巫覡は、その力が強ければ強いほど、意識を乗っ取ることは難しいです。体内に直接入って操るしかないでしょう。」
言わなくてもわかるだろう?と二乃子は満をみて小首を傾げた。
「じゃあ、二乃子殿を操ろうとしたと。」
「はい。大貴族に襲われてしまったので、対処の方法を考えているときに殴られました。」
「しかし、予知は?できなかったんですか?」
「あー、それは巫覡じゃない人がよく勘違いされているとこでろで…」
「いや、長い話はひとまず今はいいです。」
口を怪我してるのだから、しゃべるのは本来痛いだろう。二乃子は痛みに疎いのだから、満が判断して体調を管理してあげなくては。
「最後に一つだけ。二乃子殿、護身術は?」
二乃子はきょとんとして首を横に振った。
「では、怪我が治ったら鍛えましょうか。」
その時の二乃子の驚愕した表情は忘れられないものになった。
「あ、満殿おかえりなさい。どうでした、宝具は?」
氷嚢で左頬を押さえた二乃子がのん気に出迎える。右手も包帯を巻かれ、手当した跡が見える。服も朝と違う。
「大丈夫なんですか!?怪我は他には?」
「ありません。」
「右手の平から肘にかけてのの擦り傷、右半身の打ち身、左頬は殴られて腫れてる。」
奥の部屋から出てきたのは一花だった。
「一通り私が手当てした。子供たちはショックを受けるだろうから、後宮に行かせたよ。」
「ありがとうございます。」
満ですら真っ青に青ざめているのから、子供たちには衝撃だろう。
「奥の部屋に。犯人を拘束してる。二乃子が調べたいことがあるらしい。」
奥の部屋には一の姫・凛がいた。そして中央の椅子に縛り付けられていたのは、満も知っている人物だった。
「朝比奈博臣殿?」
「暴漢の常習犯よ。」
凛が言った。
「え?」
「夜間勤務の女官をね。大貴族だから泣き寝入りよ。」
人は見かけによらないとは言うが…正直ショックだ。そんなことをしている身で九条家に縁付こうとしたのも、なめられたものだ。
まあ、父上たちのことだ、いざそういう話になれば事前に調べてお断りしただろう。
「今回は違うかもしれません。」
二乃子が言った。
「どういうことですか?」
「博臣殿に襲われたとき、別の人間の意志が見えました。」
「別の人間…?」
「意識を乗っ取られていたと思われます。」
二乃子は博臣に近づき、まぶたをめくって中を覗き込んだ。
…少女が椅子に縛り付けられた青年のまぶたをめくっている。
「しかし、もういないようです。」
「そう。じゃあ、初めて現行犯で捕まえたんだもの。このまま近衛の部署にしょっ引いていくわ。言い逃れわさせないわ。」
凛は意気揚々と椅子の背をつかんだ。そのままひょいと担ぎ上げる。
…本当に一の姫は女性だろうかと思うことがままある。
「満が帰ってきたし、私もお暇して大丈夫かな?あとは頼んだよ。」
一花の言葉に満は大きく頷いた。
ーーーー
「さて、二乃子殿。顔の傷を見せてください。」
時間が経つごとに、冷やしているとはいえ、二乃子の顔は見てられないほどに腫れていた。
「口開けて。…ああ、そんなに大きく開けないで。」
口の中も切れていたが、一花が治療してくれたのだろう。血が止まり、何か薬を塗ってあった。
一花は医師である叔父の光に外傷の治療法は一通り習ったらしい。
「薬は一花殿にもらいました。」
「はい。満殿に渡すように、と。」
「しかし、二乃子殿。暴漢にあったと聞きましたが…暴力をふるわれただけで、殺されそうにはならなかったのですか?」
「おそらく、強姦しようとしたんでしょう。」
「ごっ…!?な、大丈夫ですか!?何もされてませんか!?」
二乃子は頷く。ひとまずは安堵する。
「巫覡は、その力が強ければ強いほど、意識を乗っ取ることは難しいです。体内に直接入って操るしかないでしょう。」
言わなくてもわかるだろう?と二乃子は満をみて小首を傾げた。
「じゃあ、二乃子殿を操ろうとしたと。」
「はい。大貴族に襲われてしまったので、対処の方法を考えているときに殴られました。」
「しかし、予知は?できなかったんですか?」
「あー、それは巫覡じゃない人がよく勘違いされているとこでろで…」
「いや、長い話はひとまず今はいいです。」
口を怪我してるのだから、しゃべるのは本来痛いだろう。二乃子は痛みに疎いのだから、満が判断して体調を管理してあげなくては。
「最後に一つだけ。二乃子殿、護身術は?」
二乃子はきょとんとして首を横に振った。
「では、怪我が治ったら鍛えましょうか。」
その時の二乃子の驚愕した表情は忘れられないものになった。
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